329話動揺と賢者の悩み
「なんかさ、師匠も集中出来てなくない?」
ミラの言葉にカラミィは、ビクンと震える。
「まさか、お前にそのようなことを見破られるとは思わなかったな……」
自分でも予想外だったのだろう、言葉には驚きが含まれていた。
「なんか落ち着かなそうだったからね〜?なんか悩み事?それなら、私が相談にのるよ!」
「そんなんじゃないさ」
「えー、好きな人が出来たとかじゃないの?師匠の好きな人知りたいなぁ〜」
両肩を掴んでミラがブンブンと振るう。体格的に、カラミィは小さい状態になっているので出来ることだ。
「好きな奴か、そいつはなぁ……もう死んでしまったよ。だいぶ前にな。それが今更ゾンビみたいに歩きやがって……」
とため息をつきながらカラミィが呟く。
「もしかして、マサトさんって人?下手したら戦うことになるよね」
「お前は勘がいいな、王都で実際に目にして思ったんだ。もう一度会ったら殺せるかって」
かつての大切な仲間、あの頃はとても楽しかったなぁと思いながら眼帯に触れる。そして、眼帯を外した。
「師匠……その目は……」
眼帯を外したカラミィの左目、それはとても無残な傷跡がついていた。見るのも耐え難くなるようなものだ。
「馬鹿が弁えずに無理をしただけだ、あいつがプレゼントでくれたものなんだ」
「私は、てっきり師匠のことを痛い人だと思っていたけど……なんかごめんなさい」
ミラが謝る。あれだけの傷で有れば隠したくもなることだろう。
「私の普段のふざけた態度をみたらそうも思うだろう?昔は、そんなに人と喋ったりする奴じゃなかったんだ」
「それって……」
ミラが聞こうとした時、カラミィは立ち上がる。
「さーて、修行の再開だ!ちゃんとやらないとレン達に付いていけなくなるからな」
と言われる。
「はい!師匠」
無事にイザコザが終わった後で、のんびりと師匠の話を聞けたらいいかとミラは思うのだった。
「マサト!死ぬな!ネーヴァン、傷を塞いで」
「無理だ……傷は塞げても血が足りない……」
大怪我をして地面に沈むマサトを見下ろしながらカラミィが叫び、ネーヴァンが首を振っていた。
「ごめん……なぁ、カラ、ミィ、左目の傷を治してやるって……約束したのに」
「目なんて良いんだよ!お前がくれた眼帯があるだろ」
最後まで申し訳なさそうな顔をしてマサトは逝ってしまった。
当然落ち込んだ。何日も部屋から出なかった。
どうにか立ち上がりマサトの分まで頑張ってみようと思い賢者と呼ばれるようにもなった。
そして最近になって知る。敵が、スティグマがマサトの死体を弄んだことを。
王都でも見たが、戦うことになれば自分はやれるだろうか……弟子に見破れるほど動揺しているとは師匠としても情けないものだと感じた。
「ミラにも教えられることは出来るだけ叩き込まないとな……」
ミラの自由さは、マサトを見ているかのような気分になった。良い弟子を持ったと思う。本人に言うことはないだろうが
これから起きる戦いで、自分はどうなってしまうだろうか?とカラミィは思いながらミラの修行に付き合うのだった。




