ガベージブレイブ(β)_084_クソジジィ包囲網3
「そうか……あははは! クソジジィが魔物を召喚したのか。それでクソジジィはどうしているんだ?」
「ダルバンを排除しようと戦っております」
「そうか。逃げずに戦っているのか」
逃げればいいのに、本当にクソジジィは度し難い。
「帝都のほうはどうなっている?」
「連合軍による占領が完了しております。皇帝や皇族は全員捕縛または殺害されております」
まぁ、こんなものだろう。上手くいきすぎて落とし穴がないか少し心配になってしまうが。
「皆、仕上げだ。クソジジィに会いにいこうか」
俺は座っていた椅子から立ち上がり、黒霧を手に取った。
「やっとクソジジィさんをぶっ飛ばすのですね」
「おう、カナンの働きにも期待しているからな」
「はい、なのです!」
カナンの目がまるでその赤髪のように燃えている。
「ご主人様の本願、必ずや果たせます」
「ハンナの活躍にも期待しているぞ」
「お任せください!」
メイド服で身を固めたハンナだが、その大きな胸が揺れるのがよく分かった。
「ツクル君のために私もがんばるよ」
「一ノ瀬は無理するなよ」
「私だってツクル君の役に立ってみせるから」
俺は一ノ瀬のその優し気な笑顔がとても好きだ。これからも一ノ瀬には笑っていてもらいたい。
「ツクルさんの望みがやっと叶うのですね」
「アリーのおかげでここまでこれた、感謝しているぞ」
「まだ終わったわけではありませんよ」
アリーの言うとおりだ。クソジジィをぶっ飛ばしてこそ、俺の復讐は完遂になるんだ。
俺たちは空飛ぶ魔法の絨毯に乗ってラーデ・クルード帝国に入った。時々小競り合いをしているのが見えたが、そんなものはどうでもいい。
しばらく飛んでいると今までの小競り合いどころではなく、かなり大きな戦闘をしているのが見えた。
今までの鬱憤を晴らすために他人種連合軍がラーデ・クルード帝国の生き残り貴族たちと戦っているようだ。まぁ、どうでもいい戦いだ。
さらにしばらく飛んでいると、視界の先に大きな建造物が見えてきた。あれが俺の目指すクソジジィの本拠地である大神殿だ。
六つの尖塔で囲まれた巨大な西洋風の教会といった感じの建物は、淡い青色の壁に赤く目立つ屋根で統一されている。
六つの尖塔はあの大神殿の外側に結界を張るためのマジックアイテムになっているが、この結界ていどであればベーゼは簡単に通り抜けることができる。
そんな大神殿も半分ほどがダルバンに飲み込まれている。ダルバンはヘドロの魔物で、人間や魔物を取り込んで栄養分にして成長していく。
多くの人族がダルバンに取り込まれたのか、ダルバンの体は俺が知っているものより倍以上に成長している。
「いい感じに破壊されているが、転移門は大丈夫なのか?」
俺はベーゼに視線を向けて問いかけた。
「問題ありません。我が眷属が確保しております」
「予定通りだな。クソジジィはどうしているんだ?」
「ダルバンと戦っておりますが、苦戦しています」
「OK! 俺はクソジジィとダルバンの戦いを高みの見物するぞ」
ベーゼの低音ボイスに頷いて眼下に目を向ける。
「ツクル君、クソジジィさんはダルバンを倒せるかな?」
「エンシェント種の力ならダルバンを倒すのは可能だろう。ただし、クソジジィは土属性が得意だが、ダルバンは土属性には相性がいいし、クソジジィは戦い方を知らないからかなり苦戦するだろうな。もしかしたらそのままダルバンが勝つかもしれないぞ。一ノ瀬」
ここへやってきたのは、一ノ瀬が言うようにクソジジィと戦うためだが、クソジジィへの最後の嫌がらせだから、しっかりと高みの見物をさせてもらうつもりだ。
「ご主人様、クソジジィさんと戦わないのですか?」
「クソジジィがダルバンを倒してからでもいいし、逆に逃げ出す頃に出ていってもいい。どちらにしろ一番効果的な場面で出ていって、クソジジィが落胆する顔を見たくないか? カナン」
「うーん、カナンはどうでもいいですぅ。クソジジィさんに遺恨があるわけではないのでぇ」
カナンは可愛く首を傾げた。カナンがやるとあざとくないのが不思議だ。
ダルバンはヘドロの魔物で、その特性はスライムに似ている。不定形な形と分裂可能な体、そして増殖だ。栄養を溜めて大きくなっていくと、ある大きさになったら分裂して増殖する。そろそろその大きさだ。
「あ、ダルバンちゃんが分裂したのです」
ダルバンがクソジジィやオールド種たちの攻撃で砕けたように見えた。しかし、カナンが言ったようにダルバンが分裂して増殖したのを知ったクソジジィたちは嬉しそうな顔から一転、かなり落胆した。ざまぁ。
「4体のダルバンですか。どうも私はダルバンの臭いが苦手です」
「アリーさん、私もです」
「ハンナさんは私よりも鼻がよいですから、大変ですよね」
アリーとハンナが苦笑いしている。オオカミとキツネの獣人は俺たち人族よりも鼻がいいから、ヘドロの臭いに苦戦しているようだ。俺がダルバンをチョイスしたせいで苦労をかけるな、すまん。
オールド種が次々とダルバンに飲み込まれていく。クソジジィは苦虫を嚙み潰したような表情で、何かを考えている。
あ、逃げ出しやがった。さすがはクソジジィだ。配下のオールド種を見殺しにして逃げ出したよ。
「よし」
俺は黒霧を左手に持ち、空飛ぶ魔法の絨毯の上で立ち上がった。
「やっと出番なのです~」
カナンもやる気満々だ。
「ご主人様の露払いは私が務めさせてもらいます」
クールビューティーハンナが冷たい視線をクソジジィに投げる。
「ツクルさんのために、私もクソジジィさんと戦います」
アリーは凛とした佇まいで俺の後押しをしてくれる。
「ツクル君、私もがんばる! だから、ツクル君もがんばってね」
一ノ瀬の応援に俺は頷いた。
俺は皆の顔を見て、最後に深呼吸をした。やっとここまできた。クソジジィ、今からいくから待っていろよ。
「いくぞ!」
「「「「はい!」」」」
俺とハンナは空飛ぶ魔法の絨毯の上から飛び降りた。カナン、一ノ瀬、アリーの三人は空飛ぶ魔法の絨毯の上から絨毯爆撃を行う。
俺とハンナの横を人の頭ほどの大きさの炎が飛んでいく。カナンの魔法だ。自由落下の俺とハンナよりもはるかに速い速度で飛んでいくので、あっという間に地上に到達してダルバンとオールド種を巻き込んで燃え上がった。てか、俺たちの着地地点も燃え上がっているんだが!?
「ちょ、カナン、やりすぎ!?」
「ご主人様、炎を消し去ります!」
「おう、頼んだ!」
ハンナが拳を握りしめ、腕を振り上げる。
「はぁぁぁっ!」
腕を振り下ろすと、その拳圧で地上の炎が消えていき、その炎で焼かれていたダルバンとオールド種も致命傷を負った。オールド種はともかく、ダルバンは物理攻撃に高い耐性を持っているが、一瞬で数十発の拳圧を受けては消滅するしかない。
炎とダルバンとオールド種が跡形もなく消し去られ、ハンナの拳圧で大きく抉られた地面にオレとハンナは下り立った。
「な、何者だ!?」
まだ生きていたオールド種が俺とハンナを見て誰何するが、その姿はカナンの炎によって焼かれたせいか、焦げている。
「俺はツクル。こっちはハンナだ。短い間だが、よろしくたのむぜ」
「怪しい奴め!?」
「自己紹介したのに、怪しいやつとか傷つくわー」
「ご主人様を傷つけるなんて、酷いことをしますね。許しませんよ!」
ハンナが一瞬でオールド種との間合いを詰めて、鳩尾に膝を入れた。オールド種は「かはっ」とうめき声をあげて呼吸ができず苦しみながら、前かがみに地面に膝をついた。
「土下座がなっていませんよ」
ハンナはオールド種の後頭部を足で踏みつけ、オールド種の額から地面にめり込ませた。容赦がない。オールド種は頭蓋骨を複雑骨折して息を引き取ったようだ。クソジジィなんかの配下に生まれた自分を呪ってくれ。
建物の外にいる奴らはカナンたちに任せて、俺はハンナと共に大神殿の奥へ進む。すると懐かしいものを見つけたので、それを見上げる。
「転移門を見上げて何を考えているんだ?」
「俺はこの転移門でボルフ大森林に捨てられたんだ。だから感慨深いなと思ってな」
「いくら役立たずでも捨てるのはどうかと思うぞ。まぁそのおかげで私と出会えたのだからツクルにとってはこれ以上ない幸せではないか」
「なんだそれ? 自画自賛かよ」
黒霧のこの自信はどこからくるのやら。
「何者だ、ここをテ―――」
「邪魔です」
オールド種だと思われる奴が出てきたけど、口上を全部言う前にハンナに殴り飛ばされた。
名も知らぬモブよ、地獄にいったらクソジジィの部下だったことを悔やみながら地獄の業火に焼かれてくれ。
転移門のようにデカい扉の前にやってきた。
「ただいま開けます」
「いやいい。こういうものの開け方の礼儀というものがあるから、俺がやる」
ハンナが扉を開けようとしたが、俺はそれを制して古来からの礼儀に則り扉を開けることにした。
つまり、それは……扉を蹴破ることだ。ドンッ。
俺が扉を蹴ると両開きの二枚の重厚な扉は勢いよく吹き飛び、その先にいた数人を巻き込んだ。
「邪魔するで~」
俺は礼儀正しいので、ちゃんと断りをいれてから大神殿の中に入っていった。
通路に扉が落ちていて邪魔だったけど、扉の上を歩いて奥へ進んだ。
その際に、扉の下から変な声が聞こえた気がしたが、多分、気のせいだろう。
コミカライズ5話公開中。
マグコミへGO!
次は4月に更新します。




