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アドミン魔法使い ~死んだはずの異世界に帰還した元令嬢。現代でプログラマになった私は魔法を修正して人生をやり直します~  作者: しんとうさとる
第3部 迷宮管理

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3-1 異変の解析

第3部スタート




 客のいない店内でエリーが魔法を発動させる。表示された魔法構成のプログラムを前に、私は無言でキーボードを叩き続けた。


「…………」


 思考は沸騰直前。にじんだ汗が鼻先から垂れたところで私は強く実行キーを叩いた。

 文字が高速で流れていく。そして――無情に表示されるエラーの文字。


「くあああぁぁっっ!!」


 雄叫びを上げて力なく崩れ落ちると、カウンターと頭がこんにちはをした。


「えーっと……ダメだったってことッスか?」


 エリーの質問に、私はカウンターに頭を擦り付けるようにうなずいた。

 迷宮の異変から一週間。イゴールが撤退した後、私たちはすぐにギルドに報告した。

 カタリナさんやギルド長のハーマンも半信半疑ではあったものの、持ち帰ったあの蟹もどきの素材を見せるとすぐに状況を理解してくれて、即座に探索者たちに注意喚起をすると共に、特別パーティを結成して調査することも決まった。

 で、報告を終えた私たちは何してるかっていうと、迷宮内で見たあの文字化けの解析を進めてるわけで。


「やっぱりまだサンプルが少ないのかしら……?」


 頭を起こして、エラー画面を指先で突っつく。

 モザイク状になっていた壁の文字列。あれがプログラムの一部であることは間違いない。そして持ち帰った蟹もどきのサンプルを解析してみれば同じような文字化け文字列が表示された。

 ただしキチンと読み取れた部分もあって、その中には見覚えのある文字列。はて、どこで見たんだろうって記憶を探ってって思い当たったのがエリーの魔法だった。


「エリーの魔法は蟹たちに効いたんだし、ならエリーの魔法を解析すればモザイクの文字列も解き明かせるんじゃ、って期待してたけど……」


 まぁ今のところ結果はお察し。まだまだ時間は掛かりそうで心折れそう。


「でも読める文字は着実に増えてるッス。だから大丈夫ッス!」


 エリーの励ましにちょっと気持ちが前向きになる。ホントいい子だわ。ありがと。


「根を詰めてらっしゃるのも良いですが、お二人とも休憩はいかがでしょう?」


 そこに、キッチンからユフィがやってきた。私とエリーの前にコーヒーの入ったカップを並べてくれたので、ありがたく香りを楽しんで一口飲む。やっぱ疲れた時はコレよね。前は紅茶派だったけど、日本で暮らしてた間にすっかりコーヒー党に変わっちゃった。


「ミレイユさんの言う『ほころび』でしたっけ? アレを探しに迷宮に行ってサンプルを増やしてみるってのはどうッスか? 新しいヒントに繋がるかもしれないッスよ?」

「そうねぇ……」


 エリーの提案に少し考え込む。

 モザイクがかった迷宮の壁。私にしか見えないアレを「ほころび」と呼称してるんだけど、こうして文字化けの解析が進んで私の認識力が上がると、あっちの方も読める部分が増えてきた。でも同時に――「ほころび」を私でも変更できることに気づいてしまった。


【変更を実行しますか? ――Y/N】


 この間潜った時に見つけた「ほころび」。そこのプログラムを試しに少しいじった後に現れたメッセージ。興味本位で実行してみると、本当に形状が一部変わったのよね。


(今は一部を読めるだけだけど、もし全部を読めて改変できるようになれば――迷宮を支配するのと同義よね)


 「ほころび」で見えたのはたぶん、迷宮そのものを管理するプログラムの一部。コンソールで魔法を改変できる私の力は便利だけど、それが迷宮にまで及んでるってなると……過大だわ。むやみに奮うべきじゃない。自分の手を見れば、少し震えてた。


「あの、私にはよく分からないですが」ユフィが徐ろに口を開いた。「イゴール様とおっしゃいましたか、その方が魔道具を使うとモンスターが出たり、迷宮の形が変わったのですよね?」

「ええ、そうよ」

「以前に、エリーさんの時代では迷宮が崩壊したとお聞きしました。お話だけ聞いているとなんだかそれに通じるところがあるように思うのですが、考えすぎでしょうか?」


 ユフィの指摘にハッとした。エリーを見れば、私と同じような顔をしてる。

 どうして思い至らなかったんだろう。迷宮の形を変えられるってことは、迷宮そのものを崩壊させることだってできるはず。

 イゴールが使ったあの魔道具も、今はたぶんそこまで大規模な改変はできないんだろうけど、もし彼のいう「実験」が迷宮の改変に関するものなら、いずれそれも可能になるかもしれない。あるいは。


「その『実験』の途中で何か失敗して、迷宮の大崩壊やモンスターの大規模発生に繋がったって、なんてことだってあり得るかしら……?」

「だとすると……やっぱり私がミレイユさんのところにやってきたのも、この時代にたどり着いたのも、全部意味があったことだと思うんス」

「エリー」

「前はミレイユさんが死んじゃったんで誰もこのことに気づかず崩壊しちゃったッスけど、今はこうして気づけた。それだけでも十分すぎる成果ッスね」

「でも可能性に気づいただけよ。エリーの時代みたいに、崩壊を止められなかったら意味が無いわ」

「普段、気が向くままに魔道具と魔法の研究ばっかりしてるのに、変に責任感が強いんスよね、ミレイユさんは」


 いや、そんなこと無いわよ。ただ中途半端なのが嫌なの。首を突っ込んだんなら、最後まで付き合うべきってだけよ。

 そう言うと、エリーがポリポリと頭を掻いた。


「はぁ……別に一人で気負う必要もないんスよ? ギルドにも伝えたんですし、みんなができることをやっていけば、きっといい未来はつかめるッス。だからミレイユさんは今までどおり興味が赴くまま研究してくれれば十分ッスよ……なんか真面目にこういう話すると照れくさいッスね」


 エリーが「へへっ」と、はにかみながら鼻の下を擦った。ユフィも柔らかく微笑みながら私たちを見守ってくれてる。

 そう、そうかもしれないわね。今の私は単なる魔道具屋の店主なんだもの。もちろんやることはやるけど、彼女の言うとおり肩の力抜いてやってくくらいがいいわよね。


「お嬢様はお嬢様のやりたい様に為されば良ろしいかと。私もそう思います」

「ありがと、ユフィ。エリーも。おかげで気が楽になったわ」

「この程度でミレイユさんが元気になるんなら安いもんスよ」


 なら、私は私のペースでやりたいことをやっちゃいましょうか。

 大きく背伸びして気持ちを切り替えて、迷宮に使われてる魔法言語の解析を再開しようと蟹もどきの素材を手に取ったその時、石畳を軋ませる車輪の音が聞こえてきた。


「あ、ようやく来たのね」


 店の前で馬車が急停止したあの特徴的な金ピカ馬車を見間違えるはずもない。もうちょっと早くやってくると思ってたけど、意外と遅かったわね。

 ユフィをあの気持ち悪い視線にさらすのも嫌なので地下に下がらせるのとほぼ同時。


「このド腐れ女がぁっ! よくも出来損ないの設計書で我輩を謀ってくれたな!!」

 

 でっぷりとした腹で、金ピカのモノクルを着けた魔道具ギルド長のジャンパルドが、そう怒鳴りながら駆け込んできたのだった。





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