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21:未開封の力達

『手札は多い方がいい。……使いこなせるのであればな』



 ユウが部屋を去った後、カタリーナは再びソファに座って紅茶に口をつけた。


(とりあえずこれぐらいでいいですか? 『天使』様?)


 カップを置いてから溜息をつく。

 

(それにしても……、予想外だったわ)


 彼女は先程のユウとの会話でいくつか嘘をついた。

 カタリーナが『天使』を介して女神から与えられた福音、カウンセラー。

 この福音で見ることができるのは相手の名前、福音名、そして福音の内容だ。


 だが実はもう二つ、見えるものがある。

 その一つが保有する福音の数である。

 そしてここが問題だった。


(能力数十二……。間違いなく前代未聞でしょうね)


 カタリーナは視線を宙に泳がせた。

 その目には先程ユウに見せたような柔和な雰囲気は微塵もない。


(一人の人間がドロップから得られる福音は通常一つ。たとえ二つ目を摂取しても効果を発揮しない。例外はあるとはいえ、それでも十二は多すぎる……。)

 

 カタリーナは紙とペンを持ってきて、自分が見た能力を書いていく。

 女神教内では未来の教皇候補の一人と目されているだけのことはあり、彼女はあの短時間で見たもの全てを正確に記憶していた。


 ターニングポイント:能力者が死亡した場合、死を回避可能な時点まで時間を戻す。残り回数三回。残り回数がゼロになった場合、この能力とロゼッタストーンを消滅させる。また、能力者自身がこの能力の存在に言及した場合、相手に虚言だという判断を強制する。


 アンダーカヴァー:『覗き見はいい趣味とは言えない』


 オーバーロード:『道が無いなら作ればいいのさ』


 イグジスタンス:『魂はあるべき姿のままに』


 エターナルリカレンス:『終わりはない。それが地獄だ』


 グレイファントム:『心は自分の知らないことも知っている』


(能力数が十二と出ているにも関わらず、実際に見えた福音は六つだけ。預言書に記載のあったターニングポイントは良しとして……。それ以外の福音の内容は私がこれまで見てきたものとは明らかに違う)


 福音の内容に関して説明されているのはターニングポイントだけだ。

 それ以外はよくわからない文言になっている。

 彼女がこれまで見てきた福音とは明らかに異質。

 カタリーナは手に持ったカップを回して中の紅茶で渦を作った。

 まるで思考がその奥に吸い込まれそうな気分だ。


(『覗き見はいい趣味とは言えない』……。まさか福音の内容を見られることを拒否している?)


 彼女が最初に気になったのはアンダーカヴァーの内容だ。

 まるで彼女の能力であるカウンセラーに対抗するかのような言葉になっている。

 十二あるはずの福音の内の半分しか見えない、あるいは見えている福音の正確な効果がわからない理由がこれかもしれないと彼女は考えた。 

 つまりはカウンセラーに対するジャミング効果。

 見えない福音は特にその影響が強いのだとすれば説明はできる。


 だが……。


「わからないわ……」


 カタリーナは思わず呟いた。

 仮にアンダーカヴァーの効果が想像通りだったとすると、なぜターニングポイントだけは普通の説明なのか。

 そして残りの四つの福音の説明文もアンダーカヴァー同様にその効果を象徴するような文章になっているはずだとして、いったいそれはどんな効果なのか。

 彼女には説明文を見てもそれを推測することができなかった。

 

(天使様はこのことを知っているのかしら?)


 ふと、カタリーナは自分達に福音を直接与えた人物に考えを巡らせた。、

 女神教の能力者達は全員が、女神の意を受けた『天使』から福音を受け取っている。

 

(先日の話を踏まえれば、ロゼッタストーンとターニングポイントもあの方によるものと見て間違いはない。……ではそれ以外は?)


 福音は主にドロップ、つまり福音を宿した飴玉を摂取することによって手に入れることが出来る。

 ただし、その方法で取得した福音は最初の一つしか発動しない。

 二つ目以降は別の方法で手に入れる必要がある。


(確かターニングポイントはドロップによって付加された福音ではないはず……。ということはドロップでもう一つ別の福音を与えることも可能。……まさか私達に対して情報を伏せているのでは?)


 天使。

 女神教においてはリーンの創造主であるアインス=サティに次いで絶対的な存在である。

 だがカタリーナとしてはその言動に少し疑問を感じる部分があった。


(女神様の意向はゴーストロッドの破壊を阻止することで間違いない。でも、天使様は逆に破壊したがっているような節がある)


 女神アインスの意向を伝えると言われるアーティファクト、白の預言書。

 女神教上層部やカタリーナのように福音を受け取った者達はその意向に従う形で行動している。

 そして天使の言動もまたそれに沿っている……、はずだ。


(まるで別の思惑で動いているような……。あるいはそれが女神様の本当の意向なのでしょうか?)


 カタリーナはカップに残った紅茶を一気に飲み干した。

 

(あり得るわ。ターニングポイントの件は伏せておくように言われているし、預言書の中で言及があるのはカウンセラーでしか読めない箇所でだけ)


 白の預言書の記述にはカウンセラーを持つカタリーナにしか見えない箇所が存在する。

 ターニングポイント、あるいはその福音保有者であるユウ=トオタケに関して言及されているのはその中でだけだ。

 つまり現時点でユウがターニングポイントの福音を持っていることを知っている女神教関係者は天使とカタリーナだけ。

 天使は正確には女神教に所属しているわけではないから、女神教内ではカタリーナだけがそのことを把握しているということになる。


(何かがある、何かが……。でもいったい何が?)


 遠くから喧騒が聞こえてくる。

 きっと侵入者達との戦闘が始まったのだろう。

 それを聞きながら、カタリーナは一人で夜を過ごした。


 背後に何か大きな陰謀めいたものの存在を感じ取りながら。

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俺の本物を殺しに行く

メインヒロイン()・・・_(  ´・-・)_
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