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ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】  作者: 大野半兵衛
準備

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67/88

ガベージブレイブ(β)_066_物理!

ガベージの2巻の発売が決まりました。

発売予定は4月になります。

ありがとうございます。

今回はWeb版では触れていないことも多く出てきます。

一二三書房様 サーガフォレスト から発売です。

https://www.hifumi.co.jp/books/info/saga_forest_release.html

 


「俺に用とはなんだ?」

「そんなに構えないでください。まず自己紹介からさせてもらいますね。僕はこの冒険者ギルドのギルド長のエンジョイです」

 ……エンジョイって、ふざけてるのか?

 いや、名前はこいつが悪いわけじゃない、こいつの親が悪いんだ。しかし、何が楽しくてエンジョイなんて名前にしたんだ?

「どうしたんですか? 私が自己紹介しただけで、なんで殺気を出すのかな? みんなが楽しめるようにって、わざわざ改名したんだよ?」

「改名したんか!?」

「あははは、みんなそう言うんだよ。なんでかな?」

 このギルド長、二十代後半の金髪碧眼のイケメンでそこそこ強いのに残念な性格なのか?


「君はタロー君でいいんだよね? それ、本名なの?」

「あんたにだけは言われたくない!」

「ごもっとも!」

 なんだか調子が狂う奴だ。

 なんで俺がこのふざけたギルド長と話をしているかというと、冒険者たちがどうしてもと頼んできたからだ。

 俺も面倒なので、冒険者ギルドに近づくつもりはなかったんだが、町中を歩いていると五人の冒険者に囲まれて、いきなり土下座されてついてきてくれと泣いて頼まれてしまっては、さすがに断ることができなかった。

 あの冒険者たちはこのギルド長に、俺を連れてこいと命令されていたのだ。しかも、俺を連れてこなかったら、降格とか脅されていたらしい。


「えーっと、あまり時間をとっても迷惑のようだから、要件を言うね」

「早く言え」

「そんなにつれないこと言わないでよ」

 ダメだ、こいつの言葉に反応すると話が長くなる。

「……なんだ、つまんないの」

 くそ、十発くらい殴ってやりたい。

「要件はね、タロー君のランクを上げることに決定したんだ。だから、これが新しいギルド証ね」

 金色のプレートをもらった。


「それ、Aランク冒険者のギルド証ね。名前、ランク、預かり金、それかダンジョンの踏破履歴が記載されているから」

 たしかにそれらの情報が記載されている。

 しかし、預り金ってなんだ?

「本当はSランクにしてあげたかったけど、僕の権限ではそれが目いっぱいなんだ。勘弁してね」

「別に頼んでないし」

「そんなこと言わずにさ。普通はやったーって喜ぶんだよ? 嬉しくない? ほら、エンジョイしようよ」

「それが言いたいだけだろ?」

「うふふふ、そんなことないよ。あ、そうだ、預り金はゴールドランクダンジョンを踏破した報酬だよ。他に魔物の買い取りと迷惑料も含めて三億ゴールドが入っているからね。世界中の冒険者ギルドで引き出せるからさ」

 ほう、銀行のような機能があるのか。意外とハイテクじゃないか。

「Cランクからは扱うお金の額も大きくなるから、そういう機能がついているんだ。これからもよろしくね」

 これかも冒険者活動をする気はないが、このギルド証を失効しないていどには活動するかもな。


 ▽▽▽


 この世界では人族至上主義の国々が争いの中心だ。

 特にラーデ・クルード帝国とルク・サンデール王国、そしてテレサ法皇国が人族至上主義の中心的な国だ。

 人族至上主義にとっては人族以外の種族は虫以下である。だから、人族至上主義の国々は他種族を迫害するし、同じ人族であっても人族至上主義でなければ迫害を行う。

 なぜ人族至上主義などという思想が人族に広がったのか。それが分かればこのふざけた思想を駆逐できるかもしれないが、俺はそんなまどろっこしいやり方をするつもりはない。

 人族至上主義が人族にとって都合のよい思想だとしても、それを否定して徹底的に潰してやる。

「ご主人様が黒い笑顔なのです……」

「ご主人様、背筋が凍りました……」

「ツクル君、悪い顔をしているよ……」

 お前たちは何を言っているんだ? 俺がそんな悪人みたいなことをするわけないだろ。


「主様……」

 おっと、ぬーっとベーゼが現れた。ちょっと驚いた。

「どうした?」

「魔族が再び侵攻を始めました」

「ふーん。で、どこに向かっているんだ?」

 俺の邪魔にならなければ魔族が何をしようと、俺が動くことはない。だけど、俺の邪魔になるのであれば、それは排除の対象となる。

「魔族はラーデ・クルード帝国の帝都に向かっております。帝国も魔族に対する軍を展開しておりましたので、明日には戦いが起きる可能性があります」

「そうなると、クソジジィも動く可能性があるか……」

 クソジジィがいると思われる神殿はラーデ・クルード帝国にある。

 現在、魔族はラーデ・クルード帝国領の3割ほどを手に入れているから、もっと領土を増やそうと思ったのだろうが、いきなり大将首を狙うようなものだな。

 さて、クソジジィはどう出るかな? 


「ラーデ・クルード帝国を魔族が引っ掻き回してくれるのなら、俺はルク・サンデール王国を先に潰そうと思う」

 俺はカナン、ハンナ、一ノ瀬、そしてベーゼの顔を順番に見た。

「ベーゼ、ラーデ・クルード帝国の方は監視だけでいい。ルク・サンデール王国に戦力を回せ」

「はっ」

「ハンナ、一ノ瀬は戦えるか?」

 一ノ瀬のことはハンナに任せておいたが、本当に戦えるようになっているのだろうか?

「もちろんでございます。ご主人様自らお確かめになりますか?」

 クールビューティのハンナがにっこりとほほ笑んだ。美人だね。

「そうだな……一ノ瀬、前回のゴールドダンジョンのボスにリベンジってのはどうだ?」

「うん、がんばる!」


 そんなわけで、前回踏破したゴールドランクのダンジョンに向かった。

 今回は穴を開けずに各層を踏破していく予定でいる。これは一ノ瀬に戦闘に慣れてもらうためだ。

「はぁぁぁっ!」

 一ノ瀬は持っていた聖女の杖で魔物を殴りつけて頭を潰していく。

「「………」」

 俺とカナンはその光景に呆然とした。

「次よ! てやぁぁぁっ!」

 また聖女の杖で魔物の頭を潰した。

「いやいやいや、一ノ瀬は魔法使いだろ! 聖女だろ! 物理で殴るって……いいけどさぁ……」

 ハンナよ、お前は一ノ瀬にどのような教育をしたのだ? いや、いい。なんだか聞くのが怖いから。


 殆ど物理で殴って魔物を倒していく一ノ瀬。魔物を殴りながら笑うのは止めてくれ……夢に出てきそうだ。

 そしてやってきたボスの部屋。ボスは前回と同じカマキリの上半身にクモの下半身のカマクモだ。

「アクアちゃんいくよ!」

「はーい。えぇーい!」

 精霊のアクアが水の膜でカマクモを拘束すると、一ノ瀬が走り出した。

 一ノ瀬は動けないカマクモにあっという間に接近して、大きな鎌を聖女の杖で殴りつけた。だから、魔法を使わないのか!?


 右腕の鎌が粉砕されてしまったカマクモはなんとか水の拘束を解こうともがくが、拘束は解けない。

 レベル二百近い一ノ瀬の使役する精霊とレベル百程度のカマクモでは基礎能力が違うから拘束が解けるわけがないのだが。

「たぁぁぁっ!」

 もう一つの鎌も粉砕されて、カマクモは身動きもできず、まな板の上のコイ状態か?


 一ノ瀬は大きく飛びのいて、やっと魔法を発動させた。

 お、よく見たら詠唱していない!

 光の矢が十本現れて、それがカマクモの体中に刺さった。

 断末魔の叫び声を上げてカマクモは力なく崩れ落ちた。

 結局、魔法は最後しか使わなかったが、物理攻撃系の聖女様はご満悦のようだ。


「一ノ瀬が戦えるようになったのはよく分かった!」

「えへへへー。私、がんばったよ」

「おう、がんばったな」

 なぜか一ノ瀬が頭を出してくる。これは撫でろということか? 恐る恐る撫でてみると正解だったようで、一ノ瀬は嬉しそうにした。


「一ノ瀬が戦えるのは分かった。その上で聞くが」

「何? なんでも聞いてよ、でもスリーサイズとかはダメだからね」

「ん、最後の方が聞こえなかったぞ。なんて言ったんだ?」

「ううん、なんでもないの!?」

 一ノ瀬は頬を赤く染めて首を振った。なんだったんだ?

「まぁいいか……話を戻すが、一ノ瀬は人間を殺せるか?」

「え?」

 一ノ瀬が固まった。

「ルク・サンデール王国を潰しにいくんだから、戦う相手は人間になる」

「………」

 厳しいことを聞いていると思うけど、人間を相手に戦うことになるのだから、この質問への返事次第では一ノ瀬を連れていくのは回避しないといけなくなる。


「大丈夫。人間相手でも私は戦えるし、悪い人なら殺せるよ!」

 一ノ瀬が俺の目を真っすぐ見て答えてくれた。

 その真剣な眼差しはとても嘘を言っているようには見えなかったし、強い意志を感じたので、俺は頷いた。

「一ノ瀬は強くなったな」

「任せてよ!」

 腕をL字に曲げて精いっぱい力こぶをつくっているようだが、肉体的な強さじゃなくて精神的な強さのことを俺は言っているんだ。はぁ……細かいことはいいか。


「ご主人様、ルク・サンデール王国はどのように潰されるのですか?」

 ハンナがお茶を淹れながら俺に聞いてきた。ここ、ダンジョンボスの部屋なんだけどな。

「たしか、ドッペルゲンガーがルク・サンデール王国にも入り込んでいたよな?」

「はい、主要な者は既に支配下にあります」

 支配下というか、乗っ取ったんだけどね。

「ルク・サンデール王国の国王に人族至上主義の放棄を宣言させよう。そうすれば人族至上主義の肯定派と否定派で分裂して争いだすと思う」

「ツクル君、それだと内乱とかにならないかな? 内乱になったら奴隷にされている人族以外の種族の人にも被害があると思うんだけど……」

「む、そうか……そうするとどうすれば……」

 こういう時に作戦とか戦略を考える軍師的なポジションの人材が欲しいな。

 カナンはお笑い枠だし、ハンナはメイド枠、一ノ瀬は真面目枠だからな……。


「地上に戻ってから考えるとしよう!」

「そうだね」

 俺たちはハンナの淹れてくれたお茶を飲んでから、地上に戻った。


「お久しぶりです、ツクルさん」

「アリー? 何でここに?」

 ダンジョンから戻ると、家の前でアリーが待っていた。

「ベーゼさんに連れてきていただきました」

 どうやら、アリーはベーゼの部下に話しかけ、俺に大事な話があるからと、エンゲルス連合国にある俺の拠点に連れてきてもらったようだ。

 それならそうと、報告をしてくれればいいのに。後からベーゼを叱っておこう。


 立ち話もなんだから、アリーを家の中に誘ってソファーで寛いだ。

「こんなところに家を建てたのですね。我が領内にいくらでも屋敷を用意しましたのに」

 アリーは少し悲しそうな目で俺を批難するように見てきた。

「いや、これは仮だから」

「これで仮の家なのですか? 相変わらずツクルさんは面白いお方ですね」

 口を押えてうふふと笑うアリーの所作が優雅だな。

「それで、話ってなんだ?」


 

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