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ガベージブレイブ【異世界に召喚され捨てられた勇者の復讐物語】  作者: 大野半兵衛
準備

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ガベージブレイブ(β)_062_ダンジョン2

 


「ベーゼ、あの二人の行動を見張っておけ。怪しい動きをしたら報告しろ」

 ギルド長と騎士団長の動きをベーゼに見張らせた。

 あいつら、俺ではなく他にワイバーンを倒した奴がいるだろうから、その正体を探るためにワイバーンを横領しようとしたと言っていたが、怪しいところだ。

「それから、この国の権力者についても探っておけ」

「承知しました」

 ベーゼが空間の歪みの中に消えていく。俺も闇の中に入ることができるから同じようなことができるぞ。えっへん。


「ベーゼは便利よね。どこにでも行けるんでしょ?」

 最近はベーゼにも慣れた一ノ瀬が羨ましがった。

「大概の所には行けると思うぞ」

「そう言えば、ベーゼはツクル君の召喚した魔物だよね?」

「そうだぞ」

「他には召喚できないの?」

「……考えたこともなかったな。うーん、多分できると思う」

 ベーゼがあまりにも優秀だから他の魔物を召喚するという考えがなかったのだ。

「召喚しないの?」

 ベーゼ以外の召喚か……そうだ、いいことを思いついた!

「なら、召喚してみるか」

「本当に!? 見ていていいかな?」

 俺はテーブルの上に置かれたティーカップを持ち上げて、いい香りを楽しんでから口をつけた。

「構わないぞ。あと、ハンナの淹れたお茶はいつも美味いな」

「ありがとう。ツクル君!」

「ご主人様に喜んで頂けるのが、このハンナの喜びです!」

 二人ともいい笑顔だ。

 俺は二人から視線を動かして、俺と同じくお茶を楽しんでいる……いや、お菓子を楽しんでいるカナンを見た。

 可愛い口元にお菓子のカスがついているのを見ると、なんだか和む。

 三人は俺の荒んだ心にオアシスを与えてくれる存在なのかもしれないな。三人を大事にしないとな。


「よし、やるぞ! 【死霊召喚術】発動!」

 すると、俺の目の前に黒い霧のようなものが現れて、その霧が固まっていく。ただし、固まっても霧は霧であり、不定形な形をしていた。

「これ何?」

「ご主人様、それはもしかして……」

「黒いです~」

 一ノ瀬はちょっと引き気味で、ハンナは俺が何を召喚したのか分かっている感じだ。そしてカナンは相変わらずののほほん系である。

 黒い霧の塊は形を変えて人型になった。もちろん、真っ黒だ。


「やはり、ドッペルゲンガーですか?」

 そう、これはハンナの言う通りのドッペルゲンガーだ。

「私の記憶では、ドッペルゲンガーは人の存在を乗っ取る魔物です。とても珍しい魔物だと聞いています」

「ハンナは物知りだな。こいつはハンナの言うようにドッペルゲンガーだ。俺が人族至上主義の国を、そしてクソジジィを倒すための布石としてこのドッペルゲンガーを使おうと思う」

 クソジジィを倒すのは簡単じゃないのは俺でも分かる。あいつは長い間、人族と他種族を争わせていただけあって、戦い慣れている。

 だからクソジジィの周囲を切り崩しておかないと、俺たちの方が危険だ。そして、その為に人族至上主義という馬鹿げた慣習や考え方を変えなければならない。

 しかし俺は政治家ではないし、思想家でもない。そんな俺が人族至上主義を変えるのは難しい。全てが力で解決できるわけじゃないのだ。

「人を乗っ取れば……でも乗っ取られた人はどうなるの?」

「完全に乗っ取ると元々の自我はなくなり、ドッペルゲンガーがその体の持ち主になる。一ノ瀬にとっては気分がいいものではないだろうけど」

「いいの。私も人族至上主義のことはあり得ないと思っているから。あの考え方は絶対に変えなきゃいけないから。でも、私にはそんな力はないし、力があってもできないと思うから……何もしないのに文句だけ言うのはいけないと思うから……」

 一ノ瀬がそんなことを考えていたなんて思ってもみなかった。納得はしてなくても理解してくれているだけありがたい。


「ドッペルゲンガーよ、行け! 俺の復讐を完遂させるための礎になるのだ!」

 ドッペルゲンガーから了承の意が伝わってきた。言葉を喋れないけど、俺の言うことは理解できるということだ。

 そして、霧が霧散するようにドッペルゲンガーは消えていった。

 その光景を見ていた一ノ瀬が何か言いたそうなので、聞いてみた。

「私も眷属がほしいなと思っていたの」

 一ノ瀬に眷属か、いいかもしれないな。

 一ノ瀬には死霊系は似合わないから、そうだな……精霊、精霊召喚術とかあるのかな? 普通の召喚術でいいのか? 【等価交換】で創れるかな? 試してみるか。


「ちょっと待ってくれよ、できるか分からないけど、創ってみるよ」

「え? 大丈夫?」

「無理そうならキャンセルするから、大丈夫だ」

 俺は色々な肉を食った。俺には不要な十数個のスキルを生贄にして【等価交換】で精霊を召喚できるスキルを創るためだ。

 膨大な魔力が体から抜き取られていくのを感じたが、まだ余裕はある。そして、俺の視界にはあのスクロールが出た。

 成功だ。【精霊召喚術】を創り出せた。この【精霊召喚術】を【スキル付与】で一ノ瀬に与える。

「えっ!?」

「【精霊召喚術】を一ノ瀬に渡したけど、成功のようだな」

「わー、ツクル君、ありがとう!」

 一ノ瀬は俺に抱きついて喜んでくれた。うん、一ノ瀬のささやかな胸の柔らかさが伝わってきて気持ちいい。

「ご主人様、胸なら私のをお触りください」

「ハンナさんほどじゃないけど、カナンのも触っていいですよ!」

 この二人は何を言っているのだ!? 俺は女の子の胸を触るような男ではないぞ! え? 一ノ瀬の胸の感触を楽しんでいただろって? それは抱き着かれたからだ! 俺から触ろうなんて思ったことは……まぁいい。

「ツクル君はそんなことしないよね?」

 一ノ瀬が不安そうな瞳で上目遣いをしてくると、とても悪いことをしているような気になってしまう。

「もちろんだとも、俺は立場を利用して女の子の胸を触ったりしない!」


 一ノ瀬の【精霊召喚術】を試すことになった。詠唱をしているけど、普通の魔法とは言語が違うようだ。てか、なんで詠唱をするのだろうか? 後から聞いてみよう。

 一ノ瀬の周囲に光が発生して、それが一ノ瀬を中心に三つの輪になった。魔法陣のようだが、何かの記号のような言語が浮かび上がった。

 綺麗な一ノ瀬を中心に幻想的な光景が広がっているように見える。

 三つの光の輪が空中に移動していき、一つになると、ひときわ眩しく光った。

 光で視界はゼロになったが、膨大な魔力が集まっているのは分かる。

「「「「……」」」」

 俺たちの目の前にはまるで妖精のような小さな少女が空中にぷよぷよと浮いていた。


「や~、ボクは水の精霊王だよ。久しぶりのしゃばだよ! う~ん、気持ちいいね!」

 少女がボクっ娘だったのはいいけど、しゃばはダメだろ? せめて地上とか言えよ。

 ふわふわと俺たちの周りを飛び回って挨拶をしていく精霊は最後に一ノ瀬の肩に降り立った。

「君の名前を教えてよ。それとボクに名前をつけてよ」

 体長15㎝ほどの四枚のトンボのような翅をもった精霊は一ノ瀬に名前をつけろと言った。

「私は涼乃よ。貴方の名前は……アクアってどうかな? 綺麗な水色の髪の毛にぴったりだと思うんだけど」

「アクアか、うん、いいよ。ボクはアクア。これからよろしくね!」


 色々あったが、ゴールドランクのダンジョンに入る約束の日になった。

 食料は大量に持っているから、問題ない。そんなに必要ないと思うけど。

 水は俺のスキルやカナンの魔法で創れる。武器や防具も俺が創れる。家も【素材保管庫】に入れてある。

 俺たちに死角はない!


「行ってくるぞ」

「タローがゴールドダンジョンを踏破してくれることを祈っているぞ!」

 ギルド長、騎士団長、そしてギルドの綺麗どころだと思われる女性たちが俺たちを万歳三唱で見送った。

 恥ずかしすぎるだろ。

 ゴールドランクのダンジョンは十一層まで踏破されているが、そこまでの地図をギルド長が用意していた。

 俺はそれをパラパラと見た。【等価交換】で【マップ】スキルを入手しておいたので、これだけでいい。

 しかし、この世界の地図はかなりいい加減だ。日本の戦国時代のころの地図よりもいい加減だ。


「そこを左な」

「「「はい」」」

 俺の【マップ】は半径10Kmの地形が脳裏に表示されるものだ。機能としては地形の表示、地図の縮小拡大、魔物の表示、人間の表示、罠の表示、宝箱の表示がある。とりあえずこれだけあればいいかな、と思っている。

「ここでいいかな」

「ご主人様、ここに何かあるのですか?」

 カナンが不思議そうに聞いてきた。

「いちいち下の階への階段まで行くのは面倒だから、ショートカットしようかと思ってな」

 このダンジョンは洞窟型のダンジョンだから、次の階へ行くのに階段を通って下へ降りていく。だけど、俺が階段を通らなければいけないなんて誰が決めた?

「まさか……」

 一ノ瀬が俺の思惑に気がついたようだ。

「この床を破壊して下の階に行く!」

「やっぱり……ツクル君らしいわね」

「おおー、ご主人様、凄いのです!」

「さすがはご主人様です!」

 カナンとハンナが褒めてくれた。俺は褒められると調子に乗ってしまうタイプなのだ!

 魔法の絨毯を出して3人を乗せると、俺は黒霧を抜いた。

「行くぞ黒霧! こんな床など一刀両断だ!」

「こんなものを破壊する為に私を使うな!」

 何か言っているが、聞こえない!

「流星牙斬衝っ!」

 いきなりの大技だ!

 俺の放った流星牙斬衝は床をガリガリと削って大穴を開けた。


「おお、なんかあっけないな」

「こんなことに私を使うとは、説教だ!」

「ははは、そう言うなよ。黒霧だって使われて嬉しいだろ?」

 ブツブツと文句を言ってくる黒霧をなだめるのも面倒だから、俺は大穴に飛び込んだ。

「先に行くぞ」

 床の厚みはだいたい30mで、その下には20mほどの空間があるから50mほど自然落下した。ただ自然落下するのは面白くないので、30回転20回ひねりで最後は着地をしっかりと決めた。

 オリンピックでやれば間違いなく金メダルをとれそうだけど、誰も50mから落下する競技などやらないだろう。とりあえず30回転20回ひねりをスメラギと名づけてみた。

「着地を決めて、顔も決め顔なんですけど!」

 一ノ瀬がツッコんでくれた。分かっているじゃないか。


「ご主人様、次はこのハンナにお任せください!」

 なんと、ハンナも挑戦するだと!?

 ハンナは片膝を床につけると、右手を大きく振り上げた。

 ドゴン! ピキピキと地面に亀裂が走ったと思うと、ガンッという音がしてハンナを中心にクレーターができて5mくらいの穴ができた。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ハンナはそこで高速連打をすると、穴がどんどん深くなっていった。

 そしてまた30mほど穴を作って下の空間に出たが、ハンナはたった20mほどの高さで32回転22回ひねりをやってのけて着地を決めた。

「俺の世界記録を返せ……」

 思わずつぶやいてしまった。

「ぷっ。残念だったね」

 一ノ瀬が笑いたいのを我慢しているのが分かった。落ち込むぜ。


「はいはいはーい。次はカナンがやるのです~」


 

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