348話理不尽と賢者の終わり
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「うむうむ、苦楽を共にした仲間ならば本物か見極められるものよな。わからなければマサトも悲しんだじゃろう」
「知ったような口を!」
ニタニタと笑うマサトに対して、カラミィは力が入らないながらも杖を突きつける。仲間を侮辱された様な怒りもこもっていた。
「まずは、名乗らねばの。ワシはベルゼ。早速じゃが、お主が邪魔でのぉ。さっさと消えて貰おうとやってきたわけじゃ」
マサトの頭上に魔法が展開される。すぐさま、カラミィが杖を構えるがマサトが続ける。
「ベルゼ!レンが言ってた奴」
「なんでこいつがここに……」
ルティアとミラの身体が強張る。
「ちょっとマサトの身体を借りてのぉ。それに、もう用は済んだ。このまま、世界を破壊するんじゃよ」
「レン達は、守りきれなかったか……」
カラミィが呟く。だが、そこには仕方がないという気持ちがあった。相手はスティグマ。予想もしない手段で人々を苦しめてきた連中だ。敵の悪知恵の方が勝ってしまったのだ。
「じゃがのぉ、賢者。お主が厄介じゃからな。王都でディザスターの攻撃に数度耐えた貴様の結界、あれを出されればこちらも面倒じゃ」
「それで私を殺そうとしたわけか!」
「じゃから死んでくれんかのぉ?」
さも普通の様に言ってくるベルゼに対して、ミラも怒りを禁じ得ない。
「ふざけるな!お前が死ね、これまでどれだけ酷いことをしてきたんだ!」
と声を上げる。
「ほっほっほ、手が滑ったのぉ」
「なんっ……!ミラッ!」
「ギャッ!ぐうぅ……」
矢の様な魔法の攻撃がミラの肩に突き刺さる。
「貴様!」
カラミィが魔法を放とうとした瞬間、
「賢者、お主の行動次第で後ろの2人が死ぬぞ?」
矢の魔法は、後ろの2人……ミラとルティアに狙いを定めている。マサトとの戦いで力を使い切っているため、魔法を喰らえばひとたまりもないだろう。
「師匠!あいつを攻撃しろ!」
ミラがカラミィに言う。
「ワシを攻撃するのも構わん、じゃが2人は諦めるのじゃな。お主がどう動くかは任せるぞ?」
「悪趣味だな……」
カラミィが吐き捨てる。
魔法の矢がミラやルティアに狙いを定める。カラミィは、ミラの方を向き悲しそうに微笑んだ。
後少ししか力が入らない身体で出来ることなど限られている。
「師匠、やめろ!」
「賢者様!」
すでに2人も察している。カラミィがどう動くかなど。
「本当に急すぎるんだよ……置いていくぞ、大切な仲間達」
カラミィが呟いた直後に魔法がミラやルティアに向かって放たれる。
ルティアとミラが地面に伏せる。当たればひとたまりもないであろう威力の攻撃だ。
ドォン!と幾つもの音を立てて、周囲の地面に穴を開け、木を吹き飛ばし破壊する。
「師匠……」
静かにミラは目を開ける。正直、目を開けたくなかった。このまま、時間が止まって欲しかった。開けてしまえば、きっと自分は目の前の出来事を受け入れることができないからだ。
「あ……」
ルティアの声が小さく溢れるのが聞こえた。時間がゆっくりと動いている様な変な感覚にミラは溺れる。
「やはりそう動くじゃろうな」
予想通りというベルゼの言葉が響く。
ミラやルティアを抱きしめる形で、ボロボロのカラミィは2人を庇っていた。そんな彼女から言葉が発されることはない。
「し、しょう……」
すでに事切れているカラミィにミラは、呟くことしか出来なかった。




