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アドミン魔法使い ~死んだはずの異世界に帰還した元令嬢。現代でプログラマになった私は魔法を修正して人生をやり直します~  作者: しんとうさとる
第3部 迷宮管理

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3-3 ユフィの魔道具




「んじゃさいなら~。二度とここには来ないでねー」


 エリーと二人でジャンパルドたちを馬車に詰め込んで、そのまま追い立てるようにして馬車を発車させた。

 多少は元気を取り戻したのか、あの成金ブタは馬車から「覚えておれよっ!」なーんてほざいてたけど残念。私は興味のないことは忘れるのも早いの。たぶん明日にはもうどうでもよくなって記憶の彼方に飛んでってるんじゃないかしら?


「ざまぁみろ、ではあるんスけど……大丈夫スかね?」


 エリーが馬車に中指立てながらも不安を口にした。何をそんなに心配してるの?


「いや、だって仮にもギルド長ッスよね? こんな扱いして、やっぱり嫌がらせされたりとか、素材を売ってもらえないとか圧力かけられるのも面白くないじゃないッスか」

「ああ、それならたぶん大丈夫よ」


 ジャンパルドが言ってたとおりならクレーム対応で当分は手一杯だろうし、損害も莫大でしょうしね。なのに私の技術提供に払うお金を拒むなんて、本当に目先のことしか考えられてないのよね。


「悪評が広まってしまえば損害も拡大し、収拾も困難になってしまいます」店から出てきたユフィが補足してくれた。「魔道具ギルド長の暴挙が可能なのも、莫大な資産と王侯貴族とのコネクションに依るところが大きいはずです。それが今回の件で両方とも毀損してしまいました。お嬢様の提案を断られたので、おそらくは自力でなんとかなさるおつもりかとは思いますが……」

「まずムリね」


 バッサリと切って捨てる。これまでに何人も有能な魔道具師を潰してるはずだから、そんな奴に協力しようなんて魔道具師はいないでしょうしね。むしろこれを機に、次々と見切りをつけて離れてくんじゃないかしら?


「ま、あのバカの事は放っておくとして……複製とはいえ契約書を破って捨てたんだし、これはもうこっちから契約破棄しても問題ないわよね、フリオ?」

「ええ、問題ないかと」


 私が声を掛けると、いつもと変わらない笑みをたたえたフリオが路地から姿を現した。あら、ずいぶんと嬉しそうね。


「それはもう! 私にとっても迷惑な人でしたからね」

「そうなの?」

「何軒、彼のせいで魔道具製作の依頼を断られたことか! こちらもようやく溜飲が下がりました」

「それもフリオがいろいろと駆け回ってくれたおかげよ」


 事前にくれたジャンパルドに関する情報提供に加え、契約に関してのレクチャーや商業ギルドへの確認と、裏でフリオも相当に働いてくれたのよね。


「ミレイユさんの策略のおかげで彼の権力も相当失われたでしょうし、感謝しかありませんよ。これでこちらも商売がだいぶやりやすくなります」


 無邪気に喜んでるように見えるけど、実はこうなるのを期待して私に与してくれてたんじゃないかしら。ひょっとしたら、私の魔道具が売れてるなんて情報をジャンパルドに漏らしたのもコイツかも。


「ん? どうしました?」


 見つめる私にフリオが笑顔を向けるけど、それがなんとも意味深に見えてくる。もしそうだとしたら抜け目無いわ。さすが生き馬の目を抜く商人ね。


「なんでもないわ。それで、今日はあのデブの面を拝みに来ただけかしら?」

「ああ、いえ。今日の主目的は別で、依頼してました魔道具製作の状況確認です」

「ならちょうど良かったわ。ユフィ、アレを持ってきてくれない?」


 みんなで店に戻り、ユフィが地下の工房から試作品の魔道具を持って上がってきたけど、渡そうとする彼女の手が震えてた。そうよね、初めて人に見てもらうんだし、緊張するわよね。でも大丈夫よ。自信を持って。

 果たして彼女から受け取ると、彼の口から思わずといった様子でため息が漏れた。


「――素晴らしいですね」


 いろんな角度からフリオが目を輝かせて眺める。彼の感想には私も全面的に同意だ。

 ユフィがデザインし、作成した意匠はとてもきめ細やかで美しいと心から思う。一見シンプルだけど、花を模した金色の飾りはきらびやかながらも可愛らしさもあって、中心にある紫の宝石も小さいながらもしっかりと存在を主張し、女心をくすぐってくる。

 どう? これなら文句は出ないでしょ?


「ええ、期待していた以上です。試しに使用してみても?」

「もちろん」


 フリオが裏のスイッチを入れると、一瞬だけ淡い光が包みこんですぐに消える。その彼に向かって氷の刃をぶつけてみると、不可視の壁が瞬いた。


「異なる素材を魔法で合成させてみたの。おかげで耐久と魔力伝導が格段に改善されたわ」

「効果時間はどれくらいになるでしょうか?」

「防御魔法の展開だけなら三時間、攻撃なら十五分くらいは防ぎ続けられるはずよ。さすがに上位魔法レベルになると防ぐのは難しいけど」

「十分すぎる性能です。さすがミレイユさんですね」

「ふふん、でしょ? だけど、これのウリはそれだけじゃなのよね」

「と言いますと……?」


 首をひねるフリオにヒントをあげる。


「花の真ん中に宝石があるでしょ? それ、なんだと思う?」

「紫色の宝石……なんでしょう、これは? アメシストにしては色が濃く、ヴァイオレットサファイアとも違って、もっと深みのある、吸い込まれそうな紫……まさか、魔力石ですか!? それを使っているということは……ひょっとして繰り返し使える、とか?」

「御名答。さすがね」


 魔力石を宝石代わりにすることでサイズに見合わない魔力を込めることができるしね。もちろん魔力石の魔力を魔法陣に供給する部分は私だけの技術。だから他所に仕事を取られる心配もない。

 なーんて偉そうに語ってるけど実はこれ、ユフィとエリーのアイデアなのよね。ユフィのイメージに合った宝石が魔力石で、エリーが「これに魔力込めたらどうなるんスか?」って漏らしたのがきっかけ。私には到底思いつきもしないアイデアだったわ。やっぱ頼りになる二人ね。まあ、加工してくれる宝石職人を探すのは大変だったけど。


「それで、どうかしら? フリオのお眼鏡に適ったかしら?」

「文句のつけようがない出来ですよ。ぜひ取り扱わせていただきます」


 フリオからの太鼓判をもらった途端、後ろでエリーとユフィから歓声が上がって抱き合った。あらユフィ、泣くのはまだよ。ちゃんと売れて評判になってからになさい。


「はい、そうですね……」にじんだ涙を拭ってユフィが頭を下げた。「フリオ様、どうぞよろしくお願いします」

「任せてください。この出来で売れなかったらそれこそ商売人としての資質が疑われてしまいますからね。全力でご貴族様たちに売り込んで朗報をお届けしますよ」

「だそうよ。フリオの才覚は確かだから、大船に乗ったつもりでいればいいわ」

「しかしユフィさんにもここまでの才能があったとは……正直驚いてます」


 フリオが褒め称えると、ユフィが恥ずかしそうに顔を伏せた。


「い、いえ、私はそんな……ただ好きなことを昔から細々と続けてきただけで……」

「なーに謙遜してんスか! 凄いことやってんスから、胸張れば良いんスよ!」

「エリーさんの言うとおりです。東の国の言葉で『好きこそものの上手なれ』という言葉があります。好きなことを諦めなかったからこそ、この作品が出来上がったんです」

「フリオ様……」

「だから誇ってください。でないと、このブローチも色褪せてしまいますよ?」

「そう、ですね」ユフィがフリオを見上げて微笑んだ。「これからも頑張って製作していきますので、どうぞご助力お願い致します」

「もちろんですとも」


 そう言ってユフィとフリオが微笑み合った。

 ……あらあら、これはひょっとして、ひょっとしちゃったりする?


「あ……こ、コホン」

「お、お嬢様……」


 私たちの生暖かい視線に気づいた二人が、そろって顔を真っ赤にしてそっぽ向いた。いいわねー、若いってのは。あ、こっちのおばさんたちの事は気にしないでー。


「貴方たちの方が年下じゃないですか……」

「むふふー、今だけは心がおばさんなのよ」


 体は若くても精神年齢はすでに三十オーバー。いやー、実に青春。善き哉善き哉。

 てな感じで相変わらず真っ赤な顔の二人を眺めてたんだけど、フリオがもう一度咳払いをしてカバンに手を突っ込んだ。


「魔道具の出来栄えに興奮して忘れてましたが、もう一つ用事があったんでした」

「私に?」

「どちらかといえば、ミレイユさんとエリーさんのお二人にですね」


 そう言いながらフリオが一通の封筒を差し出した。封にはギルドの印章が押されてて、正式なギルドからの手紙だと分かる。訝しげに眺めながら反対側にひっくり返すと――


「こちらに来る前、探索者ギルドに立ち寄った時にカタリナさん経由で預かりました。

 明日――探索者ギルドに来るように、とのことです」


 そこには「召喚状」という文字が大きく躍っていた。




お読み頂き、誠にありがとうございました!


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