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俺の後輩の弟達は生意気だ

あれから数週間後。

梅雨も明け重々しかった空気はいつのまにかは霧散していき何ら変わらない日常を送っていた。

日本の学生達は夏休みと言うこともあり、はめをはずしている。

その証拠に、昨日の帰りに未成年の飲酒で高校生が補導されていた。

ったく、未成年の飲酒や喫煙は法律で固く禁じられてるって知ってるだろ?

知らねぇ奴は今知ったな。

まぁ俺も夏休みに突入したわけだ。

姉ちゃんはというと、相変わらず忙しくしてる。

何でも今日から三日間仕事で家を離れるそうだ。

内心大喜び。

そんなわけでこうして今、俺は三日分の荷物を持った姉ちゃんを玄関で見送っている。


「行ってらっしゃい」

「うん、いつものあれして?」

「あれがなんなのかは知らんが、今まで一度もしてないのは確かだからな。だから何時もなんて言葉使うな」

「私のことが好きなんでしょ?」

「いや、でも姉弟でこれは━━━━━━」


短い口付けで俺の話を遮った姉ちゃんは満足そうに笑った。


「行ってきます」

「あぁ」


まぁ、俺のファーストキスなんて小一くらいの時に騙されて奪われたからな。

今日こそはゆっくりと休もう。

ここんとこいろんな事がありすぎて疲れたし。

だから、録り貯めてたアニメでも見ながらポテチをむさぼるとするか。

もちろん冷房のよく聞いた部屋で。

これぞ夏の過ごし方。


ピーンポーン


無視無視。

えーっと、ポテチは確か台所の棚の一番上にあったはず。


ピーンポーンピーンポーンピピピピピピピピピ


「うるせぇ!」


勢いよく玄関を開けて言う。

配送業者じゃないことは、カメラを見ればわかる。

てか秋菜カメラに写りすぎなんだよ。


「先輩が早く開けないからですよ」

「うるさ・・・・・・」

「「ちょりーっす」」

「あん時の中学生」

「紹介しますね、この白い服が双子の兄の亮太(りょうた)

「おひさっす」

「こっちの黒い服が━━━━━━」

純太(じゅんた)です」


双子って初めてみるな。

ん?

でも確か秋菜の弟って小四じゃ?


「俺も純太も小四だぜ」

「にしてはでかいな。隣に秋菜がいるから尚更でかく見える」

「それってどういう意味ですか先輩っ!?」

「いって!こいつ脛けりがった」


あまりの痛さに尻餅をついた俺をよそに、轟達は家に侵入していく。

防衛失敗。

くっそあいつ本気で蹴りやがったな?

てか家に冬華以外の女の子入れるのはいろいろと問題があるだよ。


ピロピロピロピロ


「もっもしもし?」

『お姉ちゃんだよ』

「なに?」

「無いとは思うけど言っとくね。もし私がいない間に冬華ちゃん以外の女の子を家にあげたら夏夜くんの初めて奪うから」

「・・・・・・はい」

「じゃあそろそろ離陸だから電話切るね」


プツン


あいつら追い出さないと。


「おいお前ら出てけ!」


リビングのドアを勢いよく開けていい放つ。

それに反応して秋菜はビクッと驚き、亮太は笑顔のまま近づいてくる。


「命の恩人に出てけはないっしょ?」

「お前らのおかげで新しい問題が生まれたんだよ」

「じゃあ貸し二つで」

「は?」

「今回の事と、この間のことで貸し二つ。どうすか?」

「わかったよ」

「えーっと、俺と純太で二つづつだから合計四つっすね」


このくそ生意気な餓鬼しばきたおしたろか?


「それでいいから早く家から出ろ」

「秋菜は納得してないんですが?」

「誰が納得してないって?」

「私ですよ!」

「知ってるか?現代では半数以上がその意見に納得、または形の上で賛成をしてらその意見は少数の話を無視して可決されるんだぞ」

「だから?」

「お前の不納得なんて知らん。俺の拳が振り下ろされる前に出ていった方が身のためだぞ」

「せっかく先輩の家突き止めたのに」

「おいどうやってだ?」

「追跡」

「ストーカー」

「追跡ですー!断じてストーカーなんて下卑た行為ではありません!」

「お前の追跡はストーカーとやってることが変わらんだろ!」

「むぅー」

「おいガキ」

「「秋姉(あきねえ)呼ばれてるよ」」


あの双子は自分の姉をガキ呼ばわりしてるんですね。


「お前ら三人だけど?」

「それは聞き捨てなりませんね」

「ん、純太だっけか?」

「はい。それとこの姉は別ですけども私と、誠に遺憾ながら亮太は貴方の言うところのガキではありません」


なんか、こいつ一人で喋らせると話が面倒になりそうだ。


「お前ら三人に言ったんだ」

「ふん!」

「いって、だから脛蹴るな!」

「私残るけど二人はどうする?」

「三人とも帰れ」

「俺は帰る、純太は?」

「お邪魔しました」

「秋姉は二度と帰ってこなくていいぞ」

「亮太、次会うときまでに覚悟しとけよ」

「あぁ怖い怖い」


こいつはどこまでも弟にバカにされてんのな。

俺殴るくらいならこいつら殴れよ。

最後に貸しの事を俺に念押しして双子は去っていった。


「お前も━━━━━━」

「最近サークルに来ませんけどどうしたんですか?」

「いや、行きにくいだろ」

「新しく一人入ってきたんですよ?」

「へぇ、何て子?」

梨木蜜柑(なしぎみかん)ちゃん、私と同じクラスの子を引っ張って来ちゃいました」


また女の子か。

余計いずらくなるだろ。


「林檎ちゃんも待ってますよ」

「でもまぁあと一、二週間は俺ここいないし」

「旅行ですか?」

「まぁそんなとこ」

「じゃあ帰ってきたら絶対に顔出してくださいよ、約束ですから」

「はいはい、そろそろお前も帰れ」

「お邪魔しました」

「はいよ」


秋菜を見送り、玄関の鍵を閉める。

俺は駅まで送るなんて事しないよ?

だって面倒だし危険だし。


「さて、そろそろ準備始めますか」


夏休みに突入したわけだ。

毎年のように俺はこの時期に家を少し開ける。

最初は姉ちゃんに大反対されたけど、帰ってきたら構ってあげることを条件にゆるして貰えた高校二年のこと。

取り敢えず旅の準備をしますか。

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