111話敵とペースアップ
レンの本当の母親……それの言葉を聞いた瞬間にみんなが驚き、動きが止まる。
「無理しなくて良いわ、レン。私達は、幼いあなたを置いて行ってしまったんだもの……親失格だわ」
異世界でこんなことが起きるとは思わなかった。母は、亡くなった時と変わらないように感じる。歳をとっていないかのような…
小学生辺りだっただろうか、レンの両親は交通事故で亡くなったのだ。大切な両親の死…幼かったレンは、涙が枯れるまで泣き続けた。
結局、レンは母親の妹が引き取り折神蓮となり、高校生まで育ててもらった。母さんのお陰でずっと傷を引きずることはなかった。
そして今、再び本当の母親に会うことになるのは予想外だ。いや、誰がこんなことを予想できただろうか。
レンはどう声をかければ良いのかわからない。エリアスもそんなレンを心配そうに見ている。
「……この世界に、転生したってことなのか?」
少し時間が空きようやくレンが話す。
「転生とまでは言えないけど、交通事故で死んだ後、魂だけを移動させて元の身体とほぼ同じ器に入れたみたい。私達に適性があるって神様が言ってたわ」
と母親が説明する。
「神様っているんだ……」
ミラは今度は神がいることに驚いている。レンとミラは神に会わずにこっちに来たので別の方法があるのだなと考えた。
「急なことばかりでごめんなさいね。お願いしたいことがあるの……この迷宮都市にはスティグマの息がかかった者がいます。それをどうにかするために力を貸してもらいたいの」
と言う。告げられるスティグマの存在、またあいつらか……とレンは思った。
「わかった、今は、母親とか息子とか言ってる場合じゃないよな……手伝うからもっと詳しいことを教えてくれないか?」
スティグマの存在となると話は別になってくる。
「ええ、今回は王都の様にスティグマの筆頭が直接出向くことはないと思うわ。あくまでスティグマの息がかかってる者達がいるのだから……」
「もう敵が誰か掴んでるのか?」
どんな情報収集をしているのかとも気になるが、敵を教えてもらうしかないだろう。
「ええ、敵の正体……私達が相手にするのは、クラン真紅の宝剣よ」
一同に驚きが走る。特にアイリの驚きようは凄い。フェレンスや王都での出来事も流れてきているため、スティグマの情報も知っているのだ。姉がそれに関わっている……驚かない方が難しい。
「そんな……お姉ちゃんが」
険しい表情だ。自分に何か出来たことがあったんじゃないかというような……
「都市トップの実力のクランだよな。この人数でどうにかなるもんなのか?」
人数が悪い気がする。クランとパーティでは、差は歴然だ。
「レンがいるから大丈夫よ!1人で壊滅させれるわ」
ルティアは、結構物騒だ。前もそんなことを言っていたが…
「結構大胆なお嬢さんね…」
光明の魔女も苦笑いだ。
「さすがにクランを相手にしろとは言わないわ。要は真紅の宝剣が50階層を攻略するまでに私達で先にクリアしてしまうと言うことよ」
と魔女は説明する。安全策ではあるが、自分達も攻略出来るか保証がない。
「そうだ…待ってくれ!なんで50階層なんだ?切りがいいのはわかるが、ただの攻略だろう?」
別にクリアされても大丈夫じゃないのかと思い口にする。
「多くの人が知ってるわけじゃないけど、迷宮の50階層のボス部屋には迷宮の支配者も現れるらしいわ。そして攻略した者にユニークスキルを授けるって」
「そんな、報酬が!じゃあスティグマの狙いはユニークスキル…」
ユニークスキルは、1個でも世界を揺るがしかねない。そんなものがスティグマに渡るのは避けたいものだ。
「じゃあ急いで50階層まで行かないと!でもその前に攻略されるんじゃない?」
「いいえ、エリアス。真紅の宝剣は、最初の攻略は失敗に終わるわ。私の勘を知ってるでしょ?」
魔女は、エリアスに言う。予知的なスキルだろうか…
「でも急ぐにこしたことはないよね。すぐに攻略法を見つけられると厄介だから…」
ミラも急ぐべきだと主張する。
「私も行きます!お姉ちゃんが悪いことをしようとするなら止めないと」
アイリも気持ちを固めたようだ。
「なら急がないとな……千里眼!……こっちか、俺についてきてくれ!」
出来るだけ、早く進めるプランを取ることにする。
ほぼ、魔物と遭遇せず近い道を選びながらあっさりと40階層につく。
「岩山……そして遺跡がある…」
歴史的な遺物とも取れる場所が広がっていた。
「神秘的な感じがするなぁ」
ミラが呟いている。
「魔物が来たよ」
エリアスが言いながら武器を構える。レンもすぐさま武器を構える。
相手は、ゴーレムのようだ。
「いきなさい!アクアドール」
ルティアがそれに対抗して水人形を使って攻撃する。そして水人形の勝利に終わった。
「キリがないから最低限倒しながら進もう」
とレンは一言言ってから走り出す。
「はぁはぁ、私…そんなに体力ないのよね〜」
と言いながらもミラはなんとか付いてきている。
「ルティアちゃん、さっきの魔法はまだ無駄があるわよ。MPの使い方をもう少し意識するだけでも無駄を省けるかも」
と魔女がルティアにアドバイスをしていた。
「なるほど…やってみますね。ありがとうございます、レンのお母さん」
後ろの方では会話が盛り上がっている気がする。
レンは、千里眼を使っているのであんまり気にしないことにした。
「見つけた。ボス部屋だ」
「ただでさえ、攻略ペースが早かったのに、ここまで来るともう……」
とアイリさんが呟いている。状況的に仕方ない。そんなことがなければ、レンも楽しみたかったのだ。
ボス部屋に入ると、中には2体のゴーレムが立っていた。大きさとしては、レンの倍以上あった。
「棍棒装備……はぁぁぁぁぁぁ!」
武器を装備してレンは魔物をあっさりと倒す。粉々になったゴーレムだったものが残っただけだった。
「半端ないな……」
ミラはレンの戦いぶりに感想を漏らす。
「さて、さっさと登り切るぞ!」
疲れた様子もなくレンは、みんなに告げるのだった。




