ガベージブレイブ(β)_079_死者の国1
ありがとうございます。
なんとか3巻が発売できます。
11月15日発売予定です。
ゾンビの次はスケルトンゾーンに入った。
しかし、スケルトンもまたベーゼの支配下に置かれていくので、こちらの戦力が増えていくだけだ。
「骸骨がいっぱいいる……」
「一ノ瀬、怖いんだったら、目を閉じていていいぞ。俺が抱きかかえていってやる」
「あ、ありがとう。ツクル君」
蒼白の顔があまりにも不憫だったので、一ノ瀬をお姫様抱っこする。
「ツクルさん、私もスケルトンが怖いです」
「ご主人様、カナンも怖いです~」
「残念ながらハンナも怖いです」
「嘘つけ! お前たち、今までケロッとしていたじゃないか!?」
「そんなことありませんよ。私たちだって怖いのです」
アリーめ、悪知恵が働くからな……。
「分かった。一度帰って俺一人でくることにする」
「それには及びません。我慢します」
「カナンも我慢するのです!」
「ハンナも我慢します」
なんだかなぁ~。
「ごめんね、ツクル君……」
抱きかかえている体と俺の首に回している腕から、一ノ瀬の震えが伝わってくる。
一ノ瀬は魔物と戦えなかったが、それを乗り越えて魔物と戦えるようになった。
それだけでもすごいことだ。だから俺と共に行動することを認めた。
お化けが怖いのも、いつか乗り越えられると思う。
それまでは俺が一ノ瀬を守ってやればいい。
「一ノ瀬のせいじゃないから、気にするな」
「ご主人様、あれは人間では?」
カナンが指さすほうを見ると、人族や獣人族がこっちへ向かってくるのが見えた。
「いえ、あれも死霊族のようです」
アリーが耳をぴこぴこさせて否定した。
「あれらからは鼓動や息づかいが聞こえません」
「うわー、アリーさん耳がいいですー」
「生まれつき、耳はいいのです」
そういえば、俺がボルフ大森林から抜け出してきた日、盗賊(本当はフーゼルやドックムの配下)に襲われていた時、姿が見えないのに俺の存在を言い当てたな。
「アリーさんの仰る通りです。あのものたちからは死肉の臭いがします」
ハンナは鼻をすんすんさせてアリーを肯定する。
アリーもハンナも獣人で、アリーは【聴覚強化III】、ハンナは【嗅覚強化V】【聴覚強化V】を持っている。
しかし、【聴覚強化V】を持っているハンナよりも、【聴覚強化III】のアリーの方が先に音で気づいた。
これはおそらく、アリーのジョブが関係していると思う。
アリーはソウルマスターだが、そのジョブの中には言葉や音に関するスキルもある。
だから、【聴覚強化】のレベルがハンナより低くても音を聞き分けることができるんじゃないかな。
それにハンナは【聴覚強化V】よりも【嗅覚強化V】をよく使う気がするから、そういったことも関係しているのかもしれない。
「あれも死霊族ならベーゼに任せておけばいい。なぁ、ベーゼ」
「お任せあれ」
頼もしいベーゼが渋い低音ボイスで応えてくる。
しかし、どんどんおどろおどろしさが増していくな。
配下にした死霊族の数に比例するようだ。
ちなみに人間に見える死霊族はグールという種族だった。
人間の姿に騙されて近づくと、毒の爪や毒の牙によって殺されて食われてしまう死霊系種族だ。
だが、死霊系なのでベーゼの配下になっていくことになった。
次はゴーストが現れた。
ゴーストは不定形の霞のような存在で、リムレイの下位互換の種族だ。
物理攻撃が効かない面倒な相手なんだが、俺たちにとっては雑魚でしかない。
それ以前にベーゼの配下になるためだけに出てきた存在だ。
その次がマミーだ。
マミーは包帯をぐるぐる巻かれたミイラ男だ。いや、女もいるかもしれないけど、知らんし。
ピラミッドはどこにある!?
さらにその次が首なし騎士だ。
兜のない鎧が大剣を振ってくるんだ、かっこいいじゃないか。
首なしの馬はいなかったけど、大剣を振るその姿がいい。俺の矜持に触れるんだよ。
そして今、俺たちの前にはリッチが立ち塞がる。
ベーゼに似た骸骨の頭と真っ黒なマントのリッチだが、迫力ではベーゼのほうが一枚も二枚、いや五枚くらい上だ。
「ベーゼの下位互換か。任せたぞ」
ベーゼの種族はリッチデストロイを経てリッチディザスターに進化している。
下位互換というのはあながち間違いではないだろう。
「承知しました」
ベーゼはスーッと前に出て、手に持った杖を掲げる。
「我が主様のご前である。ひれ伏すがよい」
ベーゼがそう言うと、リッチたちは地面に頭(頭蓋骨)を擦りつけた。
まぁ、こうなることは分かっていたよ。
とうとう死の大陸のほぼ中央にやってきた。
「主様、あそこに見えますのが、死者の国への入り口です」
西欧風の延々と続く石造りの壁と、巨大な鋼鉄の両開きの門がそこにあった。
「で、あのデカいのが門番ってことだな」
「然様でございます」
門の前には三つの首をもつ大きな犬が眠っている。
「あれはケルベロス?」
お化けゾーンが終わったので、自分の足で立っている一ノ瀬が声を漏らした。
真っ黒な体毛に盛り上がった筋肉が見て取れる三つ首の犬は、一ノ瀬がいうようにケルベロスだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
氏名:ポチ・タロウ・ジロウ
種族:ケルベロス レベル四百五十
スキル:【豪脚III】【超再生III】【生体感知III】
種族スキル:【門番】【並列思考III】【業火・猛毒・石化のブレスIII】
能力:体力EX、魔力A、腕力EX、知力C、俊敏A、器用C、幸運D
称号:甘党
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
豪脚 : 健脚の上位スキル。非常に屈強な足腰をしている。
超再生 : 部位欠損でさえ修復してしまう。
生体感知 : 生者の気配を感じ取ることに長ける。
門番 : 冥界の門の周辺において、能力上昇(大)、復活の効果がある。
並列思考 : 複数の思考を同時に処理できる。
業火・猛毒・石化のブレス : 業火、猛毒、石化のブレスを吐く。
甘党 : 甘い食べ物が大好き。
えーっと、なんて言えばいいのか……。
まず、名前だ。ポチ・タロウ・ジロウ。どう考えても日本人的なネーミングだろ!?
そして、称号の『甘党』だが、称号だから『地獄の門番』とか『冥界の門番』のほうがいいと思うんだけど、なんだか親しみが湧くじゃないか。
そういえば、ケルベロスって甘い食べ物を与えると大人しくなるって聞いたことがあるな。
「レベル四百五十は魅力的だ。経験値の匂いがするぜ」
俺たちの誰よりもレベルが高いケルベロスと戦わないなんてもったいない。
「ご主人様、あの犬はこのハンナにお任せください!」
「俺よりレベルが高いぞ、大丈夫か?」
「あのていどの犬を倒せないのでは、ご主人様に鍛えていただいた意味がございません」
ハンナはやる気だ。
狼獣人と三つ首の犬の戦いか。見ごたえがありそうだ。
「分かった。だけど、倒すのは門の付近にしてくれ」
「それはつまり、復活させるということですか?」
「アリーの言う通りだ。レベルが高いのに復活してくれるっていうからな。利用しない手はないだろ?」
「復活の間隔次第ですが、上手くいけば全員のレベルを上げることができますね」
「分かりました。ご主人様の仰る通りにいたします」
ハンナは体の軸がまったくぶれない歩き方で、ケルベロスのほうへと歩いていく。
メイド服だけど、なんというか後姿が凛々しい。
寝ていたケルベロスが鼻をひくひくさせて、目を開ける。
「「「ガルゥゥゥ……」」」
「番犬が居眠りしていてはいけませんよ」
いきなりケルベロスを挑発しているが、ケルベロスに言葉は通じるのだろうか?
ケルベロスが四本の足で起き上がる。
デカいのは分かっていたが、本当にデカい。
体高だけでハンナの三倍はあるか? 二階建ての家くらい高いぞ。




