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ダンがく~dungeon high school~  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中


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 うち、明智由香里はスライムになりたかった。

 小学生の頃に兄に勧められて見た、スライムに転生するアニメを見て、こんな風になりたいって思った。

 でも、本当にスライムに転生できると信じるほどにはうちは子供ではなかった。

 その頃からだろうか?

 スライムを飼いたいと思ったのは。

 最初に取った行動は、兄が使っているパソコンでダンジョンの動画を見ることだった。

 ダンジョンが生まれて一年、配信クリスタルがダンジョンの中で見つかり、配信がスタートした。

 法規制が追い付かず、暴力描写の有無による年齢区分などもできていないため、かなりアウトな動画も多かった。


『ダンジョンでスライムと出会った』

 という動画があった。

 人とスライムが交流する動画を期待した。

 棍棒で殴り潰されるスライムたちの姿が高画質で流れた。

 その日はご飯が食べられなかった。


『スライムにコーラを飲ませてみた』

 という動画があった。

 ペットのようにジュースを飲ませてあげる可愛い動画を期待した。

 探索者がスライムにコーラを飲ませたあと、メ〇トスを食べさせたらスライムが爆発した。

 それから一年間コーラが飲めなくなった。


『スライムVS大量の氷』

 という動画があった。

 見なかった。


 それからうちは、スライムに関するダンジョン配信は見なくて、ただ魔物図鑑の写真や観察動画だけを見るようになった。

 当時、スライムは多くのダンジョン配信者にとって玩具の的にされていた。

 動物愛護団体が魔物も動物だから遊び半分に殺してはいけないと言ったこともあったけど、過激な活動家は全員逮捕され、そうでもない活動家は謎の圧力があったのか全員黙ることになり、魔物は殺してはいけないという人はいなくなった。

 それでも、うちはスライムが好きだし、スライムは殺したくなかった。

 だけど、ダンジョン学園に入学して、最初の探索でスライムを殺してしまった。

 そうしないと強くなれないから。

 そして――

 ダンジョンからの帰り道。


「うぅ、歩き茸の胞子頭から浴びた……早くお風呂に入りたいよ」


 桃華ちゃんが泣きそうな声でダンジョンから出ていくのを見た。


「由香里、帰らないのですか?」


 前の高校からの同級生のスミレが尋ねた。

 クールだけど実は可愛い物と姉が大好きな昔からの友だちだ。


「ごめん、スミレ。先帰っててもらっていい?」

「もう夜も遅いから一人で帰るのは危ないよ。待ってるから手早く済ませて」


 どうやら、スミレは私の目的がわかってるみたいだった。


「ほんまごめんな。うん、直ぐ終わるから」


 うちはそう言って一階層に潜って目当ての相手を探した。

 スライムだ。

 もう、私たちは十分レベルが上がって、倒す必要がなくなった。

 それは喜ばしいことだ。

 そして、十分レベルが上がって嬉しいことがもう一つ。


 スライムが襲い掛かってきた。

 プロのサッカー選手が蹴ったボールに至近距離でぶつかるような衝撃だけれども――


「ふふふ、このくらいやったらもう平気や」


 レベルが上がって防御値もそれに伴い上昇した現在の私の体力を削ることはできない。

 うちは飛んできたスライムをドッヂボールでキャッチするかのように受け止めた。

 ぷにぷにすべすべの感触が癖になる。

 カワイイのにこんなに気持ちがいいって、本当にペットにしたい。


「なんでスライム用の捕獲玉は売ってへんのやろ?」


 ダンジョン局が売り出している魔物をテイムするための捕獲玉は特定の種類しかテイムできない。

 爬虫類の魔物用、獣系の魔物用、鳥系の魔物用などいろいろとあるけれど、スライム用の捕獲玉は売られていない。

 もしも売っていたら、絶対に購入するのに――と思うけれど、一個何百万円もする捕獲玉はさすがに私の貯金では買えない。

 そう思っていたら、スライムが二匹出てきて私に襲い掛かってきた。

 

 その二匹も纏めて受け止める。


「ええよええよ。何匹でもかかってき! うちが全部受け止めるから」


 そして――


   ※ ※ ※


「何をしているのですか、由香里」

「あれ? スミレ」


 十匹を超えるスライムに囲まれて寝ていた私を、冷ややかな目でスミレは見た。


「もう三十分経過しましたよ」

「えっ!? うそっ!?」


 うちはスライムを抱えたまま立ち上がった。


「ごめん、スミレ。すぐに帰る準備をするわ」

「帰るって、その恰好でですか?」

「え?」


 ジャージがスライムの粘液でぬるぬるになっていたし、髪もベトベトになっていた。

 アジットスライムと違って普通のスライムは何かを溶解したりはしないらしいけれど、このまま帰るのは流石につらい。

 せめてどこかで髪だけでも水で洗って――


「はぁ……一度寮に行ってお風呂に入れてもらいましょう。洗濯機もあったはずですから、ジャージも洗いますよ」

「え? でも」

「そのジャージ、明日も着るんでしょ? 更衣室で乾しておけば渇きますから」


 スミレはそう言って、率先してうちを寮に連れていく。


「ごめんな、スミレ」

「いいんですよ。こうなる気はしていたんですから」

「今度から頭を守る道具と替えのジャージくらいは持ってくることにするわ」

「やめるつもりはないんですね……いつも付き合うとは限りませんからね」

「そう言って付き合ってくれるんやろ? そんなスミレが大好きや! スライムの次に!」

「ちょっと、由香里! その状態で抱き着いてこないでください! 粘液がこっちにも付きます! あと、スライムと比べられて負けるというのは不満です!」

「ええやん! 一緒にお風呂に入ろ!」

「制服についたら困るんです! 離れてください!」


 そういってスミレは走って逃げた。

 お風呂から上がったところで、ちょうどスミレのお姉さんが仕事先から帰るところだからと、タクシーで迎えにきてくれて、三人で一緒に帰った。

 うちもタクシー代を三分の一払おうと思ったんだけど、会社からタクシーチケットを貰ってるからって教えてくれた。

 アルバイトなのにタクシーチケットを貰えるって、一体どんな仕事をしているのだろう?


「スライム塗れになっていて遅くなったんですね」


 スミレのお姉さんの緑髪のアヤメさんが笑って言った。

 彼女に会うのは数年ぶりだけど、覚醒者になったのは本当だったんだ。


「はい。すみません、迷惑をおかけしまして」

「いいえ。スキルは普段の行動が影響して覚えると言いますし、もしかしたら由香里さんはスライムをテイムするスキルを覚えることができるかもしれませんね」

「スライムをテイムするスキル……覚えられたらええなぁ」


 そうか、捕獲玉がないならスキルを覚えたらいいのか。

 そういうスキルは存在しないけれど、最近はやりのチーム救世主の皆は次々にこれまでなかったユニークスキルを発現させているという。

 もしかしたら、うちもそんな風にスキルを覚えられるかもしれない。


「……………」


 あれ? アヤメさんの姿、久しぶりに見たはずだけれども、つい最近別のどこかで見たような気がする。

 気のせいかな?


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