5・金髪碧眼の伏兵と銀髪紫眼の奇兵①
「雅樹!おかえり!」
「え、シーナ、どうしたの?」
多江おばあちゃんの家から、帰宅する途中のコンビニ前でシーナを見つけた。
嬉しそうに僕に手を振るシーナ。
慌てて自転車を駐車場の方へ。
白線の歩道しかないけれど、交通量の多い主要幹線道路から通りひとつ入っただけの大きめのコンビニ。
人の出入りが多いから、どんな時でもシーナひとりでは来ないのに。
「えーと、アイス食べたいなぁって」
「じゃあ、僕も一緒にコンビニに入るよ」
「うん!雅樹の分も買うつもりだったから。何がいい?2個食べたかったら、両方買っていいからね」
「ん。お財布あるから、自分の分は自分で買うよ」
「それじゃ、何か飲み物も買おっか」
僕が自転車を停める間も、シーナは嬉しそうに話かけてくる。
そっと周囲を見回すと、駐車場から店に進む客の何人もが、シーナの方を見ていくのがはっきり分かった。
土曜午後の昼下がりのコンビニに、金髪の美少女。
目立つ。
こういう視線、シーナは気づいているはずなのに。
「……シーナ、冷凍庫にまだアイスあったと思うけど。そんなに食べたいアイスがあったの?」
「んー。勉強してて、外に出たくなっただけかも」
「僕が帰るまで待っててもよかったのに」
「ちょうど雅樹のお迎えもできたから、いいでしょ?」
にっこりと笑って、シーナが汗をかいたままの僕の腕をとった。
じわっと背後から視線が刺さる。
ですよねー。
稽古終わりで、髪がぼさぼさになっている汗だくの中学生に、金髪碧眼のきれいなワンピース姿の美少女が、じゃれついたらそうなりますよね!
さっき見た時、なんか男性客多かったし。
それでも、嫉妬の視線だけなら怖くない。
僕に見向きもせず、シーナにだけ視線を固めている奴の方がヤバいと経験的に知っているから。
とりあえず、防犯カメラもあるし大丈夫かな。
「炭酸飲料がいいな」
シーナに腕を取られたまま、僕は冷房の効いた店内へと入った。
「シーナはこのまま、うちに来る?」
「うん!それじゃあ、大きいサイズのペットボトル買おっか」
「少し昼寝するかも」
「いいよ〜。雅樹の寝顔を見てるから」
「やめてよ、そういうの」
「んふふ。じゃあ、内緒で見てる」
「犯行声明じゃん」
他愛のない会話のついでに、シーナの服のことも聞いてみた。
「ねぇ、その服さ、麗香さんが前に着てなかった?」
「うん、お姉ちゃんがお下がりにくれたの。午前中に段ボール箱が5箱も届いてびっくりしちゃった」
「相変わらずだね」
「ねー。着ないものはリサイクルショップに売ってって。
全部見るだけでも大変なのに」
「また悠河さんにも?」
「うん。ちょうど明日の午後に来る予定だったから。
ファッションショーするから、雅樹も来てね?」
「えー?僕、いる必要あるかなぁ?」
「あるある。雅樹が可愛いと思ってくれないと意味ないもの。ねっ?」
商品棚の下段にあるチョコレートをとりながら、シーナが僕に上目遣いでおねだりをしてきた。
「……わかった。わかったから、立って」
「ふふふふ。どうしたの雅樹?」
「わかってるなら、立って。胸元開いてる服なんだから」
「はいはーい。雅樹が気づいてくれたから、もういいもんねー」
にやにやと青い目を細めて、満足気に笑うシーナ。
本当に、どういうところで覚えてくるんだか。
僕が片手を顔にあてながら、カゴをシーナに突き出す。シーナはまだ笑み崩れながら、チョコレートをカゴに入れた。
その後、レジに向かうと、何故か店員さんが両手で顔をおおってた。なんだろう?
支払いを済ませてから、なんとなく振り返ったけど、両手を合わせて拝むようにして僕らを見送っていた。
具合でも悪いのかな?
働くって大変だなって思った。
店員「てぇてぇ……。あとで仲間に自慢しなきゃ。誘惑シーナたんに、赤面まさくん。たまらん……」




