朝の色々とぐだぐだな俺達
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、だから起きてるってば……」
従魔達総出のモーニングコールに半ば無意識でそう答えた俺は、何とか目を開いて見えた高い天井に密かに首を傾げた。
「天井が見覚えのない柄だぞ……何処だここ……?」
小さくそう呟いた時、誰かの笑う声が聞こえて慌てて飛び起きた。
「いたた……」
しかし、急に襲ってきた酷い頭痛に思わずそう呟いて頭を押さえる。
「サクラ美味い水出し、痛っ!」
目を閉じたままサクラに美味しい水を出してもらおうとしたら、いきなり誰かに頭を叩かれて更なる頭痛に襲われて両手で頭を押さえて仰向けにスライムベッドに倒れ込んだ。
「寝ぼけるのも大概にしろよ〜〜」
からかうようなハスフェルの言葉に、本気で驚く。
「え? どうしてハスフェルが俺の部屋にいるんだよ……あれ? 違うな……」
しばし無言で考えて、天井を見上げる。
「そうか。この天井はリビングの天井だな。って事は……また飲みすぎてリビングで撃沈かよ」
大きなため息と共にそう呟くと、また笑い声が聞こえた。
要するに、さっきのハスフェルは、寝ぼけた俺がサクラに美味しい水を出してくれと頼みそうになったのに気付いて咄嗟に誤魔化してくれたわけだ。
そうだよな。スライムが収納を持っているとか有り得ないって言っていたから、例え仲間であっても見せないほうがいい事だってあるもんな。
若干の後ろめたさを覚えつつ頭の中でそう納得したところで、現状を考えて小さく吹き出す。
「なあ、もしかして全員いるのか?」
視界の隅にハスフェル達が見えたのでそう尋ねると、こっちを向いたハスフェルとギイが揃って笑いながら何度も頷いてくれた。
「おう、全員揃ってリビングで寝落ちだよ。ちなみにもう昼前だ。リナさんとレニスさんは身支度のために一旦部屋に戻ってるけど、それ以外はもう全員起きてるぞ。お前が最後だよ」
完全に笑っているギイの言葉に、もう俺も笑うしかない。
「あはは、そりゃあ大変だ。じゃあ俺も起きるよ」
なんとかそう答えて、スライムベッドに手をついて起き上がった。
「ご主人、どうぞ〜〜」
アクアの声が聞こえて、スルスルとスライムベッドの形が動いて俺が立ち上がるのを助けてくれる。
「おう、ありがとうな。じゃあ顔洗ってくるよ」
立ち上がったところで一つ深呼吸をして思いっきり伸びをした俺は、分解したスライム達を引き連れてリビングに備え付けの水場へ向かった。
冷たい水で顔を洗い、ついでにうがいもしてからサクラに綺麗にしてもらった。
それからもう一回、元の水量に戻った美味しい水を飲んでおけば、ほぼ二日酔いは回復したみたいでようやく視界がクリアーになった。
「お待たせ〜〜〜ええと、二日酔いメニューの方がいい? それともいつものメニューでいいか?」
おかゆの在庫がかなり減っていたのを思い出しつつそう尋ねると、約半数が二日酔いメニュー希望で、後は大丈夫だと言って笑っていた。
ちなみに、二日酔いメニュー希望はランドルさんとアルクスさんとボルヴィスさん。マールとリンピオにムジカ君とシェルタン君の新人達。
いつもと同じメニュー希望が、ハスフェルとギイとオンハルトの爺さん、それからアルデアさんと草原エルフ三兄弟だ。女性陣は、まだ戻ってきていないので分からない。
とりあえず、いつものメニューを適当に出しておき、在庫のあったお粥を土鍋ごと取り出して並べた。まあ、女性陣がどちらを食べても大丈夫なように、一応多めに取り出しておく。
うん、この辺りも作り置きしておかないとな。二日酔いメニューはいつ必要になるか分からないので、在庫は切らさないようにしないと。
今日はギルドから戻ってきたら料理をしよう。
ぼんやりとそんな事を考えつつ、しっかりたまご粥を確保した俺だったよ。
「はあ、いつもながら飲んだ翌朝に当たり前のようにこれを出してくれるケンさんの有り難さ……」
「確かにこれは嬉しいな。そうか、普通の料理だけでなく、こういう料理こそ自分で持っておくべきだな」
「確かにそうだな。よし、街へ行ったら色々とまた買い込んでおくか」
しみじみとしたランドルさんの呟きに、全力で同意するかのように大きく頷きながらそんな事を大真面目な顔で呟いているアルクスさんとボルヴィスさん。
その隣では新人さん達も揃ってうんうんと頷いている。
ちなみに身支度を整えて戻ってきたレニスさんとリナさんは、どちらも普通にいつものメニューを食べている。
もうすでに、酒の弱さで言えばまた俺が最弱になっている気がするぞ。
新人コンビやレニスさんも昨夜はかなり飲んでいたと思うんだけどなあ……。
結局、朝昼兼用の食事を食べ終えた俺達が街へ向かったのは、それからかなりの時間が経ってからの事だった。
リナさん一家やハスフェル達も、平気そうにはしていたけど結構酔いが残っていたみたいで、皆ぐだぐだだったんだよ。
でもまあ、そんな日もあるよな。
冒険者ギルドへ向かいながらどんよりと曇った空を見上げて、マックスの背の上で大きく欠伸をしてシャムエル様に呆れられたのだった。
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となります「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!




