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47:決着

『勝ち残れ。……それが手向けだ』



(チャンスはたぶん一回だけ。……ネタがばれたら終わりだろうな)


 付加効果を起動し、剣に妖しい赤のオーラを纏わせる。


(……なんだ?)


 フードの男は残った五人の相手をしながらも、アイザックの剣の存在にすぐ気が付いた。

 このタイミングで取り出したということは、何か攻撃向きの効果が付加されているのだろうと推測する。

 だが流石にそれ以上はわからない。

 

「甘い!」


 フードの男は残る五人の内の一人の隙を見つけるとククリナイフで斬りつけた。

 入れ替わりに復帰したアイザックがお返しとばかりに斬りこむ。


 体重を乗せた一撃。


 まともに食らえば致命傷は確実だろう。

 だが威力のある攻撃だけに、それを繰り出す側も隙が多い。

 フードの男は左手の剣で受け流すように構え、右手の剣でアイザックの脇腹を狙った。


 ドシュ!


 右手に伝わる確かな手応え。

 フードの男は敵に大きなダメージを与えたことを確信し……、そして直後に自分の判断ミスを悟った。

  

 ――左手に手応えがない!


 眼球を左に向ける。

 アイザックの攻撃を止めるはずのククリナイフを『すり抜け』、赤いオーラを纏った漆黒の刃が眼前まで迫っていた。


「――なっ!」


「もらった!」


 ガシュ!

 

 刃が肩にめり込み、そのまま心臓へと到達する。

 相打ち覚悟のアイザックの攻撃はフードの男に致命傷を与えることに成功した。

 脇腹を斬られて踏ん張りきれずにそのまま倒れこんだアイザックを、フードの男は両手のククリナイフを落としながらもその場に立って見下ろす。


 既に致命傷となっているのは明らか。

 だがまだ反撃があるかもしれないと周囲の僧兵達はフードの男を取り囲んだ。


「確かに……、防ぐ軌道に構えたはずなんだがな。……見事。」


 その言葉を最後にフードの男が崩れ落ちる。

 そしてアイザックの横に倒れこんだ。


「この剣の能力さ。一時的に物体をすり抜け……、ってもう聞いてないか」


 アイザックは横目で苦しそうにフードの男を見て笑うと、アナスタシアの方向に視線を向けた。


「……逝ったか」


 ロドリゴはフードの男が倒れたのを見て呟いた。

 長い間苦楽を共にした部下の死に何とも言えない感情が沸き起こる。

 それは懺悔か、あるいは諦観か。

 戦いの中での死。

 それがせめてもの救いであり、誉れなのだと自分に言い聞かせる。


 ガシュ!


「痛っ!」


「フレイムボム!」


 ボンッ!


 僧兵の一人の手首を斬りつけて一瞬硬直させると、至近距離からの爆破魔法で頭部をふき飛ばした。

 

「しぶといですよ! フォトンボール!」


 アナスタシアが光の魔法球を放つ。

 ロドリゴはそれを避けると、一番近くにいた僧兵に斬りかかった。


「ふん、死んだ部下達に恥をかかせるわけにもいかんのでな! フレイムボム!」


 再びさっきと同じ魔法を僧兵に叩き込む。

 これでロドリゴによって倒されたのは五人。

 アナスタシアによって放たれた魔法球が転がる屋根の上を走り、六人目に迫る。 

 

「動きを止めてください! 一瞬でいいですから!」


「――! 了解!」 


 狙いをつけられた僧兵はアナスタシアの言葉で覚悟を決めた。

 牽制として突き出されたロドリゴの剣を無視してタックルする。


 ドス!


 僧兵の背中に剣を突き刺さる。

 だがそれをものともせず、僧兵はロドリゴにがっしりと抱き着いた。

 それを見たアナスタシアが立ち止まって杖を構える。


「ちっ! エアニードル!」


「うっ!」


 風が僧兵の体を貫いた。

 だがそれでも意識が残っている限りは離すまいと力を込める。  


「ホーリーチェーン!」


 アナスタシアが先程フォトンボールで放った光の魔法球達。

 屋根の上で光を失うことなく転がっていたそれらから、光の鎖が勢いよく飛び出してロドリゴに殺到して巻き付いた。

 これはアナスタシアが開発したオリジナル魔法。

 つまりロドリゴにとって初見だ。


「なんだと!」


 まさか一度放った魔法を再利用するとは思わず動揺するロドリゴ。


「離れてください!」


 光の鎖に巻かれなかった僧兵が痛みに顔を歪めながら後ろに下がった。

 ロドリゴには追撃するだけの余裕がない。

 これがユートピア発動中であったなら、振り切る以前に捕まることすらなかったのだが。


「くっ……、動けん!」


「随分と手こずらせてくれましたが、これで終わりです! 神の力よ、刃向かうものを断罪せよ! アモンフォール!」


 ――ギロチン。

 

 その形状について説明するなら、それが一番適切だろう。   

 光の鎖で動きを封じられたロドリゴの頭上に、白く輝く光の刃が現れた。

 激しい光が徐々に収束し、その刃の存在感を確たるものにしていく。


「弱者は、死に方も選べんか」


 動きを縛られて棒立ちになったロドリゴは、頭上に展開した断罪の刃を見上げて自嘲気味に呟いた。

 彼が使える魔法の中に、あれを防ぐことができるものはない。

 となれば、もはやただその時を待つのみ。

 普通のギロチンは首を落とすものだというのに、彼には自分の首を差し出すことすら認められていなかった。


 そして――。


 シュィンシュィンシュィン……、シュン! グシャ!


 刃が落ちた。 


 ホーリーウインドとU&Bの戦い。

 敵の骨と肉が潰される音がアナスタシア達に勝利を告げた。


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↓メインヒロイン()登場のために第二部に移行しました。
俺の本物を殺しに行く

メインヒロイン()・・・_(  ´・-・)_
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