イチゴ狩りとのんびりな休日
「ううん、どのイチゴも最高に美味しいです!」
「こんな鈴なりのイチゴを見たのは、私、ここが初めてだわ」
「俺なんて、鈴なりのイチゴを見たのもそうだし、そもそもイチゴ狩り自体が初体験でした! ケンさん、本当にありがとうございます!」
ムジカ君とレニスさんと頷き合った満面の笑みのシェルタン君の言葉に、俺も笑って首を振る。
「楽しんでくれて嬉しいよ。まだまだたくさんあるから遠慮なく食べてくれていいぞ。だけどお腹と相談してくれよな。食いすぎて腹が痛くなっても知らないからな〜」
わざと軽い口調でそう言ってやると、三人は揃って吹き出してもう一回お礼を言ってから嬉々として次のイチゴを掴んで引っ張って食べ始めた。
「この、白いイチゴが激うま過ぎるよ。はあ、幸せだなあ」
目の前に鈴なりになった白いイチゴをせっせと食べながら、俺は感動に身を震わせていた。
「はい! 次はこのイチゴをください!」
満面の笑みのシャムエル様の言葉に俺も笑って頷き、言われた大粒の真っ白なイチゴをちぎって渡してやる。
最初のうちは、楽しそうにカリディアと二人がかりでイチゴを引っ張ってちぎっては食べていたシャムエル様なんだけど、どうやら自分でするより俺に頼んだ方が早いと気づいたらしく、途中からは欲しいイチゴの横に立って自己主張をするようになったんだよ。
カリディアはそれを見て笑って一礼してから、ベリー達のところへ戻って行った。
見ていると、ベリーの揺らぎの横にはフランマの揺らぎも見えているので、ベリーがイチゴをちぎってフランマとカリディアにもあげているみたいだ。
うん、いいから好きなだけ食べてくれたまえ。
温室いっぱいにぎっしり並んだイチゴポットには、本当にまだまだ鈴なりのイチゴがあって、これだけの大人数で食べてもまだまだ余裕であるよ。
この世界のイチゴは、もしかしたら俺の元いた世界のイチゴよりも一株辺りに実る果実の数も多いのかもしれない。
そんな事を考えながらまた別のイチゴポットに移動して、また種類の違うややピンク色のイチゴをせっせとちぎっては口に入れた俺だったよ。
「はあ、もうお腹いっぱいだ」
満足するまでイチゴ狩りを楽しんだ俺は、今は自分の椅子を取り出して座り一休み中だ。
ハスフェル達も同じように椅子を出して座って寛いでいるが、新人コンビとレニスさん、それからアーケル君達草原エルフ三兄弟は、まだまだイチゴ狩りの真っ最中だ。
ランドルさんやボルヴィスさん、アルクスさんやマールとリンピオは、もう時々食べている程度でイチゴ狩りはほぼ終わっているんだけど、楽しそうに話をしながら温室の中を歩き回り、イチゴポットを見てはどれが美味しかったかの感想を言って笑い合っている。
そして俺はまだまだイチゴ狩りを楽しんでいるシャムエル様に言われるがまま、イチゴを収穫する役を果たしていたのだった。
結局、夕方近くまでのんびりと温室でイチゴ狩りを楽しみ、まだまだ土砂降りの空を眺めながらまたスライムトンネルの中を潜って別荘へ戻った俺達は、さすがに腹一杯だったのでそのまましばらくリビングで好きに寛ぎ、その日の夕食は手持ちの作り置きで簡単に済ませたのだった。
まあ、もちろん簡単とは言ってもいつも通りの豪華な夕食だったんだけどね。
雨は一晩中降り続き、翌日もやや小降りにはなったものの降り止む事はなく、結局、ほぼ五日間雨は一度も止む事なく降り続いたのだった。
従魔達もお天気が悪いと外に出たいとも言わないので、ずっとリビングでもふ塊になったままごろごろと寝ている。
まあ、無理に雨の中を出ていくほどの用事も無いので、俺達も思わぬ休暇をのんびりと楽しんだのだった。
その間何をしていたかと言うと、朝はのんびりと寝坊して朝昼兼用の食事に始まり、ハスフェル達がまた色々と手持ちのゲームを出してくれたのですごろくゲームで遊んだり、カードゲームで盛り上がったり、たまには訓練用の部屋に行って手合わせをして体を動かしたり、合間にまだまだあるイチゴ狩りも楽しんだりして過ごした。
そしてイチゴを食べ飽きるという、ある意味人生初の贅沢な経験をした俺だったよ。
六日目にしてやっと雨が上がったんだけどその次の日にはまた雨が降り、結局俺達が出かけられるようになったのは雨が降り始めてから二週間後の事だったよ。
まあ、思わぬお休みで心身ともにゆっくり休ませてもらったので、俺達も従魔達も元気いっぱいだよ。
「やっと晴れましたね! じゃあ、出かけましょう!」
ようやく晴れた青空を見て嬉々としたアーケル君の掛け声に、全員揃って歓声を上げた俺達だったよ。
さて、まずはどこへ行こうかね?




