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Free World Frontier  作者: シバケン
北の森・簡易拠点
32/79

冒険24km

銀狐の過去が明かされる。


 マッピングをしながら森を歩いていると、スミスからVCがかかってきた。


「何か用か?」


『はい、今日で大型連休も終わりますので、今後の営業時間について少しお話があります。』


 スミスの言葉で今が一般的に金色の大型連休中だったことを思い出した。

 正直、俺には全く関係の無いことだったから忘れていた。


「ああ、そういえばそうだったな。」


『そうだったんですよ。それで、営業時間が平日は22時ごろから0時までの2時間で、休日は13時から0時までの11時間を予定しています。』


 平日が短いのは仕方が無いか。

 でも、毎日ログインして大丈夫なのか?


『私はこの生活に慣れているので大丈夫ですよ。』


 スミスが俺の考えていることに応えて、一瞬びっくりしたが。


「言葉に出てたか。」


『はい、それはもうバッチリと。』


 単純に独り言として口に出していただけだった。


『貴方の方はどうしますか?始めてのVRゲームなら平日にやるのは控えた方が良いと思います。』


 一応心配してくれているようだ。

 多分、内心は体調を崩されると店の売り上げが下がるとか考えてるんだろうけどな。


「俺の方は心配しなくても良い。どうせVRしかやることは無いから。」


 俺の言葉に『ああ〜』とか納得したような声を出しているのだが、その考えは絶対に間違っている。


「言っておくがニートでは無いぞ。」


『はいはい、所謂ネオニートと呼ばれる人種ですね。』


 やっぱりそっち方面の人間だと考えてたか。

 ある意味、ニートよりもたちの悪い社会不適合者なんだけどな。


「それも違う。俺は病人だよ。正確には頭以外の全身が麻痺してて動けないだけなんだがな。」


 スミスは俺の話を聞いて最初は冗談だと思っていたようだが、全く喋らない俺の雰囲気に、それが本当のことであると悟ったようだ。


「そうだな、今からだいたい5年ほど前になるか。」


 そう言って、俺は自分の昔話を始めた。

 内容は簡単だ。

 5年ほど前、信号無視をした乗用車に撥ねられた俺は1年ほど意識が戻らなかった。

 奇跡的に意識が戻ってからも、首に大きなダメージを負った俺は立つどころか全身が動かなくなっていた。

 脳にはダメージが無かったらしく、正常な意識を保てていた俺は動けない事に苛立ちを募らせていた。

 そこで医師に勧められたのが当時まだ開発中だったVRを利用した治療法だった。

 俺は、自分の意思で動けるVRにすぐさまハマり、4年間て様々な経験をVRS(バーチャルリアリティシミュレータ)で体感した。

 弓道や馬術や水泳。はたまたロッククライミングや、スカイダイビングまで本当に多種多様なVRSを体感した。

 このゲームもその一つだ。

 そして、俺が時間通りにログアウトするのもVRにのめり込み過ぎないようにとの医者の指摘によるものだ。



「まぁ、そんな感じだ。」


 少し長々と話してしまったが大丈夫だっただろうか?

 反応が無いのはちょっと不安だ。


『なんと言って良いのか分かりませんが、苦労してたんですね。』


 スミスが恐る恐る話してきた。

 まるで壊れ物を扱うような感じだ。


「いや、全く」


『エッ!?』


 スミスは俺の言葉に驚いている。


「だって俺自体は4年間VRSとはいえ遊んでたんだ。しかも俺を跳ねた車を運転してたのが今入院している病院の院長の息子だったからな。事故のことを内密にする代わりに入院費をタダ同然にしてもらったから家族にも影響なし。そんな俺が苦労してると思うかい?思わないだろう」


『た、確かにそうですね。』


 うん、哀れみとか壊れ物を扱うような雰囲気はでなくなったな。

 あれは気分が落ち込むから嫌いだ。


「だからさ、今まで通り接してくれよ。その方が俺も楽だから。」


 スミスはただ一言『当たり前じゃないですか』と言った。


 そのあと少し無駄話をしVCを切った。

 さて、スミスと話していて少しペースが落ちてしまったから少し急ぐかな。






 半分走るようにして森を移動した為、何とか夕食前には川に着くことができた。

 取り敢えず目で見える範囲の川を地図に書き込んだ後、インベントリから樽と桶を出して、川の水を汲みはじめた。

 ここの水が飲めることは前々回来た時に確認済みだ。



<水>


 重量1、レア度1、品質D


 何も加工されていない川の水。飲めないわけではないが、あまり美味しくはない。



 これって、沸騰させたり、濾過したりしたらもっと品質が良くなるのか?

 少し疑問に思ったが、これから飯を作ろうとすると時間が無いのでやめておく。

 こういう事は拠点に着いてからで良いだろう。

 前回と同じように、飯が出来るまでは川で漁をしていよう。






 漁では岩魚と虹鱒が2匹づつ取れた。

 大漁大漁。

 ホクホク顏で飯を食べたら、お決まりの木の上に退避してログアウトした。

 いつも通り神に祈りを捧げることを忘れずに。






 夕食が終わったので、またログインする。

 ここからが意外と遠かった筈なので、今日のうちになるべく遠くまで行って、明日は拠点の整備をしよう。

 しっかりと下の安全を確かめてから降りる。

 本当、<隠密行動見習い>さまさまである。




 なるべく目立ちそうな物を地図に書きながら森の中を進む。

 一応地図には空蔦を巻きつけた木も書いておいたが、いつ無くなるかわからない物だから過信はしないでおこう。

 時々、蔦がしたに落ちている木もあったことだし。


 そうやって、舐めるように<狩人の眼>で辺りを見ていると、遠くの方で何かを発見した。

 どうやら<狩人の眼>の視認範囲ギリギリらしく何なのかハッキリとしないが、徐々に近づいてくるのだけはわかった。

 取り敢えずいつでも魔法を唱えられるように準備だけはしておく。

 さらに近づいた時、<狩人の眼>が獲物を完全に識別した。

 グレーウルフの群れだ。

 数は5匹。

 一直線にこちらを目指してくる。

 流石に群はマズイので、木の上に緊急避難する。

 AGIが高いおかげであまり時間をかけずとも登れるのはありがたい。


 さて、安全も確保したことだし、魔法で撃退してしまうか。

 本当は弓で撃退してしまいたいのだが、残念なことに在庫がかなり少なくなっている為、諦めた。

 ここは、<風属性入門>のレベリングと思って行こう。

 そんな事を言っている間に、狼が木の周りを囲んだ。

 今回は視界を遮るような葉が少ない場所を選んだ為、狙い放題だ。


「ウィンドショット」


<風属性入門>最下級の呪文を放つ。

 なんと言えば良いのか、緑色の半透明の玉のような物が狼に飛んでいく。

 ウォーターショットと比べると少し頼りない。

 飛んで行ったウィンドショットは狼に当たると弾け、周りを切り刻む。

 だが、見た目の割りにダメージが少ないのか、狼のHPは黄緑色になっただけだ。

 単純計算で後4回以上当てないと狼は倒せない。

 たとえ4回だったとしても狼は5匹いるので全滅までには25回もウィンドショットを唱えないといけない。

 現在の俺のMPは74、ウィンドショットの消費MPは5。

 つまり14回しか撃てないわけで、2匹までならなんとか倒せる計算だ。

 これでは、弓を使っても殲滅出来ない。

 これは絶望的だ。


 そういえば、魔法に多くMPを込めた時のダメージに着いてはまだ検証してなかったな。

 もしかしたら、MPを込めれば込める程、ダメージに対するMPの効率が上がっているかもしれない。

 もし、そうならばこのピンチも乗り越えられるかもしれん。

 試して見る価値はありそうだ。


 狙うのはまだHPが満タンの4匹の狼。

 込める程MPは通常の3倍。

 これで狼が倒せれば、魔法だけでなんとか乗り越えられる。


「ウィンドショット」


 期待を込めて撃った魔法はさっきよりも大きく濃い色をしていた。

 これならもしや。

 放たれた魔法は一匹のウルフに着弾する。

 弾けた魔法はさっきよりもかなり広範囲を切り刻む。

 近くにいたもう1匹の狼にもダメージが入ったようだ。

 2匹の狼のHPは赤色。

 倒せはしなかったが、これはこれで希望が見えた。

 MPを込めることで簡易的な範囲魔法に出来る。

 上手く狼たちが集まってるところにぶち込めば何とかなる。

 まだ、残り5匹も残っているのに少しだけ余裕ができた。


 狼は警戒して木の周りをグルグルと回っている。

 しかし、5匹が5匹ともバラバラに回っているのでタイミングが合えばかなりの数を巻き込めるだろう。

 俺はチャンスが来るまで気長に待つことにした。

 最低でも3匹以上集まった場所に魔法を打ち込めば勝機が見える。

 後は焦らず正確に当てるだけだ。



 きた!

 運良く傷ついていない狼とHPが黄緑色の狼が目の前で合流しそうだ。


「ウィンドショット!!」


 MPを5倍込めた魔法がさっきよりも速度を増して3匹の狼の中心に飛んでいく。

 狼達が気が付いて退避行動を取るがもう遅い。

 速度の増した魔法は狼たちが範囲外に出るよりも先に地面に着弾し、内包する風の刃を解き放つ。

 風の刃に斬りつけられた狼達は、流石に5倍の魔法には耐えられなかったのか絶命した。

 後はHPが赤色の2匹のみ。

 MPは残り29。

 外さなければ勝てる!




 特に外すこともなく狼達を倒すことが出来た。

 視界の端のアイコンが自己主張してるが、拠点に着くまではお預けにしよう。

 安全な場所で、ゆっくり確認したいしね。

 俺は狼を剥ぎ取ると先を急いだ。

ネーム〈銀狐〉Lv.6

 種族 〈エルフ〉

 ジョブ〈弓使い Lv.8〉〈労働者 Lv.1〉

 ステータス

 HP :76/76

 MP :19/74

 SP :44/44

 STR:13

 SIZ:10

 DEX:28

 VIT:7

 INT:13

 AGI:16

 MND:13

 LUK:8

 LP :0

 スキル

〈弓入門 Lv.10〉〈狩人の眼 Lv.14〉〈木工見習いLv.5〉〈簡易調理Lv.3〉〈水属性入門Lv.5〉〈風属性入門〉〈発見 Lv.11〉〈隠密行動見習い Lv.5〉〈暗殺見習い Lv.3〉

武器

 メイン:〈樫の弓〉〈石の矢×2〉〈鹿角の矢×5〉

 サブ :〈初心者のナイフ〉〈木の銛〉

 防具

 頭:〈皮の帽子〉

 体:〈初心者の革鎧〉

 腕:〈初心者のレザーアームガード〉

 手:〈鹿の騎射がけ〉

 足:〈初心者のレザーグリーブ〉

 靴:〈初心者の革靴〉

 装飾品

 無し

 その他

 〈初心者の鍋〉〈初心者の鑢〉〈初心者のグリーンポーション〉〈石のつるはし(簡易)〉〈石の斧〉 〈鉄の鋸〉 〈鉄のつるはし〉 〈鉄の鑿〉 〈鉄の斧〉 〈木の樽〉

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