262話侵攻と無傷
フィレンが弓を構え、ハルカが狙撃銃を構える。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
放たれた矢と弾丸は、確実に魔物を貫いていく。やられた魔物は、落下しながらも灰となって消えていった。
「死体は、残らないのね」
とフィレンは呟きつつも手を止めない。
他の冒険者達は、魔法を空に放てる者以外は手持ち無沙汰な状態になっていた。
「放て!」
合図が出されて魔法使いが一斉に魔法を放ち、魔物を焼き払う。
「あれ、ディザスターよ!」
とレミが指を刺して声を上げる。
その方向からは、どす黒いスライムのような巨大な塊が向かってきていた。それは、フェレンスから離れた場所で止まってグニャグニャと形を変えていく。
「人型に……」
誰かが呟いた。
ディザスターは、髭の長い男の姿に変わった。高貴な衣装から、このような平原にいるのが似合わない様に感じる。
「フィレン、あの顔見たことがありますね」
「ええ、あれは帝国の皇帝でしょうね」
ハルカの質問にフィレンが答える。2人ともいつでも攻撃出来る様に構えている。
「皇帝って、なんでそんな人がディザスターなんかに?」
「状況が飲み込めませんね。憑依でもされたのでしょうか」
とナビゲーターは考え込む。
『我は、この世界においてディザスターと呼ばれるモノなり。この者も身体を貰った礼にまずは、王国を滅ぼすこととした。魔門を開けて一気に滅ぼしてはつまらん。ジックリ、じっくり苦しめてやろう』
と声を広げて宣言を行う。
「知性を持ったというわけね……それも、元が悪い人間の」
レミが苦い顔をする。レミとしても帝国の皇帝の性格は、良いと思えるものではなかった。
「目の前に出てきたのであれば、ここで倒すしかない。ナビゲーター殿!」
「ええ、行きますよ。ハルカ、エリアス!転移」
『ほう、我に挑ムか?』
「フェンリル!」
「ステータス外スキル、開放」
「風魔法!」
ナビゲーターが魔法を使用して、黒い煙を妨害する。
『小癪な!』
ディザスターがナビゲーターに向かって複数の触手を伸ばして攻撃を仕掛けた。
「出し惜しみは、出来ませんね!フリーズ!」
ナビゲーターの前で触手は動かなくなる。止まった触手は、すぐさまエリアスとハルカが切り裂いていく。
『なんだ、その技は!』
「よそ見ですか?ディザスター。はぁぁぁぁぁぁ!」
ナビゲーターのフリーズの効果に驚いているディザスターにハルカが迫り、連続攻撃を浴びせる。
「私もいきましょう……我が加護を持ってここに神なる獣の一撃を放て、フェリルの咆哮!」
エリアスが剣を振り下ろした瞬間に、ハルカは回避する。
『グオォォォォ!』
放たれた衝撃波を受け、声を上げてディザスターが後方に吹き飛ばされた。
「無傷……いえ、HPという概念すらあるのか怪しいものですね」
立ち上がるディザスターを見据えてハルカが口を開く。
「マスターも鑑定を行いましたが、何も見ることができませんでした」
『まさか、ここまで戦えるものがいたのだな……我にも準備が必要か』
ディザスターの言葉に従う様に魔物達が下がっていく。
『また会おう、戦士よ。次は、我が捕らえた戦士も連れてくるとしよう。死を覚悟するのだな』
と言い消えていった。
空の淀みも消えており、とりあえずの脅威は去ったと言えるだろう。
「もっと連れてくるなんて、防ぎ切れるかな……」
とエリアスはいうのだった。




