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第百九十七回 第二回講和会議の前(追加)

2025.12.15 同じ話が二話あって見直していたら、別の一話が抜けておりました。

      投稿したものと思い込み勘違いしておりました。

      確かにこれでは話がつながりませんね。申し訳ない。

 ホークの頼みを聞いた翌日、サイメイを呼ぶ。

「事態が動いている。近々マオ帝国と山の民の会談がある」


「でしたら、嵐龍への対策を形にしておかないといけないですね」


 サイメイの言いたいことをユウトは理解した。


 会談があるから街は安心、と考えるようでは東の地では生きてはいけない。会談前に自らの力を誇示するため山の民が街を襲うとリスクがある。最初は襲う気はなかったが、あまりにも無防備なので欲が出た、でも困る。


 何もしない場合は山の民からもマオ帝国軍部にも街は軽く見られる。街は街で存在感を示させなければ何も影響力が持てない。


「山の民に力を示すのに、何かできることはないか?」

「設計段階ですが、嵐龍に落雷を落とす兵器を考案中です」


 自然災害規模の嵐龍を自然をもって制す。嵐龍は風を操り、対龍抗槍の軌道を変える。質量のある槍だから風で防げるのなら、質量のない電気なら逸らせない。落雷ほどの強力なエネルギーが直撃すれば嵐龍も無傷ではすまない。


「そんな兵器があるとの報告は聞いていないけど?」


「お知らせしていません。学者の頭の中にしかない案の段階で実物存在しません。図面は引けそうなのでそれらしい物はできると思います」


「作ったところできちんと起動するの?」


「実際に試してみないとわかりません。予算を付けて作ったとしても試作初号機です。まともに起動しないでしょう。動くかは動かないからは使ってみないとわかりません」


 いいたいことはわかった。兵器を作る現場を知るサイメイですら、試験時にどう動くかわからない。なら、山の民にもわからない。


「動く前提で落雷兵器の試作機を自信満々に作る。敵には『もしかして』と思わせると同時に、街の人間には切り札があるようにしておくのか」


「自信満々には作りません。ここだけの秘密的に作ります」


 宣伝したいと声高く叫んでも拡がらないことはある。むしろ『秘密なんだけど』としたほうが宣伝効果が高いし、信憑性も出る。


「宣伝は必要ないね。街には極東の国も、マオ帝国の間者もいる。彼らは優秀だ。自分で調べる。作り掛けでもいいから、見える形で何か用意しておこう」


 仮に軍部が落雷兵器の図面を要求したら、テルマの空気から水を集める装置を要求しよう。秘密と機密の交換に軍部は応じると思えないが、タダではやれない。


 サイメイとの謀議を終えた、翌週にはミラがやってくる。

「山の民とマオ帝国の会談の準備をするようにと領主様からの通達です」


 マオ帝国も会談に向けて既に動いていた。両者が会談を望んでいる。テルマのことだから、砦が全て落ちるころには山の民が会談を申し込んでいると、予期していたに違いない。だが、会談がどこに落ち着くかが見えない。


 宮廷内では話があるのかもしれないが、宮廷内の動きは街の庄屋に伝わってこない。

「会談の準備を進めますが、この会談は何が話されるのでしょう」


「余計な事を御夫君は知らなくていいです。会談がどう展開するかは大事ではありません。重要なのはトリーネ様も会談に合わせてやってきます」


 会談開催地の領主が現地入りするのは珍しいことではない。会談に加わらないにしても、接待責任者としての務めだ。


 腰の重いトリーネがこのタイミングで動いた。トリーネの心の内が読めない。探りを入れたいが、ミラから「余計な事は知らなくていい」とピシャリと言われた。


 会談は山の民が停戦を要求して、マオ帝国が断る、の簡単な流れではない気がした。

 夫なのだからトリーネの考えだけでも事前に教えて欲しい。教えないのは信用されていないからだろう。


 だからといって、トリーネが不誠実とは罵れない。

 ユウトだって、こっそりバルカンとトリーネには言えない内容を話している。


「夫婦関係って難しいですね」


「溝があるというのであれば、代官の私に愚痴を零しても時間の無駄です。お二人で話合って埋めてください。あと私は何かあれば領主様の肩を持ちます」


 夫婦喧嘩に巻き込まれたくない気持ちはわかる。だけど、もう少し俺に遠慮があってもいいのはないかと言いたい。でも先に愚痴るなと言われたばかりだ。


 事務的にミラが通達する。

「新居となる城の件に関しても領主様は気にしております。訪問時には御夫君から説明をお願いします」


 築城については見せられるものが図面くらいしかない。予定地は区画整理と整地作業中であり、城の土台はあるが、見て楽しいものではない。


 進みが遅いと怒られるかもしれないが、怒りは甘んじて受けよう。だが、築城を無理に急がせて住民の負担を増やすのは止めてもらいたい。


「説明の準備はしますよ。新居となる城ですが、発展した東の地に相応しい物にします。そうなると大事なのは基礎部分です。ここはしっかりと造るので時間を掛けています」


 進みが遅いと指摘された時のための予防線を張った。ユウトの言葉にミラはチクリという。


「建築に関しては私は素人同然なので意見は控えます。領主様は違いますよ。城の補修や土木工事をやっているので知識があります」


 適当な嘘を吐いてもバレるぞとの脅しである。ミラの言葉は嘘ではない。トリーネは本を読むのが好きである。領主として仕事をこなしているので、建築についても知っている。


 突っ込んだ質問をしてくるのなら、回答は設計をしたマタイが適任。現場での進捗に関してはモルタが適任。二人とも礼儀知らずの側面があるので、トリーネを不快にさせる危険がある。


 設計したマタイと現場監督のモルタはしょっちゅう喧嘩している。二人一緒にするのは『混ぜるな危険』になりかねない。会談も重要だがトリーネの接待も同じくらい重要だ。


『和平は成立しました、結婚は白紙になりました』ではあまりにも無能だ。その後、ミラは会談に関する簡単な段取りをして帰った。


  夏が終わりに向かう。今年の夏の熱さは厳しく、暦の上では秋となっても上着なしでも外を歩けた。凶作が心配だったが、予測では思ったほど収量は落ちていない。


 天候不順による不足分をパパルの肥料による増加分が補ったおかげだとユウトは考えていた。サイメイはパパルの肥料には相変わらず否定的だった。


 コタロウの予測通りに嵐龍は村にはやってこなかったので安堵した。だが、山にあるマオ帝国の砦は全て山の民に奪われた。どうにかこのまま年を越せるかと思っていると、ママルがやってくる。


「僧正様、寺で問題が起きています。天徳派が神前試合を申し込んできました。天徳派が神前試合を勝った場合は街に寺の建立を認めてほしいとのことです」


 既にある寺の権利を寄越せなら断った。新たな寺を認めろだと断りづらい。地徳派のウンカイにいい顔をした。立場上、人徳派は地徳派と天徳派を繋ぐ役割がある。ここで天徳派のアモンを蔑ろにすれば、天徳派は人徳派に心を閉ざす。


かといって、天徳派が街で大きくなって宗教紛争の係争地になっても困る。誰の発案か知らないがユウトの立場と心情を理解している。ユウトが受けると予測しての読みだ。

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