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俺の義理チョコの判断

それはゲームの充電コードが悲しみに満ちた、具体的に言うと姉ちゃんのおかげで切れたから買い直しに来たときの事。

どうやら俺はエンカウント率が三百パーセント程上昇する呪いのアクセサリーでもつけてるみたいで、中谷ズに出くわしてしまった。

そっか、もう新年度始まってるもんな。


「おう夏夜、久しぶりやな」

「お久し振りです」


今でも疑問だが、随分と生意気だったこいにあんとき中谷は何を言ったんだ?

急に態度改めて結構な衝撃だった。

いったいどんな弱味を捕まれたんだか。


「あっそうだ、詩音さん」

「はい?」

「チョコ美味しかったよ。あれ詩音さんが中谷に教えたやつだろ」


もう少し苦味を抑えてくれる嬉しかったけど。


「えっ、なんの事ですか?」

「ちょっと夏夜はここでステイな。詩音ついてきて」


話が噛み合わないの見ると顔色変えて詩音さんを無理矢理どこかにつれていった。

あれ、前にも見たぞこんな感じの場面。

そうだ、初めて詩音さんにあった日だ。確かあのときは何故か二人ともマッカデ帰ってきたよな。

そんな事を思い出してると張本人たちが戻ってきた。

中谷はあのときと同じで赤く、詩音さんが少し偉そうな態度になった。


「優ねぇは夏夜さんと二人で話あるんやんな?」

「うっ・・・・・・せやで。せやから夏夜、ちょっと付きおうてくれへんか?」

「えっ、俺買いたいものあるし」

「なっならしゃあない━━━━━━」

「優ねぇ」

「そっそこをなんとか」


あの時とまんま逆じゃねぇか。

何だよこの従姉妹面白すぎだろ。


「まぁ、俺も話しとかないといけないことあるしな。いいよ」

「なら始めっからええでって言えや!」


思いきり頭を叩かれ少しくらくらする。

詩音さんは俺たちの話が終わるまで喫茶店でお茶するらしい、最後に何かを中谷に耳打ちして手を振って去っていく。


「えっとええか?」

「いいけど、何?」

「それは、そのやなぁ。あのチョコほんまは私が自分で作り始めたやつやねん」

「そうなんだ」


ならあの苦さは失敗が理由の説が濃厚になるな。

施設の案内板の近くの椅子に並んで座ると、中谷はこちらをギッと睨んできた。

睨み返さないよ、怖いし。


「最近、夏夜にチョコ渡した奴のとこ回ってんねんな」

「まぁ友人だし」

「そうか、ウチも友人か?」


そこなんだよ。

あつかましいことに、俺は中谷の事を友人だと思ってる。

しょっちゅう叩かれるし怒鳴られるし、でもこいつといる時は昔得られなかったなにかを得てる気分になれる。

俺は結局中谷との関係を昔の穴埋めてきな事くらいにしか考えてなかったのか?

同じ学年の奴と学祭ではっちゃけたり、休みの日なんかに家行ったりしてさ。

皆が今までしてきた事をこいつでしてきてた事になるのか?

結局あれだけ利用され利用するくらいの交遊ならいらないと言い切ってきたあの頃の俺を、俺が否定するのか?


「前にも話したっけ」

「何をや?」

「俺、今まで友達って言える奴が一人もいなくてさ、教室なんかにいると目に止まるんだよ、教室の一角で集まって放課後何処行こうかと相談してるやつらが。でもその度にあれは違う、あれは俺とは別世界のものなんだって」

「・・・・・・」

「だから、俺は誰かが俺の友人だって言い切ることは出来なくなった。まぁ普通に考えて独りよがりだったら辛いし・・・・・・」

「夏夜は好きな奴とかおらんのか?」

「そうだな・・・・・・強いて言うなら姉ちゃんかな」

「おっお前━━━━━━」

「違う違う違うそういう意味じゃない!これは家族的な意味での話だ」


あの姉はヤンデレでブラコンの変態だけどいい人だ。それは理解してる。

一人の人間として何かの職に就き誰かを養えるほど稼いでくる姉ちゃんも両親も尊敬してるし、姉として弟の俺を可愛がってくれるのも昔は嬉しかった。

それこそ学校の姫なんて呼ばれるレベルで人気だったから優越感もあった。

でもどうせならそんな優越感は欲しくなかったな。


「ウチはおる」

「えっ?」

「ウチには愛してやまへん男がおるで」

「・・・・・・そっか。頑張れよ」

「そいつは何かにつけて面倒やとか抜かしよるけど、分かりにくい形で何時も協力してくれる、相談すれば大抵の事は真面目に答えてくれる、ウチみたいな直ぐに手出してまう女と真正面から付き合ってくれる勇者や」

「そんな奴もいるんだな」

「わりと直ぐ側にな」


まさか・・・・・・詩音さん?

何てこといって考えないようにするのは止めよう。口には出さないものの態度とかでここまで露骨にアピールされたらいくら俺でも気づく。


「それともう一つ」


中谷は立ち上がり振り返るとこう続けた。


「あのチョコは義理ちゃうからな!」


俺の周りには話を聞かない奴が多い。

中谷もそうみたいで、終始真っ赤なままいなくなった。

あのチョコは義理じゃないなら本命って考えてもいいよな。

はぁ。

取り合えず充電コード買いに行こ。


「夏夜さん」

「うおっ!何時からそこに?」

「最初から全部聞いてました。ちょっとええですか?」

「・・・・・・手短にな」

「優ねぇの事です」


まだコードは買いに行けそうにもない。


《続く》

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