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てんしばダンジョンに潜り続けて結構な時間が経過したと思うけど、キューブの討伐数があまり増えない。
トレジャーボックスもまだ二個だけ。
「解放:高速回転水銃砲」
渦潮魔法を放つ。
水の塊が回転しながら飛んでいき、キューブにぶつかった。
倒したのはいいけれど、魔力を使い果たしてしまった。
渦潮魔法、威力は申し分ないのだけど、何しろ燃費がよくない。
一度使ったら、魔力の回復までかなり時間がかかる。
しかも、今倒したキューブが落としたのはDコインのみで、トレジャーボックスはなかった。
「凄い音した思ったんやけど、やっぱり桃華ちゃんやった」
「ゆかりん! そっちはどう?」
「うちは全然や。トレジャーボックスも二個だけやし」
「私と一緒だ」
「スミレは四個、鏡ちゃんは五個も集めてたわ。やっぱり遠距離攻撃ができると有利やね」
スミレちゃんの武器は弓矢だし、鏡さんは攻撃魔法を使える。
そうなると、攻撃魔法が一発しか使えない私や、武器が剣のゆかりんは不利になる。
わかっていたけど、やっぱりな。
「うちはこっちに行くから」
「私はこっちに――あ」
私が行こうとした方向にキューブがいた。
地図を思い出す。
ダメだ。
キューブを袋小路に追い詰めるためのルートがない。
「追いかけても逃げられるパターンやね」
「うん……あ、でも」
地図を思い出し、私はひらめいた。
「ゆかりん、一つ相談があるんだけど」
私はゆかりんにある考えを持ちかけた。
少し時間を置いて、私は走った。
キューブを追いかけるために。
だが、ただでさえ近付けば逃げ出すキューブ。
こんなに足音を立てて追いかければ即座に気付かれ、距離を詰める前に逃げられるのは必定。
それでも私はあきらめずに追いかけた。
袋小路に追い込めないのなら、
「ゆかりん!」
「まかせて!」
キューブが曲がろうとしていた角からゆかりんが現れたことで、キューブが急ブレーキからのUターンをする。
つまり、私の方に向かってきたわけで、この千載一遇のチャンスを逃すまいと槍を突いた。
さっきまでは一発目の攻撃は避けられていた。
しかし、キューブが慌てていたのか、それとも私の腕がよくなったのか、今度は外すことなく命中。
Dコインとトレジャーボックスを残して消えた。
「やったな、桃華ちゃん!」
「やったね、ゆかりん!」
お互い武器を持ってない左手でハイタッチをする。
このてんしばダンジョンの五階層は入り組んでいるけれど、その分奥に回り込める場所が多い。
挟み撃ちは連係プレイとしては基礎中の基礎だけど、逃げるキューブ相手にはかなり有効だ。
これなら、鏡ちゃんとスミレちゃんに追いつける!
※ ※ ※
時間が来たので、全員集まった。
結果、スミレちゃんは順当に数を増やし七個、鏡さんは途中で魔力がなくなったのかゆかりんから話を聞いたときより一個増やしただけで六個のトレジャーボックスを集めた。
そして私とゆかりんは合わせて十三個。
一人当たりだと六個半だから、スミレちゃんと鏡さんの間の成績になる……んだけど。
「それで個人勝負だったのに、連携してキューブ狩りをしていたのですか」
「そこまで堂々とルールを無視されると、むしろ清々しいわね」
キューブを倒した方法を話したところ、そういう反応を貰った。
そういえば、個人勝負だって話だから、こういう連携はズルいよね。
怒られているのではなく、呆れられちゃった。
「ちゃうって、スミレ。桃華ちゃんが追いかけているキューブが逃げた先にたまたまうちがおっただけで」
「そうそう、たまたまゆかりんが私が追いかけた先にいただけなんだよ」
「「そういう嘘はいいわ(です)」」
「「ごめんなさい」」
私とゆかりんが謝り、今回の勝負は没収試合となった。
元々何か賭けているわけでもないしね。
階段に戻り、お昼ご飯を食べる。
実はダンジョンの階段でお昼ご飯を食べるのって、探索者あるあるなんだよ。
というのも、ダンジョンの魔物って階層を跨いで移動してこない。
つまり、ダンジョンの階段は魔物が現れない安全な場所ってことになる。
普通のダンジョンなら、通行の邪魔にならないように、縦一列になって休憩しないといけないんだけど、てんしばダンジョンは押野グループ独占のダンジョンなので利用者も少ないから横に並んで座り、お昼ご飯になる。
「もしかして、桃華ちゃんのお弁当って柿の葉寿司!?」
「さすが吉野の方ですね」
「違うよ。柿の葉で包んだだけの一口おにぎりだよ」
桃華がよく食堂で柿の葉寿司を注文するものだから、食堂では柿の葉が常備してあるらしい。
その葉っぱを貰ってお弁当を作った。
「ゆかりんはサンドイッチなんだ。てっきり和食かと思ったよ」
「それ、よく言われるんやけど実はうち、お弁当はご飯よりパン派なんよ」
「スミレちゃんのお弁当はとても綺麗だね。お店に売っているみたいよ」
「はい。お姉ちゃんが作ってくれました」
へぇ、スミレちゃんのお姉ちゃんって料理が得意なんだ。
それはいいとして、問題は――
「鏡さん、お昼ご飯それだけ?」
「ええ。十分でしょ?」
そう言って、鏡さんがカ〇リーメイトを齧る。
ストイックすぎるよ。
「鏡ちゃん、私のおにぎり一個食べて。これ、タラコだよ!」
「うちのサンドイッチも一つ食べてええで」
「私の卵焼きとウインナーもどうぞ」
「ありがとう。みんなもカ〇リーメイト食べる?」
とそのままみんなでお弁当を交換する流れになって、全員で昼食。
そして今度は二組に分かれて協力して、キューブ狩りをした。
そして、夕方には探索も終えて四人でてんしばダンジョンを出た。
「っはぁぁぁ、戦った。でも、思ったより外のダンジョンって危なくないよね」
「探索者人口どれだけか知ってるでしょ? 本当に危なかったらそんなに増えないわよ」
「今年は少し例外でしたが、去年までは平和でしたね」
「まぁ、20階層より下はまた毛色が違うらしいんやけど、うちらがそこに行くのは遥か先の話やろね」
四人で話をしていると、
「あなたたち、ちょっといいかしら?」
と声をかけてきたのは小さな女の子。
一瞬小学生かな? って思ったけど、そうじゃないって直ぐに思い直した。
この人はもしかして――
「もしかして、アルファさんですかっ!?」
「ちょっ、大きな声を出さないで」
「あ、ごめんなさい」
幸い、周囲の人には気付かれていないようだ。
でも、やっぱりそうだった。
金色のツインテールに、ちょっと釣り目だけど大きなカワイイ瞳、そして小学生みたいな身長。
憧れのアルファさんが目の前にいる。
「あなたたち、ダンジョン学園の生徒よね? 今日、てんしばダンジョンを利用するって聞いていたから、一度会っておきたかったのよ。もしよかったら一緒に食事でもどうかしら?」
え? 嘘、憧れのアルファさん――押野姫さんと一緒にご飯を食べられるの?




