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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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389/2115

朝のひと時

「それじゃあご馳走様。明日はまた屋台で朝飯食ってそのまま俺達は出掛けるよ」

 ハスフェルがそう言って立ち上がる。

「料理の仕込みはよろしく!」

「弁当ありがとうな」

 ギイとオンハルトの爺さんも立ち上がってそれぞれの従魔を連れて部屋へ戻った。

 まあ、二人の従魔はハスフェルの部屋へ行くんだけどな。

「ああ、お疲れさん。それじゃあまた明日」

 手を振って出ていく三人を見送り、机の上に残っていた食器を片付ける。

 ニニとマックスは、もうベッドで寝る気満々で待機している。

 笑った俺は、ベッドに駆け寄り、革靴と靴下を脱いだ。

「綺麗にしま〜す!」

 跳ね飛んで来たアクアとアルファが同時にそう言って、靴と靴下を一瞬で飲み込み、すぐに吐き出してくれた。

 もうそれだけで、すっかり綺麗だ。

「ありがとうな、今日は料理の手伝いご苦労さん。また明日もよろしくな」

 手を伸ばしてスライム達を順番に撫でてやる。



「それじゃあ、今夜もよろしく!」

 そう言って、ニニとマックスの間に潜り込む。

 ニニのもふもふのお腹に乗りかかるようにして、足に座って横になる。

 マックスがもう少し寄って来て、俺を完全に間に挟んで落ち着いた。

 タロンが素早く俺の腕の中に潜り込み、タッチの差で負けたフランマが俺の顔の横に丸くなった。

 ふかふかの尻尾が俺の頬を撫でて、丸くなる体に沿って巻き込まれた。

 ソレイユとフォールはベリーとくっついたみたいだ。

「それじゃあ消しますね!」

 サクラの声が聞こえて、部屋に灯されていたランタンの明かりが一斉に消される。

「お休み。ああ、ニニ……お日様の匂いがするよ……」

 もふもふに顔を埋めながらそう呟く。

 笑ったニニが鳴らす喉の音を聞きながら、俺は気持ちよく眠りの国へ旅立って行ったのだった。




 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。

「うん、うん……おきる……」

 ニニの腹毛に潜り込みながら、生返事をした俺は、そのまま気持ち良く二度寝の海にダイブしたのだった



「相変わらず起きないねえ」

「起こして良いですか?」

「私達が起こせば、一発よ」

 耳元で聞こえる声に、不意に目を覚ました俺は、慌てて目を開いて勢い良く起き上がった。

「ああ、ご主人駄目です。私達が起こす前に、勝手に起きちゃ駄目だったら」

 ソレイユの声がして背中に飛び乗られる。笑った俺は上向きに転がって、腹に乗って来たソレイユとフォールを手を伸ばして撫でてやった。

「今日は自分で起きたもんなあ」

 笑ってそう言うと、二匹の顔を順番におにぎりにしていく。

 ご機嫌で喉を鳴らす二匹を、心ゆくまで揉みくちゃにしてから、俺はゆっくりと起き上がった。

「おはようございます。今日も良いお天気のようですね」

 ベリーの声が聞こえて、カーテンが開けられる。

 薄暗かった部屋に、一気に部屋が明るくなる。

「ふわあ……おはよう。じゃあ起きるか」

 大きな欠伸の後、挨拶をしてニニの腹から出てベッドから降り、眠い目を擦りながら水場に顔を洗いに行く。

 いつものように顔を洗った後、サクラに綺麗にして貰ってから、跳ね飛んで来たスライム達を順番に捕まえて下の水槽に放り込んでやる。

 ファルコとプティラも飛んで来て流れる水で水浴びをしているので、手ですくってバシャバシャ水をかけてやった。



 結局もう一度びしょ濡れになり、ちょうど水槽から出て来たアクアが一瞬で綺麗にしてくれた。

 そのまま身支度を整え、胸当てを装着しているところでハスフェルからの念話が届いた。


『おはよう、もう起きてるか?』

「ああ、今胸当て装着中。どうする、もう出るか?』

「じゃあ準備が出来たら廊下に出てくれ』

『了解』

 笑ったハスフェルの気配が消える。

「ベリー、果物はまだ大丈夫か?」

 庭で日向ぼっこしているベリーに声を掛けてやる。

「ええ、まだ出してもらった分が残ってますので、大丈夫ですよ」

「そっか、じゃあ俺は朝飯と買い出しに行ってくるから留守番よろしくな」

「はい、気を付けて」

「もう、騒動はごめんだよ」

 からかうようなベリーの言葉に、笑って肩を竦めた俺は、そのまま全員連れて出掛けることにした。当然、アクアゴールドは俺の鞄の中だ。



「おはようさん」

 待っていてくれた三人と合流して、まずは中央広場へ向かう。

「しかし、相変わらずドン引きされてるなあ」

 周りを見回した俺達は、顔を見合わせてため息を吐いた。



 俺達の周りの反応は、面白いくらいに皆同じだ。

 その一、俺達を見て走って逃げる。その二、逆に目を輝かせて覗き込んでくる(ただしこれは少数派)。その三、驚きのあまり固まったまま動かない。の三種類だ。

 まあ見事なくらいにこのどれかに当てはまる。

 苦笑いして、俺はニニの首に抱きついてやる。驚くようなどよめきが聞こえたが気にしない。

「こんなに可愛いのにな」

 笑って鼻先にキスをして、今度はマックスにも抱きついてやる。

 またしても起こるどよめき。

「もう勝手にしてくれ」

 小さく呟き、到着した中央広場で一旦解散する。俺達の周囲には、見事なまでに空間が開いています。

 それぞれ好きな物を買って来て、広場の端で立ったまま食べる。



 今朝は、パンを売っている屋台で、分厚いオムレツを丸ごと挟んだ卵サンドと、刻んだキャベツを大量に挟んだサンドイッチを買ってみた。それからマイカップにコーヒーを入れてもらう。

「へえ、刻んだキャベツがこんなに入ってるのは初めてだな。すっげえ分厚い。どれだけ入ってるんだよ」

 そのサンドイッチをよく見ると、刻んだキャベツはマヨネーズで和えてあるみたいだ。

「どれどれ。おお、チーズとベーコンの風味がしっかりあって案外美味しい」

 野菜も食ったほうがいいかと思って買ってみたんだが、思った以上に美味しい。

「キャベツとチーズとベーコンか。それから茹で卵の輪切り、彩りも綺麗だな」

 中身を考えながらもぐもぐ食べていると、シャムエル様が手を伸ばして俺の頬を叩いた。

「あ、はいはい、卵サンドだな」

 籠に入れてくれたタマゴサンドを切ってやろうとしたら、目を輝かせて今食べているキャベツサンドを指さしている。



「ひっとくっち! ひっとくっち! 食っべたっいよ〜〜!」

 これまた妙なリズムで踊り出したダンスは、なんと新作、一口食べたいダンス!



 吹き出した俺は、そのまま食べていたキャベツサンドを差し出してやった。

「はいどうぞ。これは切ったらバラバラに崩壊しそうだからさ、どうぞ好きなだけ食っていいぞ」

 丁度、今の断面は、真ん中近い部分でキャベツとチーズがたっぷり入った場所だ。

「ありがとう。買った時から気になってたんだ。それじゃあちょっともらうね!」

 そう言うと、顔面からキャベツサンドに突っ込み、まるでトウモロコシを一気食いする時みたいに、右から左にモシャモシャと食べ始めた。

 堪えきれずに吹き出した俺は、見事に全面1センチくらい減ったキャベツサンドを見た。

「うん、これは美味しいね。是非ともレシピを教えてもらって作ってください!」

 キャベツまみれになった顔を綺麗にしながらそんな事を言う。

「教えてくれるかなあ? まあ、これは美味しかったからあるだけ後で買って帰ろう」

 残りを食べながらそう呟いて、さっき買った屋台を振り返った。

 まだまだ大量に在庫はありそうだ。よし、後で交渉して大量購入だな。




「へえ、これを二切れ食べたら、お腹一杯になったぞ」

 キャベツサンドは、二つに切ったサンドイッチがそのままセットになっていたので、足りないだろうと思ってタマゴサンドを買ったのだが、意外な事に、これだけで腹がいっぱいになってしまった。

「じゃあタマゴサンドは昼用に置いておこう」

 とりあえず自分で収納しておき、少し離れた所でそれぞれ食べているハスフェルたちを振り返った。

 相変わらず、朝から肉とか肉とか肉とか食ってるし。



 俺も最後のコーヒーを飲み干して大きく伸びをした。

「さてと、それじゃお前達は、またハスフェル達と一緒にジェムモンスター狩りだな」

「はい、任せてください。沢山ジェムを集めて来ますからね」

 マックスの言葉に笑った俺は、腕を伸ばしてもふもふの首に横から抱きついた。

「ジェムは山程あるから、無茶はしなくていいからな」

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