表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンがく~dungeon high school~  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/29

29

「本当にかわええな、ころりんは」


 ゆかりんがころりんを手の平に乗せて頭を撫でている。

 今日はゆかりんが私の部屋に泊っている。

 パジャマの代わりにジャージの体操服を着ている。

 下着類は売店で購入した。

 一緒に寝る準備は万端なのだが。


「ねぇ、ゆかりん。そろそろ寝ないと」


 もう夜の十時。

 明朝は新聞配達なので、いつもならもう寝る時間だ。


「桃華ちゃん、うちの分まで代わりに寝てて」

「……もうしょうがないなぁ」


 私は布団に入って目を閉じた。

 そして――


「って、私が寝ても意味ないじゃん!」

「ノリツッコミするには遅すぎるやろ? もう朝やで。ころりんが寝てるから静かにしてな」

「あ、ごめん……ゆかりん、もしかしてずっと起きてたの?」


 ゆかりんはスマホで寝ているころりんを撮影していた。

 目の下に隈ができている。

 コロリンも―――


「だって、寝てるころりんが可愛くて――」

「もう、少しでも寝ないと」

「でも、コロリンにとって今のこの瞬間は今しかないんやで?」

「ちゃんと寝ないと先生に言いつけて、ころりんを寮でお世話するのも禁止にしてもら――」

「おやすみ、桃華ちゃん!」


 ゆかりんが布団の中に入った。

 当然、今から寝ても十分な睡眠時間が確保できるはずもなく、授業中も何度も舟を漕いでいた。

 ただ、うちのクラスって四人しかいないから、居眠りしたら百パーセント先生に見つかり怒られる。

 だから寝ない。

 たぶん有名進学校と同じくらい居眠り率が低いはずだ。有名進学校の居眠り率なんて知らないけど。

 なのに――


「明智っ! 私の授業で二度も眠るとはいい度胸だな」

「はっ、ミサせんせー、ごめんなさい」

「一度目は許してやったが、二度目はダメだ。私は三度目まで許す仏ほど甘くないからな」


 三ノ瀬先生が仁王立ちでゆかりんの机の上で立っていた。

 怒ると怖いと噂の三ノ瀬先生が不敵な笑みを浮かべて立っている。

 怒っているはずなのに笑われるって、こんなに怖いんだ。

 

「あの、三ノ瀬先生。体罰とかやめてくださいね」

「安心しろ、山本。このご時世、体罰などしたら問題になるからな。そんなことはしない」


 三ノ瀬先生が私に言った。

 それを聞いて私は安堵した。


「こういう場合の指導要領が既に出来上がっている。体罰があった方がよかったかもしれないが我慢しろよ」


 こうして、コンプライアンス的に全然OKな罰がゆかりんに与えられたけれど、その内容をここで語ることは私には憚られたので割愛する。

 そして、なんとか授業が終わった。


「由香里、今日は帰って寝てください」

「え、でもうち昨日も早く帰ったし」

「そのような調子でダンジョンに来られても迷惑です」


 スミレちゃんが怒ってる。

 でも、無理からぬことだ。

 ダンジョンは遊びではない。

 身代わりの腕輪で死ぬことはないと言っても、その身代わりの腕輪が砕ければそのまま退学になる。

 ましてやゆかりんの武器は剣という近接武器。

 一番前で戦うのに、その―――


「そうね。私もスミレの意見に賛成よ」


 鏡さんも言った。

 私も同じ意見だった。


「そうだね。ゆかりん、今日はもう寝たほうがいいよ」

「……そう。うん、じゃあ、桃華ちゃん、悪いけど」

「私の部屋で寝てもいいけど、ころりんは紅先生に預かってもらうことになったから、寮には連れて帰れないよ」

「え!? なんで――」

「だって、ころりんがいたらゆかりん、絶対寝ないでしょ?」


 だって、眠たいのなら昼休みとか少しでも寝たらいいのに、職員室で預かってもらっているころりんに会いに行くんだもん。


「由香里、今日は家に帰って。二日連続家を留守にすると、おじさんとおばさんも心配するから」

「……そやね。うん、わかったわ」


 ゆかりんは小さく呟いて頷くと私たちに背を向けた。

 その背中はとても寂しそうに見えた。

 私はなんて声をかけたらいいか迷っていたら――


「明智さん。あなたがダンジョンに行く理由。ちゃんと考えて」


 鏡さんがそう言った。

 ゆかりんは振り向いて、何も言わずに頷いた。


 ゆかりん、本当に大丈夫かな?


 私は心配になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>>目の下に隈ができている。コロリンも >>一番前で戦うのに、その 2カ所書きかけっす
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ