新作エビフライだ〜〜〜!
「じゃあ、こっちの大きい方は、こんな感じに頭を落としてから殻を剥いでくれるか。その時に、この尻尾はそのまま残しておいてくれよな。それで、こっちの小さい方は、こんな感じに身の部分だけ殻を剥いで、頭と尻尾は残しておくんだ。でもって、こっちのさらに小さいのは、頭も尻尾も全部剥いちゃってくれて大丈夫です。それから、全部そうなんだけど、この背中部分を楊枝で突いてこんな感じの黒いのがあったら取って欲しいんだ。これは背ワタっていって美味しくないからね。たまに無いのもあるけど、それは気にしなくて良いからな。あ、それから外した頭はまた別の料理につかうから、頭だけは食べずに一旦集めておいてくれるか。殻と尻尾、それから取った背ワタは食べちゃってくれていいぞ。下ごしらえは以上! あとはよろしく!」
一応、洗いながら大きさ別に三つに分けた雑魚海老を前に、それぞれ実際にどうやるのかをスライム達に見せてやりながら、一通りの下拵えのやり方を説明する。
洗ってぬめりを取り、殻を剥いて背ワタを取るところまでやっておいて貰えば、エビフライだけじゃあなく他の色んな料理にも使えるからね。
「分かった〜〜〜じゃあ、こんな感じだね!」
近くで俺のする事を見ていたアクアが、にょろんと触手を伸ばしてまずは大きな雑魚海老を一匹飲み込む。
しばらくモゴモゴして吐き出した時には、尻尾だけがついたまさしくエビフライ用のむき海老が出来上がっていた。もちろん、背ワタ取りも完璧だ。
その後、中サイズのお頭付きエビフライ用と、色々使える丸ごと剥きエビ小さめサイズの下拵えのやり方もしっかり覚えてくれたところで、アクアが他の子達とくっついてやり方を教えていく。
「海老を出してくださ〜〜い!」
「下準備はお任せください!」
全員覚えたところで、張り切ったスライム達がそう言ってぴょんぴょんと飛び跳ね始めた。
洗って大きさの仕分けも当然全部やってくれるので、とりあえず今日買った雑魚海老の山を全部渡しておく。
最初の店だけでなく、途中の店でもいくつか買ったからね。
でも、確かによく見ると明らかに種類の違うっぽい海老もあるので、本当に小さめのはひとまとめ扱いなんだなあとちょっと感心していた俺だったよ。
「さて、じゃあまずはエビフライだな」
頼んでおいた下拵えが全部終わったところで、まずは尻尾付きの大きめサイズでエビフライを作る事にした。
これが終われば、お頭付きの豪華エビフライも作るよ。
ここでも一通りのやり方を説明して、あとはスライム達にお願いしておく。
揚げ物準備なら、もう完璧に手順を覚えていてくれているからね。
二つあるコンロに一番大きなフライパンを並べ、揚げ物の定番、菜種油にごま油を加えたのを入れて火にかけておく。
色々使ったけど、結局これが一番扱いやすいし美味しい気がするので、最近の揚げ物はほぼこれでやっているよ。
「よし、じゃあ揚げていくか」
衣をまとった尻尾付きの海老が量産されたところでちょうど油の温度もいい感じに温まったので、ゆっくりと油に入れて揚げていく。
「サクラ、タルタルソースってまだあったよな?」
「あるよ〜〜これだね」
大きなボウルにたっぷりと作ったタルタルソースを取り出してくれる。
「それだけあれば大丈夫だな。じゃあせっかくだし、他の魚も色々揚げておくか。マグロも唐揚げにすると意外に美味しいんだよな」
にんまりと笑った俺は、手持ちの白身の魚とマグロの赤みのところを取り出してもらい、白身魚はフライに、マグロの赤みは唐揚げの下準備をお願いしておいた。
「おお、良い感じに揚がったな。やっぱりここは味見をしないと」
綺麗な色に上がったエビフライを見て、もう俺はテンション爆上がりだよ。
「あ、じ、み! あ、じ、み! あ〜〜〜〜っじみ! ジャカジャカジャン!」
久々の正統派味見ダンスを踊るシャムエル様。当然、その横には当然カリディアも一緒に見事なシンクロダンスを披露している。
「あはは、久々味見ダンスだな。じゃあこれをどうぞ」
ちょっと衣が禿げてしまったエビフライが幾つかあったので、それを二つ取り分ける。
「はいどうぞ。熱いから気をつけてな」
丸ごと一つ、大きい方をシャムエル様に渡す。
「わあい、これが噂のエビフライだね。では、いっただっきま〜〜〜す!ま〜〜〜す!」
両手でエビフライを受け取ったシャムエル様は、嬉しそうにそう宣言すると頭からエビフライに突っ込んでいった。
「熱い! でも美味しい! へえ、海老がプリプリだね。豚カツや唐揚げとは全然違う。でも美味しい!」
「ふふふ。しかもこれをつけるとさらに美味しくなるんだぞ〜〜」
にんまりと笑った俺は、小皿にタルタルソースを取り分けてシャムエル様の目の前に置いてやる。
「ああ! それってお魚のフライや唐揚げにつけたやつだよね。ええ、エビフライにも使えるの?」
目を輝かせたシャムエル様は、食べかけていたエビフライを丸ごとタルタルソースに突っ込んだ。
「取り分けたやつはいいけど、こっちの方にそれはしないでくれよな」
タルタルソースの入った大きなボウルを慌てて下げる。
「そんな事しないから、ご安心を! へえ、本当だ。白いのをつけるとまた味が変わるね。うん、良い!」
ご機嫌な声でそう言われて、ちょっとドヤ顔になった俺だったよ。
そのあとはひたすらエビフライとお頭付きエビフライや各種揚げ物を揚げ続け、がっつり出来上がったところで一旦休憩。
それから、茹でたエビと生のままの海老を使った握り寿司と、尻尾を取ったエビフライを具材にしたレタスとタルタルソースがたっぷりのサラダ巻きも作っておく。
もちろん、見本を一つ作ればあとはスライム達にお任せだ。
それからせっかくなのでお寿司の在庫を確認して、減っている分も色々と追加で作っておいてもらった。
「じゃあ、この海老のお頭で味噌汁も作っておくか」
一番出汁の入った寸胴鍋を取り出してもらい、少し考えて一番小さな寸胴鍋で作っておく事にした。
俺は平気だし大好きだけど、海老のアラで作った味噌汁は見かけがちょっとアレだから、初心者さん達にはハードルが高いかもしれないからね。
「ううん、めっちゃ美味しい味噌汁になったぞ」
試しに作ってみた海老のお頭入り味噌汁は、予想以上に美味しくてまたしても俺のテンションは爆上がりだ。
「お頭はまだまだあるし、これ、やっぱり大きい方の寸胴鍋でも作っておこう。ハスフェル達は、美味しいと知れば平気で食べそうだ。いざとなったらお頭は取り出して、豆腐とワカメの味噌汁にしてやっても良いもんな」
にんまりと笑った俺は、一番大きな寸胴鍋を取り出して嬉々として追加の海老のお頭入り味噌汁を作り始めたのだった。




