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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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127/2115

今日は出かけるぞ!

 ぺしぺしぺし……。

 ふみふみふみ……。

「うん……起きる、よ……」

 カリカリカリ……。

「うん、待って……起きる、から……」

 気持ちよく、二度寝の誘惑に負けそうになった時、俺の頬を揉んでいたタロンの肉球の上に爪が出るのが分かり、俺の反対側の頬を引っ掻いていたプティラの爪も、静かに力が入ったのが分かった。

「ごめん! 起きるからその物騒な爪を引っ込めてくれって!」

 目を開いた俺は、両手を上げて降参のポーズでそう叫んだ。

「ご主人起きたね。お腹すいたよ」

 俺の右頬をタロンが担当して、プティラが左頬を担当、シャムエル様は額をちっこい手で叩いていた。

 おう、顔面総攻撃体制じゃんか。うん、どこにも勝てる要素が見つからないぞ。

 二匹とシャムエル様が下がってくれたので、俺は腹筋だけで起き上がった。


「おはよう。今日も良い天気だよ」

 ベッドから起き上がって伸びをしている俺の右肩に現れたシャムエル様が、嬉しそうにそう教えてくれた。

「おはよう。それじゃあ今日は、朝飯食ったらそのまま出掛けるか。ごめんな、昨日はお前らに順番に狩りに行ってもらうつもりだったのにな。何だか大騒ぎで結局行き損なっちまったもんな」

 顔を寄せてきたマックスの大きな頭に抱きついて、鼻先にキスをしてやり俺は謝った。

「大丈夫ですよ。本当にお腹が空いたら、黙ってないで文句を言いますよ。まあ今日は余裕があれば道中に交代で狩りに行かせてもらいます」

「ああ、じゃあお前が出かけている時は、俺は頑張って歩くよ」

「私に乗ってくれて良いのに」

 残念そうなニニの言葉に、俺は今度はニニの大きな顔を抱きしめた。

「いや、だってニニの背中は滑って危ないんだよ。まあもしも、人の足で危険な場所があれば、その時は乗せてもらうよ。たまには俺も歩かないとな。乗せてもらってばかりだと、足腰が弱りそうだからな」

「まあそういう事なら頑張って歩いてね。いつでも乗せてあげるからね」

「ありがとう。ニニは優しいな」

 手を離して、ニニの額にもキスを贈った。

 それから、足元に擦り寄ってきたタロンを撫でてやり、サクラに頼んでタロン用の鶏肉を出してやった。

 ベリーは、庭に出て日光浴の真っ最中みたいだ。声を掛けて、果物を適当に出しておいてやる。

 椅子の背に大人しく並んで留まっているファルコとプティラも撫でてやり、まずは水場で顔を洗う。

 後をついて来たサクラに濡れた顔を綺麗にしてもらい、ついでに体もヒゲもスッキリ綺麗にしてもらう。

 部屋に戻って、脱いでいた防具を順番に身につけていく。ここまでがいつもの朝のルーティーンだ。


『おはよう、もう起きてるか?』

 その時、不意に頭の中にハスフェルの声が響いて俺は文字通り飛び上がった。

『ああ、驚いた。お、おはよう。うん、もう起きてるよ』

 念話での会話はまだ慣れない。

『それじゃあ飯を食いに行こう』

「うん、じゃあ出るよ。って言ったら駄目なんだよな」

 つい口に出してしまい慌てると、頭の中でハスフェルの吹き出す様な咳払いが聞こえた。

『まあ、これも慣れだよ。頑張れ』

 笑った声でそう言って、一方的に切れてしまった。


 昨夜は驚き過ぎであんまり分からなかったが、今分かった。

 此処にいない誰かと念話で話していると、明らかにその誰かと繋がってる、って感じが分かる。今の様に繋がりが切れた事もよく分かるのだ。

「これってイメージとしては、そのまんま携帯だよな。脳内で携帯で会話する感じでやれば良いのかな? 今度やってみよう」

 そう呟いて、俺はまた全員揃って廊下へ出た。


 丁度ハスフェルもクーヘン達を連れて出てきた所だったので、そのまま廊下で合流して一緒に中央広場へ向かった。



 俺はいつもの朝粥だ。今日のは鶏肉の団子が入っていた。うん、これはまた後で空いてる鍋に入れてもらおう。

 ハスフェルは分厚い肉と卵を挟んだバーガーを食べている。なにそれ美味そうじゃん。よし、後で店を教えてもらって、外ですぐに食べられるメニュー用に追加で買い込んでおこう。

 クーヘンはハムとタマゴサンドと一緒に肉と野菜の串焼きを買ってきていた。


 しかしお前ら本当によく食うよな。俺は朝からその量は無理だよ。


 食べ終わった粥のお椀を返しに行き、またあのおばさんに鍋一杯分を入れてもらった。

 よしよし、食料在庫が充実してきたぞ。

 食後のコーヒーを入れてもらって、飲みながらのんびりと歩いて城門へ向かう。

 相変わらず、周りからはどこに行っても大注目だが、だんだんこっちが注目される事に慣れてきたよ。

 外に出た後は、少しだけ街道を進み、すぐに街道から外れて走り出した。

 先頭を行くシリウスの後をマックスとニニが並んで走り、その後ろをクーヘンの乗ったチョコがこれも全く遅れずにピタリとついて来る。

 そのままの隊形で、俺達は草原を駆け抜けて行った。



「昨日も思ったけど、イグアノドンってマックス達に負けず劣らず良く走るんだな」

「ああ。イグアノドンは走るぞ。短距離の速さではシリウス達が勝つだろうが、長距離を延々と走るのなら、恐らくイグアノドンは騎獣としては最強の部類だと思うぞ。こいつら恐竜の持久力は相当だからな。チョコは長距離が得意なんだよ」

「凄えな、イグアノドン」

 思わず感心してそう言うと、チョコは嬉しそうに少し低めの声の馬みたいに鳴いた。

「へえ、イグアノドンってそんな鳴き方するんだ」

「ええ、私も初めて聞きました」

 クーヘンも嬉しそうにそう言って笑っている。


 しばらく走っていると、ニニの背中にいたスライム達がポーンと跳ねてこっちへ飛んで来た。

「それじゃあ狩りに行ってくるね」

 ニニの声が聞こえて、上空を飛んでいたファルコも甲高い鳴き声と共に飛び去って行った。

 って事は、プティラはニニと一緒に行ったんだな。

「お前は?食事はどうする?」

 俺の左腕に掴まった、モモンガのアヴィを見る。

「私は草食ですから、そこらの葉っぱや木の実なんかを食べます。ご主人が食べている野菜や果物なんかでも大丈夫ですよ」

「あ、そうなんだ。じゃあ色々出してみるから、何が口に合うか教えてくれよな。良さそうなら多めに買い込んでおくからさ」

「私の身体は小さいですから、ご主人の余りで丁度いいですよ。ただ出来れば一日一度は食べさせて欲しいです」

 申し訳無さそうにそう言われて、俺は笑ってアヴィを撫でてやった。

「そっか、確かにそうだな。あ、もしも俺にすぐ言えない時は、ケンタウロスのベリーに頼んで、サクラが持ってる果物や野菜を少し分けてもらってくれよな。ベリー、もしもの時は、こいつの食事も一緒にお願いしていいか?」

「分かりました。まあ主に貴方がアヴィの食事を忘れていたら、私が見てあげますよ」

 その言葉に、俺は思わず吹き出したのだった。

 ごめん、確かに時々ベリーの果物も忘れてたもんな……。


 しばらく走って、ハスフェルが止まったのは、腰ぐらいまでの低木の茂みと土が所々に剥き出しになった段差のある草地だった。

「何だか物凄く見覚えのある場所だぞ。おい」

 それは、ブラウンホーンラビットのラパンをテイムした時の場所によく似ていた。

「今日の第一の目的地だ。ここでクーヘンには頑張ってテイムしてもらうぞ」

「は、はいい!」

 チョコから降りたクーヘンは、ハスフェルのその言葉にその場で直立して返事をした。


 なんだかまた嫌な予感がするのは……俺の気のせい、だよな?

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