18
ダンジョンに入る前にダンプル学園長に報告をするということで、私はダンジョンの更衣室の前で待つことになった。
その間に、みんなにメッセージアプリのグループチャットで魔法を覚えたことを報告をしておく。
明日、天王寺のダンジョンで驚かせようかなって思ったけれど、こういう「報・連・相」は大事だからね。
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桃華:渦潮魔法スキルが生えたよ。それで、覚醒者になった
ゆかりん:え? ほんまに?
スミレ:おめでとうございます。
ゆかりん:覚醒者になってスキルが生えたんやのぉて、スキルを覚えて覚醒者になったん?
スミレ:本来は逆ですよね?
鏡:桃華の言ってることは本当よ。D缶から出たダンジョンドロップを舐めて、
スキルを覚えた結果覚醒者になったの。
ゆかりん:うっ、ダンジョンドロップ
スミレ:あれは苦い思い出でしたね
ゆかりん:味は甘かったんやけどな
桃華:それで、これから鏡さんと花蓮ちゃんと三ノ瀬先生とダンジョンに行って実際に使ってみるよ
ゆかりん:うわぁ、うちも見たかったわ。もう夕方やし、いまから行くんは無理そうやなぁ
スミレ:私も今日は用事があって行けませんが、明日見せてください
桃華:うん、それまでに魔法を使いこなしてみせるよ
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よし、頑張ろう!
と決意を固めたところで、三ノ瀬先生が準備をしてきた。
私、鏡さん、花蓮ちゃん、そして三ノ瀬先生の四人でダンジョンの中に入った。
体操服のジャージ、洗わなくてよかった。
槍を持って行くが――
「山本、特殊警棒も持って行け」
三ノ瀬先生が特殊警棒を持っていくように促す。
「え? でも私、いまは槍スキルを覚えたくてそっちを集中的に使ってますが」
「学園指定の警棒は、魔法の杖と同じ効果を持ってるの。魔法が使いやすくなるわ」
「え? そうだったの?」
知らなかった。
「この特殊警棒、意外と凄いものだったんだね」
「ああ。普通に買えば百万円はするわね」
「え!? でも、これ、無料で貰ったよね!?」
魔法学園は授業料も教科書代も全部無料だし、最初の武器として与えられたこの特殊警棒も貰ったものだ。
「莫大な寄付金が集まってるから、そこは気にしなくていいと思うっすよ」
花蓮ちゃんが杖を振って言った。
「そういうことだ。まぁ、魔術師の杖くらいの力はある」
「へぇ――じゃあ、スライム相手に魔法を使うってことでいいんですか?」
「そうだな。魔法を使おうと思うと、魔法名が頭に浮かぶ。『解放』と言った後、その魔法の名前を言うと魔法が発動する。やってみろ」
「はい! あれ? 二種類の魔法の名前が出てくるんですが――」
「だったら両方試したら?」
それもそうか――と私は早速スライムに特殊警棒を向ける。
気分はハ〇ーだよ。
エ〇スペクト・パトローナムって唱えたいよ。
その気持ちをぐっと堪え、私は思い浮かんだ魔法の名前を告げた。
強そうな魔法の名前から。
「解放:高速回転水銃砲」
私が魔法を唱えた瞬間、水の塊が飛び出した。
その水の塊は回転しながらスライムに命中し、スライムは吹き飛んだ。
つ、つよい……のかな?
スライム相手だといまいち威力がわからない。
「上位属性魔法って初めて見たっすけど、豪快っすね」
花蓮ちゃんが大きな打ち上げ花火を見た感じに言った。
「結構な威力ね。私の魔法より強いわ」
「これだとリザードマンレベルなら一撃で倒せるだろう」
鏡さんと三ノ瀬先生から太鼓判を貰った。
「ホントですか?」
「ああ。山本、魔力はどれだけ減ってる?」
「えっと、30/50だから、20減ってます!」
つまり、このままだと一度に二回までしか使えないのか。
鏡さんは一回の探索で何度も魔法を使っていた気がする。
上位魔法はそのあたりもネックなのかな。
「そうか。これを飲め。魔力が回復する」
三ノ瀬先生が魔力回復薬をくれた。
「これ、貴重なものじゃないんですかっ!?」
「確かに、買えば五万はするな」
「五万円っ!? そんなの飲めません!」
私の新聞配達の月給くらいある。
「学校の備品だし、寄付された品だ。しかも寄付してくれたのはあの天下無双だぞ?」
天下無双って、チーム救世主が所属しているEPO法人のっ!?
ますますありがたくて飲めないよ。
って思ったら――
「あぁ、そういうことなら飲んだ方がいいっすよ? あたしも天下無双所属になったっすけど、栄養ドリンク感覚でバカみたいに高い薬飲めるっすから」
花蓮ちゃんのアルバイト先は天下無双の下請け工場だって聞いた。
下請け工場なのにそんなに薬貰えるんだ。
天下無双ってそれほど薬が潤沢に手に入るのかな?
「そういうことだ。倉庫に1000本くらいあるし、足りなくなったらいつでも補充してくれるそうだ。飲まないと損だぞ」
「うっ、ありがとうございます」
私はお礼を言って魔力回復薬を飲んだ。
チーム救世主の皆さんもありがとうございます。
薬って苦いかと思ったけれど、りんご味だった。美味しい。
「じゃあ、使ってみろ」
「はい!」
私はさっきみたいに特殊警棒を前に向けて、別のスライムに魔法を唱えた。
「解放:水蛇強化」
魔法を唱えると、蛇のように細長い水が出てきて特殊警棒に纏わりついた。
「えっ!?」
なにこれ!?
「ほう……いいぞ、山本! その特殊警棒でスライムを叩――いや、突け! ただし軽くだ」
「はい!」
私は言われるがままにスライムを突いた。というより、つついた。
すると――スライムの身体が高速回転して弾けた。
「え?」
「どうやら、補助魔法の一種だな。武器の強化が行える。しかも喜べ! その魔法、槍とすこぶる相性がいいぞ」
槍と相性のいい魔法。
凄い、もしかして運が向いてきたかも。




