358話戦いの終わりと向かう先
魔王領における、スティグマとの戦いは終結した。だが、結果としては犠牲が大きすぎるものであった。
「カラミィ……」
フィレン・アーミラが大切な仲間に向かって声をかける。だが、彼女は返事などしない。二度とできない。
「師匠は、私を庇って……」
暗い声でミラが呟く。これまで、どんなピンチでものほほんとしていたミラだったが、師を目の前で失った辛さは計り知れない。
「カラミィは、あなたが弟子なってくれて嬉しかったって言っていたわ……。だからどうか彼女の教えてくれたことを忘れないであげて」
普段冷静なフィレンが涙を流しながらミラに伝える。ミラはそれに力無く頷いて俯いた。
「レン……酷い怪我だわ」
ルティアが言いながら治療を始める。目の前でカラミィが死ぬという辛い場面を見てしまったが、今は治療に専念しようとする。
ボロボロになって気を失っているレンの怪我を治療していく。
「う……」
呻き声を上げながら、エリアスが近づいてくる。
「無理しないで、エリアス!」
「大丈夫……レンの近くにいたい」
と言いすぐ側に座り込む。エリアスとしてもかなりの疲労だ。レンの治療を終えればすぐにでも治したいと思う。
現在、崩落した魔王城の周囲は、皆で集まって治療などを行なっている。城に攻めてきていた魔物達の相手をしていた、救国の英雄や聖騎士達も凄まじい怪我だ。
アルファードやハルカも怪我のため、動けないとのことだ。彼らが動けないというのは戦いは苛烈を極めたことがわかる。
「本当に、カラミィさんは……」
「ええ、私達を庇ったせいでね……ミラが心配だわ」
エリアスにルティアが答える。
「ベルゼが言っていたのは本当だったんだ……」
「そっちも大変だったんでしょ?とんでもない闇が空から降り注いでたのが見えたわ。それにレンのお母さんのことも」
「うん……」
俯きがちにエリアスが呟いた。ぐっと涙が溢れるのを我慢する。
「レンは、大丈夫かしら?目が覚めたら……」
「その時は私がどうにかする!約束したから」
目覚めたレンがどのような行動に出るかわからないため不安も大きいがレミやレイが頼んできたのもあるが、やはり最初に声をかけて気持ちを共有するのは自分でありたいと思ったのだ。
「エリアスだって辛いんだから無理しちゃダメよ!」
とルティアが言いエリアスを抱きしめる。どこか心が温まるのを感じるエリアスだった。
「ゴホッ……ゴホッ……」
ベルゼが咳き込んでいた。魔王領から離れた場所だ。
「まさか、予想以上に身体が応えとるとはのぉ……」
いきなりディザスターほどの強力な存在を喰らえば身体に多少の負担が掛かることは予想していた。だが、それが予想以上に大きいことに驚いているのだ。
「光明の魔女の攻撃を喰らってしまったのが痛かったか……忌々しい。じゃが、光明の魔女は死んだ。それにレン・オリガミのスキルも全てワシが食って消えてしまった。もう誰も止めることは出来まい!」
と吐き捨てる。次期に慣れるだろうと思いながら、これからどこに向かうかを考えるのだった。
後ろに控える、リータの燃え上がる怒りの眼差しに気づくことなく。
魔王が、賢者が、光明の魔女が死にそのうちに多くの国に激震が走ることだろう。さらには、災厄の力を手に入れた存在が解き放たれたとなるとどこまで世界が保つかわからない。
世界は一体どこに向かっていくのか……
8章魔王領争乱編完




