330話散策と運営からの手紙
「空は意外にも綺麗なもんだな……」
魔王城の外に出ているレンは、空を見上げて呟く。魔王領と言うと空とかは、光がない黒い空でも広がっているのかと思っていたが、普通に青空だ。
「良い日差しなのに、フードを被ってないといけないのは嫌だなぁ」
文句を言うのはミラだ。正直気持ちは分からなくない。魔王領に人間族は、住んでいないに等しい。そんな中で人間が数人歩いていると非常に目立つからだ。
「エリアス、あのコップとか素敵じゃない?」
「本当だ!可愛いデザインだね」
出店の商品に目を向けながらエリアスとルティアは楽しそうだ。お金に関しては、魔王に言って換金してもらっている。
「じゃあ、買いに行くか」
「うん」
街中をブラブラと歩いて見て回っているが、魔族の国も人の国も変わらないように感じる。ただ、この頃は物騒なようで人々の様子にも不安の色が見えた。
「何度か魔王城も攻められてるのよね……こっちにも被害が出ないと良いけど」
敵の狙いがクシフォンである以上、戦場は魔王城になることは間違いない。穏やかに暮らしている魔族の人々に余計な被害が出るのは忍びない。
今回、レン達は気分転換で外出したのだが、クシフォンも外に出たがっていた。しかし、狙われている以上外出は禁止となった。
「さすがに外に出たりしないよな……」
「うーん、ちょっと心配になるね」
かつて、クシフォンが王都にやってきた時もフィーズとお忍びでの行動だ。命を狙う魔族がスティグマと結託していたためかなり危険だった。
「思えば、あの時からスティグマはクシフォンを生贄にするために魔族を利用していたのかしら?」
「全てはベルゼが力を得るため……そいつのために、多くの人を巻き込んで」
ルティアとミラが話す。
外にテーブルのある席に座ってレン達は昼食を食べることにした。
注文したものがやってきて食べていると、レンとミラの前にそれぞれ手紙が落ちてくる。
「これって、レン!」
「ああ、俺達をこの世界に飛ばしたアプリ会社からの手紙だ!」
どうしてこのタイミングで手紙なんかを送ってきたのか……向こうとしては、こちらが自由に生きていくことを望んでいたはずだ。
『レン・オリガミ様へ
異世界での生活いかがお過ごしでしょうか?現在、レン様がいらっしゃる世界は間もなく崩壊の危機が訪れます。利用者様を危険に晒さないように緊急脱出手段を用意しました。
元の世界に戻りたいと口に出して、強く願うことで元の世界に帰ることが可能になります。その代わり、この世界には2度と訪れることは出来ません。
ご自身のご判断にお任せします。どうか幸運があります様に
アプリ管理会社』
という内容だ。
エリアスとルティアは、日本語であるため読めないようだったがレンとミラで説明した。ミラの手紙に関しても同じ内容だったようだ。
「これから起きることが、相当に危ないってことだよな……」
「まさか、元の世界に帰る手段だなんて……」
レンとミラは難しい顔をする。
当然ながら不安な顔をするのはエリアスとルティアだ。
「まさか、2人とも帰るとか言わないわよね!」
「言うわけないだろ?大切な人を置いていくなんで、どんだけ最低なんだよ!俺は、絶対にやらない」
と言いながらアイテムボックスに手紙を入れておく。
「良かった、少し不安になっちゃった。でも、良くないことが起きそうで怖いね……」
エリアスの言葉に頷く。元々は、帰らせるつもりがない運営がそんな措置を取るのだ。帰った方がよかったと思うような絶望が待ち受けるのだろうか?
「大丈夫よ!レンもいるんだから!負けたりなんてしないわ」
「頑張ろう!」
と話すのだった。




