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てんしばダンジョンの五階層で、私たちはキューブを探して歩いていた。
しかし出てきたのはリザードマンだった。
私は槍を構える。
リザードマンも遅れて私に気付き、剣を構えようとする。
そう、リザードマンは遅れたのだ。
気付いたときには私はすでにリザードマンを仕留められる間合いまで接近していた。
槍を突く。
リザードマンは完全に構えを取る前に首を貫かれて消えていった。
運が良かった。
そして、理解した。
今回はたまたまリザードマンの不意を打つことができた。
でも、ダンジョン学園の五階層に現れるリザードマンの不意を打って仕留めることはできなかった。
たとえ運が良くても、不意を打っても初手を有利に進めることができる程度だ。
やっぱり、ダンジョン学園のダンジョンにいるリザードマンより弱い。
「ダンプル学園長、意地が悪すぎるよ」
同じ魔物なのに、同じ階層なのに強さが全然違うなんて。
何も知らず、普通のダンジョンに関するインターネットの情報だけを信じてレベル10になったから2階層、レベル20になったら5階層まで潜れる――なんて考えていたら、ダンジョン学園のダンジョンでは苦戦するのは当然だ。
「これが本当の意味での安全マージン内での戦いか」
命の危険のないはずのダンジョン学園のダンジョンよりも、命の危険を感じない。
ダンジョンに命のやり取りを求めるはずのダンプル学園長が絶対に死なないダンジョンを生み出した意味を理解した。
なるほど、このダンジョンは命のやり取りの場ではない。
きっと、今頃は他のみんなも同じことを思っていることだろう。
「よし、キューブを探そう」
私は石造りの通路を歩く。
遠くに何かが浮かんでいるのが見えた。
立方体のもの。
ガラスのような透明の立方体の内側に、紫色の半透明の立方体、さらにその中にオレンジ色の球体が浮かんでいて、キョロキョロと動いている。
あれが目の代わりだろうか?
それとも心臓の代わりだろうか?
とにかく、突くならあそこだろう。
気付かれないように忍び足でキューブに近付いていく。
……あれ? でもキューブって耳がないよね?
音が聞こえないのなら忍び足の意味はないかもしれない。
そう思ったところで、キューブが逃げ出した。
気付かれた。
私はキューブを追いかけるが、直ぐに見失う。
鏡さんが用意した地図の意味がわかった。
闇雲にキューブに近付いたところで逃げられるだけだ。
キューブを追い込む場所を考えて、どの方向から近付くべきかも考える必要があるし、袋小路に追い込めない場所にいるキューブがいても追いかけるのは無駄だと思った。
疲れるだけだ。
となると、私が進む道は――
「こっちだ!」
地図を見て、歩く方向を決める。
またキューブを見つけた。
さっきと同じ形のキューブだけど、同じ個体かどうかはわからない。リザードマンの顔の区別すらつかない私が、キューブの区別なんてつくはずがない。
それよりも、ここからなら、うん、追い込める。
私はキューブに向かっていく。
キューブは早速逃げ出した。
私は早足程度に追いかける。
すぐに見失った。
そして分かれ道。
キューブがここを右に逃げていたのなら、逃げられて終わり。
でも左に逃げてくれていたら――
私は左の通路に向かった。
そして真っすぐ進むとそこには袋小路に追い込まれて行き場を失ったキューブがいた。
少しかわいいと思う。
ここまで追い詰めたのなら後は簡単だ。
槍で倒す。
――スカっ!
避けられた。
あれ?
突く、突く、突く、突く。
スカっ、スカっ、スカっ、スカっ。
当たらない。
突く、突く、突く、突く。
スカっ、スカっ、スカっ、プスっ。
当たった。
キューブが光の粒子に変わり、小さな箱とDコインを落とした。
「……ふぅ、疲れた」
箱の中身は気になるけれど、開けるのはみんな揃ってからだね。
さて、次のキューブを探そう。




