171話強者と簡単過ぎる偽名
「頑張りなさいよーー!レーーーン!」
戦う準備を始めようとしていると観客席からルティアの大声が聞こえる。良くここまでの声を出せるなと驚いている。
「ふふっ、仲良しね」
と正面では、対戦相手のレミーヤが微笑んでいた。優しさを感じさせる笑みにレンは、既視感を感じた。
『それでは、第3試合開始!』
コールがなされた直後、お互いすぐに動く。レンは手を前に突き出してすぐ魔法を発動する。
「ファイヤ!」
「ファイヤ!」
両者共に火魔法を放ち、ぶつけ合う。
『これは魔法の、互角のぶつけ合いだぁぁぁ!』
『出力から見てもレミーヤ選手もかなりの魔法の使い手ですね』
とハルカは冷静に分析している。
「あっついなぁ!」
目の前が見えないくらいの炎を出しながら呟く。相手は、かなりの魔法の使い手だ。
「錬金!」
と魔法が唱えられた瞬間に、レンのいる地面が盛り上がり空中に飛ばされる。
「凄い発動速度だ!……飛行」
重力魔法を発動し、空中に停止する。
「ファイヤスピアー!」
空中にいるレンにすぐに炎の矢が放たれる。休む暇は与えてくれないらしい。
『大量の魔法が空中のレン選手に放たれる!これを凌ぎ切れるかぁぁぁ?』
「これは、厄介な数だな!」
レンはアイテムボックスから剣を取り出し、水魔法を付与する。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
魔法を斬ろうとした瞬間に魔法が方向転換して背後に回ってくる。これは、魔法を止めるのが難しいと感じた。
「さて、どうするかな?」
レミーヤが呟く。
「凄い魔法のテクニック、こうなったら……フラッシュ!」
眩い光を放って周囲の目をくらます。
『眩しい!こ、これは目眩しでしょうか?直視したレミーヤ選手はきついかぁ?』
レンがレミーヤがいる場所に降り立つもすでにレミーヤは移動しており空中にいた。
「目眩しじゃ効かないか!」
とレンが言う。
「周りをよく見て、レン」
とレミーヤが言った時、レンは自らが魔法に囲まれていることに気づく。
『全方向からの魔法の攻撃!これは避けられないかぁ!』
レンがニヤッと笑った瞬間に全身を炎の矢が貫く。
『これは、勝負をあったようですね!いや、あれはなんダァ?』
実況は、レンの敗北かと思われたが直後にレンが水となって飛び散って炎の矢ごと消失する。
何があったんだ!と会場でも驚きの声が上がる。
「アクアドール……目眩しした後に入れ替わったんだね」
とレミーヤが端にいるレンに向かって言う。
「あんたならわかるか。それにしても凄いコントロールだな」
とレミーヤを評価する。ここまでの実力をつけるのにはかなりの時間がかかることだろう。
「かなり頑張ったもの」
世の中強い人は多いなと思う。敵になるのはアルファードだけだと思っていたがここまで厄介な相手がいるというのは予想外だった。
「レミーヤ・サティ……強力な相手だ。……ん?待てよ…」
と呟きつつ、レンは、まさかなと思う。
レミーヤ・サティ……
レミ・サトウ……
サトウレミ……佐藤令美?
まさかお母さんなのかと思った。迷宮都市で再会したレンの本当の母親……
「さあ、続けましょう!」
と言いレミーヤが杖を持ち出して構えている。
「なあ、お母さん。どうして王都にいるんだ?」
もし違ったら恥ずかしいがここは賭けに出る。自分の予想を信じての行動だ。
「それはねぇレン。お母さんは………しまった……」
とレミーヤが失敗したという表情をする。まさかのレンの予想が当たってしまう。
「まじか……本当にお母さんなのかよ」
レンは驚く。
「しまったわ。レンにバレちゃった……何がいけなかったのかしら」
と残念そうに言っている。
名前が安直すぎるんだよな……とレンは思わずにいられない。フィーズやクシフォンにダメダメだなと思った矢先、自分の母親がこんなことをしていると分かるとなかなかキツイものがある。
「どうして王都にいるんだ?それに武道大会に出て……教えてくれ!」
とレンが言った瞬間にレンの真横を魔法が通り過ぎる。なんとかギリギリで回避した。
「こうなったら……私を倒してから聞きなさーーーい!」
と言い大量の魔法を放ってくる。
『これはとんでとない量の魔法の乱れ打ちだぁぁぁ!』
会場もとても盛り上がっている。
「あぶなぁ!」
レンは魔法を回避しながら全力ダッシュでレミの方に走る。
「こうなったらヤケよ!」
もう回避すら出来ないであろう量の魔法が飛んでくる。
「錬金!」
舞台の地面の形状を操って魔法を凌ぐ壁を作り出して隠れる。
「長くはもたないなぁ……もうゴリ押しでいくしかないかぁ」
レンは、二刀流になりスキルを発動する。そして隠れている場所から飛び出した。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
すぐさまレミが魔法を一斉掃射してくるのを魔法を付与した2本の剣で斬りながら前進していくのだった。




