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俺の先輩とギャルゲー

母さんの休日も終わり、姉ちゃんも仕事で居なくなって一日がたった今日。

大学生たる俺は大学に足を運んだ。

合格発表も一週間後に控えた受験生たちはいかがお過ごしでしょうか?

てかあいつはどうなったんだろ?

なんだんかんだその事で頭が一杯になったせいで、講義はほとんど頭に入らず終い。

次のコマまでしばらく時間もあるし久しぶりにサークル行ってみるか。


ガチャ


「あっ金森先輩。ちわっす」

「・・・・・・」


携帯ゲーム機に繋がれたイヤホンで俺の挨拶などまるで聞こえないみたいだ。

てかそんなニヤニヤしながら何のゲームやってんだろ。


『にゃはは、私林檎の事好きだよ?今さらなに聞いてんのさ』

「よかったー、もしみっちゃんに嫌われたら私三日くらい死んじゃう」


ゲームと会話してやがる、てかこれってギャルゲーだよな?

別に気持ち悪いとかは思わないけど始めてみるから少し感慨深い物がある。

あの姉はギャルゲーよりもギャルゲーチックな事しやがるからな。

てか金森先輩こんなに近づいても気づかねぇ。


『いてて、足くじいちゃった』

「仕方ないで・・・す・ねぇ・・・・・・」

「えっとちわっす」


金森先輩はゲーム機をそのままにして両耳からイヤホンを外した。

と言うことは俺に気づいたのだろう。


「いっいつから?」

「よかったー、もしみっちゃんに嫌われたら私三日くらい死んじゃう、からですね」

「真似しないでくださいー!」

「すみません。でもそんなにこの部屋でのめり込むなんて珍しいですね」

「えっと、このゲームの完成度が高過ぎてつい。気を付けるようにはしてるんですけどね」


苦笑いで誤魔化すような仕草をとってる理由が分からない。

別にはまるくらいしたっていいんじゃないですか?


「他のみんなもまだですし、やってていいですよ」

「ダメです。部員が来たからには活動しないと。ただでさえ私にはもうあまり時間もありませんし」

「あっ・・・・・そうか」

「じゃあここは原点に戻ってこのゲームの話をしましょう」


結局ゲームかい。

いや、もともとそう言うサークルだけども。


「なにか質問は?」

「んー、じゃあそのみっちゃん?ってどういう━━━━━━」

「天使です!」

「・・・・・・」

「このゲームの特徴として、ヒロインとの接し方で萌え属性を自分好みに出来るんですよ。そしてあまたの属性を持つなかでこの娘こヤンデレ属性は悪魔でありながら天使なんです」


訳がわからん。


「ほらっ見てください」


徐に見せられたイヤホンのはずされたゲーム機は陽気なBGMとは裏腹に明らかに様子の可笑しい、みっちゃんがいた。

これはあれですか?

マイク機能付きとかで電源いれてる間、常に集音してたりしますか?

そんなわけないよな、逆にそれは不便だし。


『ねぇ林檎くん。何で私とお話ししてるのに他の人とも楽しそうにするの?』

「・・・・・・」


金森先輩は満面の笑み、みっちゃんも満面の笑み。

ここに違いがあるとすれば笑顔の種類だろう。

それにこの声。


「この声優ってもしかして、春って人?」

「そうなんです!それ聞いた瞬間予約しました」

「やっぱりか」

「この春さんって声優凄いんですよ、声質に幅があってヤンデレキャラさせたらトップレベルですよ」


だって本職の人だもん。


「その人俺の姉です」

「やっぱりですか。ずいぶんと前に顔を会わせたときからもしかしたら春さんじゃないかって思ってたんですよ」


何に納得をしたのか、納得がいったと言わんばかりの表現をする。

てかそろそろそのゲーム止めなくて大丈夫ですか?

そう言うまでもなくまたゲームの彼女を宥め始めた。

はたから見れば、ゲームにご機嫌をとると言うなかなかにシュールな光景が完成したわけだ。

うん、めでたい。

この金森先輩が妙にいきいきしてるから尚更シュールさが増してる。

でもまぁ、美人は本当にこのレベルまでシュールを極めないと絵にならなくならないんだな。


「ふぅ、じゃあ活動再開しますか?」

「それはもういいんですか?」

「完璧にして中断してあります」

「ふーん。で、活動ってなにするんですか?」

「これ見てください」


喫茶店のチラシ?

限定メニューか、それとカップル割引または四人でのご来店で割引。

何だろ、四人来店なんてぼっちには無理だしカップル割引考えたやつは超殴りたい。

もう肋骨を木っ端微塵にする勢いで殴りたい。


「これがどうしたんですか?」

「ちゃんと読みましたか?カップルか四人以上で行くとこの子猫のストラップ貰えるんですよ。可愛くないですかこれ?」


黒猫がとんがり帽被って直立してるなんて、可愛いと言うよりかは不気味だろ。

まぁ割合言ったら九可愛いで、一愛くるしいかな。

あれ?不気味要素なんてどこにもないな。


「確かにいいですねこれ」

「で、もしよろしければ私と・・・その・・・行きませんか?」

「まぁ時間もありますしいいですよ」


小さくガッツポーズする金森先輩はむしょうに撫でたくなるオーラを爆発させた。

それにあてられたってのは言い訳で、何となく撫でてみた。

あと可愛かったから。


「ひゃっ!」

「すっすみません。可愛くてつい」


言わなくて良いことまで言ったな、うん。


「そっそうですか。次からはちゃんと撫でる前に言ってくださいね」

「はい」

「あと可愛いって言うときも前ふりしてください」

「はい。はい?」

「何でもないです。行きますよ」


金森先輩は俺の手を握りしめて、少し照れながら大学を出た。


■□■□■□■


最近何かとよく来るこの場所。

まぁここくらいしか遊ぶような場所無いんだけど。


「っとその前にいいですか?」

「何がです?金森先輩」

「喫茶店行く前にゲームショップよりたいんですけどいいですか?」

「全然構いませんよ」


予約したゲームでも受け取りに行くのだろう。

今日は金森先輩に付き合わされてるし、別に苦でもないから嫌そうにはしない。

嬉しそうにもしないけど。


「ん?あっ夏━━━━━━」

「南くん早く行きましょ」

「あっはい」


いま一瞬、中谷の声聞こえたけど空耳かな?

それにさっきとはうって変わって急かされるし、受け取り時間間近なのかな?

大学から未だなお繋がれっぱなしの手に引っ張られるように歩き始める。


「そんなに急ぐほどなんですか?」

「南くんはもっと周囲の人間の自分に対する評価を考えた方がいいです」

「えっ?」

「例えばお姉様。お姉様は南くんをどう見てると思いますか?」


そんなもん、妹のあなたに言いにくいですよ。

でもまぁ。あの人は俺のこと玩具くらいにしか思ってないんだろうな。

だから飽きられたらすぐにポイされちゃう。

早く飽きてくれないかな?


「からかって楽しめる玩具くらいじゃないですか?」

「・・・・・・はあ。あの人は昔、私をよくからかって遊んでました。周りから見れば執拗なほど構ってたけど、家を飛び出る一週間前くらいにこういってからかうのをやめました。聞きたいですか?」


金森先輩は、ようするに何が言いたいのだろう。

きっとその答えは続きにある。

苺さんにはこれからもきっと面倒をかけられ続けられるだろうし聞いといて損はないか。


「はい」

「大切な玩具ってついついよく遊んじゃう、だからどんなに大事にしててもいつか壊しちゃうんだよね。私からすればいってる意味はよくわかりません」

「・・・・・・早く行きますか」

「そうですね。実を言うと急ぐ理由もないんですけど」


きっとラノベの主人公なら、この言葉そのものも聞かなかっただろう。

それを聞いてしまう辺り俺は主人公とは遥かに遠い存在なんだな。

だからいちモブの俺は深読みや勘違いはしても表には出さない。

聞こえないふりをする。


「えっ?」

「何でもありません」


さて、どこで期限を損ねたのか少しむくれた、でも握った手は決して離してくれることはなく、ゲームショップとは反対にある喫茶店に歩み始めた。

結局この人は何が言いたかったのだろう。

苺さんのセリフを言った後の誤魔化し笑いには何の意味があるんだ?

これまで、外部の人間には嫌な思いをさせられ続けたせいでついたこの悪癖は何とかならんもんかね。

まったく人の言葉の意味を正面的に受け止められなくなったな。


「このお店です」

「初めて来ますね」

「私は何度か来てますよ。ここのフルーツタルトが美味しいんですよ」

「ふーん」

「あっあと、一応恋人同士ってことにしてるから名前で呼んでくださいね」

「了解」


よくよく考えれば、この人とこのての芝居を打つのはこれで二度目になる。

前回は大失敗に大失敗を重ね、結果一時の不仲をもたらす大成功を納めたけど、今回はそんな重い話でもないから大丈夫だよな。


「それと馴れ馴れしいかも知れませんけど、その・・・・・・タメ口でもいいですか?」

「馴れ馴れしくないですよ。何だかんだ言って、俺のなかじゃ長い付き合いですし普段からでも全然構いませんから」

「これで私と夏夜くんの距離少し縮まったかな?」


タメ口先輩の破壊力がヤベェ。

ヤバすぎてやっぱり呼び方の選択が姉妹だななんていい忘れるくらい。それに姉ちゃんとの暗い経験が無かったらうっかり惚れてストーキングしてしまうレベル。

姉ちゃんマジあざっす。


「縮まりましたよ」

「うん!」


今日のこの人は本当にわからん。

どこで機嫌損ねて、どこで良くするのかが全く分からないんだよ。


カランカラン


向かい合って座る二人席に座り金森先輩はフルーツタルトと珈琲、俺は珈琲だけを注文した。

チョコレートみたいな甘いお菓子はつい最近沢山食べたし。

おっ、今のなかんか勝ち組っぽい。


「夏夜くんは甘いもの嫌い?」

「少し前に沢山食べたから今回はいいかなって思いまして。嫌いじゃないですよ」

「他の二人以外からも貰ったんだ」


何ですかそのジト目。

おかしくない?


「ほらこのタルト美味しそうですよ」

「話変えた、でも許してあげる」


この人タメ口にするとこんな風なんだな。

珈琲を啜りながら、美味しそうにタルトを咀嚼する先輩を見つめてみる。

よく見れば見るほど男受けの良さそうな容姿で、恐らく共学だったであろう高校とかじゃ言い寄られなかったのかな?

でもまぁ、苺さんがいたんじゃいろんな意味で近寄りがたいか。


「っと、そろそろ四限目始まりますよ。俺は大丈夫ですけど林檎さんは?」

「このタルト食べ終わったら行く」

「そすか」


それからも小さい一口で何度もタルトを運ぶ姿を、することのない俺は見続けた。

ちかみにいうと俺は四限目講義なんですね。

当然間に合わなかったのは言うまでもない。

でもまぁ、たまには誰かと二人ってのも悪くないな。

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