しゅんしゅんのきらきら
星屑による星屑のような童話。
お読みいただけるとうれしいです。
それは、そろそろ12月になるというくらいの、冬の朝のことでした。
とある小さな町の片すみにある、小さなバス停。そこで、しゅんしゅんはいつものようにお湯をわかしていました。
といっても、しゅんしゅんは人ではありません。
しゅんしゅんは、小さなポットです。
もうずっと前、町の人がこのバス停にしゅんしゅんを置き忘れてしまってからというもの、もう何年もここで「お湯わかし係」をしているのでした。
この日も朝のバス停に向かって、にぎやかな声が近づいてきました。
この季節になると、通学中の子どもたちが手をあたためにやって来るのです。
「しゅんしゅん、おはよう!」
「今日もあったかいね!」
「湯気がほわほわ!」
ポットの中でお湯が“しゅんしゅん”と鳴るたびに、湯気がふわりと辺りを包みます。それはまるで、小さな太陽がぷかぷかと笑っているかのようでした。
そんなバス停に、水色のランドセルを背負ったひとりの女の子がやってきました。
まわりの子どもたちが、いつものように明るく声を掛けます。
「マナちゃん、おはよう!」
「うん……おはよう……」
ところが、マナちゃんはあまり元気がありません。泣きそうな顔をしてベンチに座り込んでしまいました。
そんなマナちゃんを見たしゅんしゅんは、元気づけようといつもより大きな音を立てて、お湯をわかします。
「しゅんしゅん……」
お湯がさかんにわく音を聞いたマナちゃんがそう言って少しだけ顔を上げたのを見て、友だちがたずねます。
「どうしたの? 元気ないね」
マナちゃんは、大事にしていたピンク色できらきら光るハート型の『宝石せっけん』が朝から見当たらず、がっかりしていることを話しました。それは、数日前にマナちゃんが手作りしたもので、大変なお気に入りだったのです。
また作ればいい、一緒に作ろうよ――と、なぐさめるまわりの子どもたち。
と、そのときでした。
しゅんしゅんの吹き出す湯気のむこうに、朝日が差し込んできました。
湯気のなかの小さなつぶつぶが朝日の光を受けて――きらきら光ります。
「わぁ……」
マナちゃんの目も、友だちの目も、湯気と同じようにきらきらと光りました。
そして、マナちゃんもみるみる元気になっていきます。
「ありがとう、しゅんしゅん。わたしの好きな『きらきら』を出してくれたんだね!」
それを聞いたしゅんしゅんは、もう少しがんばってお湯をぐらぐらさせ、ピー、と汽笛を鳴らしました。なぜって、自分はお湯をわかして人を温めることしかできないと思っていたけれど、実はこんなに子どもたちの目を輝かせることもできるんだとわかって、しゅんしゅんはとてもうれしくなったからです。
それからというもの、しゅんしゅんのまわりには毎朝ちいさな『きらきら』が集まるようになりました。
それは、子どもたちの笑顔。
そのすべてが、あたたかい湯気の中で光っています。
しゅんしゅんは今朝も町の片すみのバス停で子どもたちの笑顔をきらきらさせています。
しゅんしゅん、しゅんしゅん。
きらきら、きらきら。
しゅんしゅん、しゅんしゅん。
きらきら、きらきら。
それはきっと、明日も明後日もその次の日も、冬の間は続いていくことでしょう。
(おしまい)
お読みいただき、ありがとうございました。
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