釣果の確認と夕食準備
「よし、二匹目きた!」
またしてもかなりの強い引きに頑張っていた俺は、釣り上げたこれまたかなりの大きさのナマズを見てガッツポーズを取ったのだった。
こっそり合間に観察していると向こうの湖側でもかなりの釣果があるみたいなんだけど、釣れているのはやや小ぶりの魚が多いみたいだ。
こっちは逆に個体数は少ないんだけど、一匹のデカさが半端ない。
俺が最初の一匹を釣り上げた直後にギイの竿にも当たりがあり、こちらは余裕で俺の身長くらいはありそうなデカいナマズが釣れたんだよ。
ギイによると、2メートル弱くらいがナマズとしてはほぼ最大クラスらしいので、このギイの釣り上げたのがほぼ最大クラスって事だ。
よし、負けないように俺も頑張ろう。
笑顔でサムズアップを交わした俺とギイはその後も川での釣りを続け、昼を過ぎた時点で交代で休憩を取り、それでも竿を離さない皆を見て笑った俺は、釣りをしながらでも片手で食べられるサンドイッチやおにぎりメインのメニューを色々と用意してやり、スライム達にそれぞれの場所まで運んでもらったよ。
そんな感じで釣りをしながらの昼食を終え、日が傾き始めるまで一日中釣りを楽しんだのだった。
そして相談の結果、もう一泊する事にして湖のほとりにテントを張った。
ここでそれぞれのチームの今日の釣果を確認したんだけど、湖側で釣れた魚を見て、またしても大爆笑した俺だったよ。
だって、どれもそれほどの大きさではなかったけど、昨日と同じトラウト以外に、何と、どう見ても桜鯛に黒鯛にヒラメ、鰹にマグロ、ハマチや大きなブリっぽいのまでいたんだから、これが笑わずにおられようか。よし、これで握り寿司のメニューが増えたし海鮮丼だって出来るぞ!
それにしても、まさかの淡水の湖にいた海の魚。
ここでもシャムエル様の大雑把ぶりが展開されていて、並んだ魚を前に腹が痛くなるまで笑い転げる俺を見て、アーケル君達は不思議そうに首を傾げていたのだった。
結局、釣り対決二回戦はまたしても俺達の勝利で終わり、連敗チームの懇願の結果、明日もここでもう一回釣り対決をする事になったのだった。
俺的には、魚の在庫が増えるのは大歓迎なので喜んで参加するよ。
ちなみに確認したところ、川側のもう少し下流の辺りではかなりの大きさの手長海老がいるらしく、ギイが出してくれたフォークみたいな川海老専用の道具を手に草原エルフ三兄弟と新人コンビとレニスさん、それからマールとリンピオが嬉々として川へ向かっていった。
よし、これも間に合えば刺身にするから、頑張ってたくさん集めてきてください!
川へ向かった面々を見送り、俺は早速寿司の準備を始めた。
少し考えていきなり生魚だけを食べる刺身ではなく、酢飯と合わせた握り寿司、それからいろんな具材を巻いた巻き寿司を作ってみる事にした。
それで大丈夫そうなら刺身や海鮮丼なんかを作ってみようと思う。
出来れば皆にも魚を好きになってもらいたいからね。
まあ、握り寿司と巻き寿司の両方を準備するのはちょっと手間ではあるけど、俺には超優秀なスライムアシスタント達がいるんだから大丈夫だよ。
まずは大きめの片手鍋に酢飯を作るためのお酢を作り始めた。
これは火を使うから、俺がやらないと駄目な部分だよ。
定食屋で作っていた配合を思い出しつつ、米酢と砂糖と塩を計量カップにしているコップで計りながら鍋に入れて火にかける。
その間にスライム達には、一番大きなボウルに炊き立てのご飯をたっぷりと入れて用意しておいてもらう。
炊き立てのご飯の在庫はまだまだあるから安心だよ。
俺好みにしっかりとお酢を効かせて作ったすし酢を熱々のご飯に回しかけて、スライム達に混ぜてもらう。
ここは絶対にご飯を潰さない、しゃもじがわりに使っている木ベラで切るように混ぜるのだと力説したら、ちゃんとその通りにしてくれている。相変わらず、スライム達が優秀過ぎだって。
酢飯が大量に出来上がったら、今日の魚を捌いていくよ。
この時の何が有り難いって、一番面倒な魚の鱗取りを俺がしなくていい事だよ。
昨日、トラウトを捌く時に口で一通りの説明をしてから少しだけ実際に剥がして見せただけで、完璧な鱗取りをしてくれたんだからさ。
当然、今日釣った魚がまな板に乗せられた時点で、すでに鱗は完璧なまでに全て取られている。
それを見て笑った俺は、早速スライム達に説明しつつまずは桜鯛を三枚に下ろしていった。
ううん、よく切れるナイフで捌くと簡単に三枚おろしが出来るよ。
もう生食OKが出たので、真ん中の骨の部分も大きめのスプーンで少しだけこそげて見せたら、あとは全部スライム達がやってくれた。
昨日残してあったトラウトの骨の部分についた中落ちも、全部取っておいてもらう。
これは軍艦巻き用だ。あ、手巻きっぽいのも作っても良いかも。
大きめのマグロやハマチ、ブリなんかはさすがに手こずったけどなんとか上手く捌けた。
まあ、少々身が荒れたのはご愛嬌だ。
ヒラメの縁側も綺麗に捌いて寿司ネタに、骨は別に取っておいてもらう。これは、後で焼いて熱々の吟醸酒と合わせる分だよ。
タイの頭やアラの部分は、出来れば赤味噌であら汁にしたいんだけど、さすがにこれは魚初心者にはビジュアル的に駄目そうなので、今回は諦めてスライム達に進呈したよ。
まあ、後日俺用にちょとだけ別にあら汁を作るのはありかもしれないけどさ。
スライム達に手伝ってもらって一通りの魚の仕込みが終わったところで、まずは巻き寿司を作る。
生魚以外に、サラダ巻き用にツナマヨ、レタス、甘めに焼いた卵焼き、トンカツ巻き用には岩豚トンカツとハイランドチキンカツも準備しておく。
あ、俺が食べたいから、キュウリを巻いただけのカッパ巻きも少しだけ作っておこう。
それから、以前セレブ買いで手に入れたわさびもおろしておく。
このわさび、あんまり辛くないんだけどやっぱり寿司にわさびは必要だからね。
嬉々として寿司の準備をする俺を、お酒の準備だけして座っていたハスフェル達とシャムエル様、それからランドルさん達までもが、そりゃあもう揃ってキラッキラの目で見つめていたのだった。
あれ? もしかして魚の生食への抵抗感って皆無だったりする?
一応気を遣ってまずはご飯と合わせるお寿司にしたけど、刺身祭りでも大丈夫だったかも。




