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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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294/2115

朝のひと時とマッピングの開始

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


今年もあと僅かとなりました。

年末年始は色々と忙しいので、これを今年最後の更新にして、明日から少し更新をお休みさせて頂きます。

年明けの三日夜(四日早朝)より、更新を再開させて頂きますので、どうか、しばらくお待ち下さい。


それでは皆様、どうぞ良いお年を!

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

 カリカリカリ……。

 つんつんつん……。


 おう、目覚ましメンバーが増えてるよ……。

「うん、起きる……」

 寝ぼけながら返事をした俺は、寝返りを打って、胸元にあったモフモフに抱きついた。

「あれ? これは……ああ、フランマだな……」

 この大きさでニニの腹毛に匹敵するモフモフと言えば、フランマだよ。

 返事の代わりに、鼻先を舐められた。

「うん、起きるよ……」

 そう呟いたまま、気持ちよく二度寝の海にダイブしかけた時、いきなり首筋と耳の辺りをやられました!


 ザリザリザリ!

 ジョリジョリジョリ!


「うわあ、起きます起きます!」

 叫んで飛び上がると、従魔達の喜ぶ声が聞こえた。

「わーい、ご主人起きた」

「やっぱりモーニングコールは私達が最強よね!」

「ねー!」

 大喜びでそう言って笑っているソレイユとフォールを、二匹まとめて捕まえてやる。

「起こしてくれてありがとうな。だけどいつもながら、肉が持っていかれそうで心配になるぞ! ってな」

 そう言いながら、順番に顔を両手で握るおにぎりの刑にしてやると、二匹共ご機嫌で喉を鳴らしている。

「大丈夫だよ。ちゃんと加減してるもんね」

「人間の皮膚は柔らかいから注意が必要なんだよ」

「ねー!」

「ねー! じゃねえよ!」

 笑って順番にモフりまくってやる。



「さて、今日はどうなるやら。しかし、無事に夜明かし出来てほっとしたよ。本当にあれは驚いたもんなあ……」

 欠伸をしながら、近くの水場に顔を洗いに行こうとしてテントの垂れ幕を上げた瞬間、俺は固まった。

 テントから顔を出した俺のごく近く、多分30センチくらい先に、巨大な三本の角の先、視界一杯に広がるフリル。そして、俺を見つめる意外に小さな目。

「うわっ トリケラトプスじゃん……」



 思わず小さく呟いたが、それっきりどうすればいいのか分からない。

 俺のテントのすぐ横にいた、軽トラックくらいはある大きさのトリケラトプスと、垂れ幕を上げた瞬間に完全に正面から向き合ってしまったのだ。



 しかも今の俺、剣を持ってない!

 剣帯も付けてないから、実質丸腰。



「うわあ、油断しすぎだよ、俺……」

 今更後悔しても、時既に遅し。

 後ろで、ゆっくりとニニとマックスが動く気配がするが、俺は動けない。

 迂闊に動いて驚いたこいつが突進してきたら、間違いなくその瞬間に角に突かれて俺は死ぬ。

 両者無言の見つめ合い状態で硬直していると、頭の中で不意に声が聞こえた。


『ゆっくりそのまま後ろに下がれ。絶対に目は逸らすなよ』


 頼もしいハスフェルの声に小さく頷いた俺は、泣きそうになりつつも言われた通りに、トリケラトプスから目は逸らさずにゆっくりと後ろに下がる。


 一歩、二歩、三歩……。

 しかし、垂れ幕の端を持ったままなので、もうこれ以上下がれない。

『それを離せ!』

 いきなり強い口調でそう言われて、咄嗟に垂れ幕を掴んでいた手を離す。

 その瞬間、ニニがすっ飛んできて俺の襟を咥えて後ろに飛び下がった。引きずられて転ぶ俺の前で、マックスが庇うように立ち塞がる。

 シリウスの物凄い鳴き声と何かを叩くような大きな物音。そして地響き。



 外が静かになっても、俺は地面に引きずられた体勢のままで固まったまま、恐怖のあまり動く事が出来なかった。

「おい、大丈夫か? トリケラトプスは逃げて行ったぞ」

 笑ったハスフェルの声がして、テントの垂れ幕が巻き上げられる。

「大丈夫?」

「本当に何やってるのよ。ケンったら、この地下迷宮に嫌われてるんじゃなくて?」

「あはは、それは有り得るかも!」

 そう言って笑い転げるシルヴァとグレイだったが、口答えする元気も無いよ。

「あはは、助けてくれてありがとうございます。でも、とりあえず生きてるからさ、もうそれで全部良い事にするよ」

 大きなため息を吐いてそう言い、今度はちゃんと剣帯と剣を装着してから、顔を洗いに水場へ向かった。

 サクラがついてきて、洗い終わった顔も髭も全部綺麗にしてくれた。跳ね飛んできたアクアや他のスライム達も、順番に水浴びさせてやる。

「そう言えば、お前らって水中でも息が出来るのか?」

 水から出てきたサクラにサンドイッチ各種を取り出してもらいながら、足元に来たスライム達を見る。

「ご主人みたいな息はしてないよ。サクラ達は体全部で息もするしご飯も食べるの。水の中でもちょっとだけ息は出来るよ。だから長い間じゃ無かったら、水の中でも平気なんだよ」

 コーヒーのピッチャーを出してくれたサクラがそう言ってビヨンと伸びる。

「へえ、そうなんだ。じゃあ、俺があの水中に落ちた時に助けてくれただろう? おかげで息が出来たんだけど、あれはどうやったんだ?」

「えっとね、金色になってる時は、もっと長い時間水の中にいられるし、体の中に空気を作れるの。だから、水の中でもちょっとくらいならご主人を守れたんだよ」

「そうだったのか。すげえな、アクアゴールド」

 感心したように俺がそう呟くと、その瞬間に足元にいたスライム達が一瞬で合体してアクアゴールドになった。

 小さな羽付きスライムがパタパタと目の前に飛んで来る。

「ありがとうな。これからもよろしく!」

 両手でこれもにぎにぎと揉んでやり、プルンプルンの手触りを満喫してさせてもらったよ。



 席に着いて、それぞれ好きなサンドイッチを取り、マイカップにコーヒーを注ぐ。

 寝ている間に戻って来ていたベリーとフランマ、それから草食チームに果物の入った箱をまとめて出しておいてやる。

 マックス達は、まだ大丈夫らしい。

「いざとなったら、私が面倒見ますからご心配無く」

 ぶどうの房を持ったベリーにそう言われて、俺はちょっと気が遠くなったよ。

 うん、あいつら用のお弁当って……無理、ごめん、俺には無理だよ。肉食獣達のお食事って、つまりはスプラッタだもんな。

 って事で、それはベリーにお任せしておく。




「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜っじみ!」

 いつものように俺の手に尻尾を叩きつけながら、お皿を手にしたシャムエル様が机の上で踊っている。

 最後にピタリと決まったポーズを見て、ハスフェル達が笑ってる。

 ドヤ顔でポーズを決めたシャムエル様には、いつものタマゴサンドの真ん中部分を切ってやり、盃にコーヒーも入れてやる。

「はいどうぞ、いつものタマゴサンドとコーヒーな」

「わーい。いただきます!」

 嬉しそうにそう言って、出してやったタマゴサンドに齧り付く。それを見ながら、俺も大口を開けてタマゴサンドにかじり付いた。



「それじゃあ、食べたらもう出発か?」

 俺の言葉に、ハスフェル達が揃って頷く。

「ベリーに聞いたんだが、この上の階に幾つか恐竜達が集まっている水場があるらしいから、マッピングを兼ねて順番に回ろう。まあジェムも集まるし良いだろう?」

「そうだな。まあ俺は……草食恐竜だったら、ちょっとくらいは参加させてもらうよ。ここの地下迷宮の恐竜達は、俺にはちょっとなあ……正直言って荷が重いよ」

「確かに、ここの恐竜はケンにはちょっと難しいのが多いな。まあ、無理に戦えとは言わんが、大丈夫そうなのがいたらお前にも参加してもらうよ」

「そうだな。じゃあ、それ以外の時には、俺は料理でもして待ってる事にするよ」

 誤魔化すようにそう言って笑うと、シルヴァが笑顔で手を上げた。

「はい! ブラウンボアの薄切り肉で味噌味のスープを作ったでしょう。あれがもう一度食べたいです!」

「あ、良いわね。あれは美味しかったわよね。それなら私は、グラスランドチキンのレモンバター焼きが食べたいわ!」

 シルヴァの言葉に、グレイも嬉しそうに頷いている。

「牡丹鍋か。あれは確かに美味かったな」

「最後の、ご飯にスープをかけて食べるのが最高だった」

「あれは美味しかったよね」

 オンハルトの爺さんが腕を組んで頷く横で、エリゴールとレオも満面の笑みで頷いている。

「分かったよ、じゃあリクエストは牡丹鍋とグラスランドチキンのレモンバター焼だな。順番に作るよ」

 頭の中で材料の在庫を確認する。よし、材料はどれもふんだんに有るから、メニューを考えなくて済む分楽で良いよ。

「わーい、楽しみにしてます!」

 拍手するシルヴァとグレイに、ハスフェル達も拍手なんかして喜んでるよ。

 確かに、一度作ったものを美味しかったからまた食べたいと、リクエストしてもらえるのは純粋に嬉しいよ。

 これが地上だったらもっと無邪気に喜べるんだけどなあ。



 少し休憩してからテントを撤収した俺達は、グリーンスポットを後にした。

 また一列になって真ん中で守られながらも、俺は密かに、早く外に出たいとそればっかり考えていたのだった。

 だって、言われてみたら本当に、この地下迷宮に来てからろくな目にあってないもんな。

 そんな密かな俺の願いも虚しく、到着した百枚皿ではダンプカーサイズの巨大なトリケラトプスが闊歩していたのだった。




「あれは無理! 草食恐竜だけどあれは無理! 悪いけど絶対俺はパス!」

 ……叫んだ俺は、悪く無いよな?

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