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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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264/2115

久し振りの東アポンでの屋台

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ ……。

 カリカリカリ……。

「うん……起きるよ……」

 半分寝ぼけたままほぼ無意識で答える。

「ああ……喉乾いた……」



 ぺしぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみふみ ……。

 カリカリカリカリ……。

 先程よりも強い力でまた頬や額を叩かれて、目が開かない俺は唸り声を上げてニニの腹毛に潜り込もうとした。


 ザリザリザリザリ!

 ジョリジョリジョリジョリ!


 唐突に耳の後ろ辺りを舐められて、悲鳴を上げた俺は横に転がって逃げた。

「待った待った! 起きるって!」

 横に転がり落ちたらどうしようと慌てたが、幸いベッドの反対側は壁になっていた為、軽くぶつかっただけで止まった。

「おお、マックスはもう起きてるんだな……」

 天井を見上げたまま、ぼんやりと薄眼を開いてそう呟く。

「まだ起きないなら!」

 ソレイユとフォールが二匹揃って胸元に飛び込んで来て、俺の顎の下側部分を舐め始めた。

「痛い痛い! ギブギブ! 起きるから勘弁してくれって!」

 もう一度叫んで反対側に転がると、激突した先はもふもふのニニの腹毛だった。

「ああ、駄目だ……これが俺を駄目にするんだって……」

 そのまま潜り込もうとしたら、ものすごい勢いで頭を叩かれた。

「いい加減に起きなさい!」

 呆れたシャムエル様の声に、俺は笑って何とか起き上がった。

 そのままニニみたいに思いっきり伸びをして欠伸をすると、後ろで起き上がったニニも一緒になって伸びと欠伸をした。

「おお、すっげえ伸びっぷりだな。俺はさすがにそこまでは伸びないって」

 笑って首筋を撫でてやると、嬉しそうに目を細めて喉を鳴らした。



 ニニのもふもふの首筋の毛をかき回していると、脇の下からタロンとソレイユ、それからフォールが揃って頭を突っ込んで来て、自分も撫でろアピールをする。

「はいはい、毎朝起こしてくれて有難うな」

 順番におにぎりの刑にしてやり、当然のように隣に並んだ草食チームも順番に撫で回してやったよ。最後に、モモンガのアヴィをおにぎりにしてから、ベッドから立ち上がった。

 椅子の背に留まっているファルコとプティラも撫でてから、俺は水場へ向かった。


 思いっきり顔を洗い口をゆすぐ。

「ご主人、綺麗にするねー!」

 ニュルンと伸びたサクラがいつもように俺を綺麗にしてくれて、終わった時には、綺麗さっぱりだ。

「有難うな。じゃあ、水浴びタイムな」

 胸元に飛び込んでくる二匹を撫でてやり、そのまま水槽に放り込んでやる。

 水槽から流れ出る水の先では、飛んで来たファルコとプティラが嬉しそうに羽を広げて水浴びをしていた。

「皆綺麗好きだな」

 水槽に指を入れて、弾くようにして水滴を飛ばしてやると大喜びするもんだから、どんどん水遊びがエスカレートしてしまい、最後には両手で水をすくってザバザバかけて、せっかく綺麗にしてもらったのに全身びしょ濡れになってしまった。

 水槽から上がってきたサクラにもう一度綺麗にしてもらってから、部屋に戻る。

 マックスの首に抱きつき、むくむくを堪能してからいつもの防具一式を順番に身につけていった。



『おはよう、もう起きているか?』

 ハスフェルの念話が届いて、ちょうど着替えが終わった俺は、顔を上げた。

『ああ、おはよう。丁度準備が終わった所だよ。どうする? もう行くか?』

『早く行こうとシルヴァ達がうるさいんでな。屋台で何か食って、さっさと行くとしよう』

『了解。じゃあ出るよ』

 置いてあった鞄を持ち、サクラが飛び込んで来たので、口を開いて鞄の中に入っててもらう。屋台で何かあったら、ちょっとでも買っておかないとな。




「おはよう。良いお天気だから絶好の狩り日和よ」

 満面の笑みのシルヴァにそう言われて、もう俺は笑うしかなかったよ。

「無事に7色揃うように祈ってるよ」

 彼女達の両肩には、小さくなったスライム達が左右に二匹ずつドヤ顔で並んでいる。

 ふん。う、羨ましくなんて……無いんだからな!



 全員揃って外に出ると、何人かの冒険者が俺たちを見て驚いたように立ち止まる。

 しかしすぐに身構えるのをやめてくれる。

「へえ、ちゃんと覚えててくれたみたいだな」

 嬉しそうにそう呟く。なんとなく周りを見ていると、あちこちからハンプールの早駆け祭りの英雄、って言葉が聞こえてくる。

「なあ、まさかとは思うけど、ここでも早駆け祭りの賭け券って売ってたのか?」

「いやあ、さすがにここまでは来ないよ。第一ハンプールのギルドの管轄外だ」

 ハスフェルの笑う声に、俺は何度も頷く。

「だけどじゃあ、なんで早駆け祭りの話題がここで出るんだよ?」

「そりゃあ、行った奴らが大勢いるからに決まってるだろうが」

 無言になる俺に、ハスフェル達は大笑いしている。

 ごめん、早駆け祭り舐めてました。まさかそんなに人気の祭りだったとはね。



 到着した広場でも、そこへ行くまでの道路でも、やっぱり俺たちを見て驚く人はいるけれど、皆こう言うんだよ。ああ、早駆け祭りの英雄達だね。って。

 まあお陰で、以前初めてここへ来た時のような大注目も、俺達を見て走って逃げる人もいない。まあこれくらいは仕方がないなと思える程度だった。すげえぞ、早駆け祭り。



 俺は、以前も買ったお粥の店へ行き、今日のお粥を買ってきた。

 うん、今日は鳥のつくね団子入りだ。それから肉を一口サイズに切って串焼きにしてくれてあるのをひと串買って一緒に食べた。

 狩りに行くから、しっかり食べておかないとね。

 すっかり自分用の食器にした小さなお椀を抱えたシャムエル様が、俺の肩で飛び跳ねて自己主張をしている。

「あ、じ、み! あ、じ、み!」

「はいはい、どうぞ。ってか、思うんだけど、これってもう絶対味見ってレベルじゃねえだろう」

 マックスの腹に移ってきたので、差し出すお椀にスプーンで掬ってお粥を入れてやり、鳥のつくね団子も入れてやる。串焼きはいらないと言うので、これは俺用に置いておき、トッピングも適当によそって乗せてやった。

「わかってないなあ、横からちょっとだけ貰うのが嬉しいんだって。さあどうぞって、食べきれないくらいに山盛りに置かれたら、もういい。ってなるんだよね」

「あはは、何となくそれは分かる気がするな。でもまあ、その程度の量なら取られたところで全然問題ないって」


 俺達は、広場の端へ寄って、のんびりとそんな話をしながら朝食を終えた。ハスフェル達も適当にばらけて、それぞれ好きなものを食べている。

 うん、朝から元気だね、皆。

 ついでに、食後の散歩を兼ねて広場をぐるっと見て回り、パン屋の屋台を覗いて、タマゴサンドや分厚いハムサンドみたいなのをありったけ買い足しておいた。

 タマゴサンドは絶対品切れしちゃいけないメニューだからね。



 マックスの背に乗り、ゆっくりと道路を一列になって歩き、そのまま門から外へ出る。

 街道沿いに少し進んでから、俺達は街道を逸れて横の平原へ走り出た。

 そのまま東に向かって俺とハスフェル、それからギイの三人は、並ぶようにして一気に走り出した。

 背後を神様達の乗る馬が続く。


「あの双子の樹まで競争!」


 マックスの頭に座ったシャムエル様がいきなりそんな事を言い出したもんだから、俺達三人は歓声を上げて、遥か遠くに見える二本並んだ木に向かって一気に加速した。

 何故だか、街道から大歓声が沸き起こっていたんだけど、どうしたんだろうな?

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