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俺の友人と詩音

「あったあった」

「へぇ、夏夜ってこんな分厚い本読むねんな」

「中谷は読まないのか?」

「読書はあんま好きやないし」

「そっか」


まぁ分厚いって言っても、一冊で一つの物語完結させてるし普通だけどな。

てかいつら本当についてきやがったよ。

親戚の方に関しては妙に不機嫌だし。あれか?男嫌いなのか?

でもなぁ、初対面のおれがそんなこと分かるわけ無いだろ。


「おい夏夜!」

「あほ、夏夜さんやろ」

「それくらいな別にええやん」

「こんな子でごめんな、夏夜」

「いや、別に構わないけど」

「うぅー、夏夜・・・・・・さん」


そんなにさん付けがいやか。

なら何で名前呼び何だろう。

俺なら嫌いなやつなんて、名字だろうと呼ばないけどな。


「あんたは優ねぇの何やねん!?」

「何って、元パートナ」

「・・・・・・(元パートナって・・・・・・元婚約者か!?)」


何を考えたのかは知らんが急に顔付きが厳しくなったな。


「まぁもう終わった話や、でもあん時はさいっこうに気持ちよかったで!」

「確かに中谷すごかったもんな」


あっ、今度は赤くなった。

よくわからんが中谷ににて表情豊かなやつ。


「ゆっ優ねぇ、ちょっとええか?」

「ん?どないしたん?」

「話があんねん!」

「あぁ!夏夜待っとかんと次会ったときにどつきまわすからな!」


詩音さんが無理矢理中谷を引っ張って行き俺は訳も分からないまま取り残された。

まぁいけど、さっさと本買ってこよ。


■□■□■□■


あの人のどつきまわすは本物だからな、うん。

恐怖に負けて俺は本屋前のベンチで、さらに目の前の本屋で買った本に店名の入ったカバーをかけて読書をしてる。

半ば宣伝にも見えなくない。


「お待たせ」


ようやく帰ってきた二人の顔は妙に赤かった。

熱でもあるのか?


「おう、じゃあ俺はこれで帰るし」

「夏夜さんちょっと待ってください」


なぜ敬語?


「もしよければこれから夕食でも・・・・・・あー!優ねぇ何で私がこんな事いわなアカンの!?」

「さっきの話、夏夜にも聞いてもらおか?」

「うっ。これから私たちと夕食に付き合ってくれても━━━━━━」

「詩音」

「付き合ってくださいお願いします」

「いや、ごめんだけどもう下拵えまで終わらせてるんだ」


俺の頭の中では。


「優ねぇ~」

「はいはい、ええ子ええ子」


詩音さんが中谷に泣きつき、その頭を中谷が撫でる。

まぁ微笑ましよな、状況が理解できてれば。

俺には全く訳がわからん。


「まぁ夏夜、晩飯が無理ならお茶でもどうや?」

「まぁそれくらいなら」

「ウチ夏夜さん嫌いです」


うん、知ってる。

まぁだからなんだって訳じゃないけどな。

別段お前に嫌われようと、次会うときからは挨拶程度しかしないだろうし。

広く浅い関係なんてトラブルしかもたらさない、言ってみたら煙草だ。

無くても生きていけるけど、あるならあるで構わない。

しかしそれは煙草のようで、自分の体を滅ぼす物になりかねない。

極論な話だと無い方がいい。

それがなければ無駄なアクシデントにも巻き込まれず、アクシデントのモーションが起きることもない。

触らぬ神に祟りなしみたいな考え方で人付き合いしてもいいだろ。

そんな黙して語らずを、移動の間突き通した。


「このカフェ結構来んねん」

「ふーん」


珈琲を啜りながら中谷の一人言を聞く振りをする。


「そういや、夏夜は教育実習どうすんねん?」

「いやそもそも教師なろうと思ってないし」

「そうなんや、ウチは一応教員免許とっとこうかなって思って今年の二学期辺りに実習やねん」

「ふーん、小学校?」

「中学校」

「あぁ」


俺が一番嫌いな年代のやつらか。

何か最近の中学、高校生ってあんまりいいイメージ無いんだよな。

中学の修学旅行直前学校で、担任教師の言葉がよく分かる。


『中学生は日本で一番嫌われてるからな、神社とかで騒ぐなよ』


まぁその当時担任の暴言に柄にもなく憤りを覚えたが、今となったらまぁそうだよねって思える。


「頑張れ」

「言われんでも頑張るわ」

「そこは素直にありがとうでいいだろ」

「夏夜さんは何か目指してるもんとかあるんですか?」


そして詩音さんはあれから俺に負い目を感じてるかのように、タメ口じゃなくなった。


「目指してるものかぁ、安定した生活」

「夢無い奴やな」

「夢じゃ食っていけないからね」

「ウチの詩音なんてアイドルに始まりスポーツ選手通ってアナウンサーも通過しとったな、確か今は作家やったか?」

「優ねぇ言わんといてや」

「詩音、ええこと教えたる」

「何?」

「簡単にあれなるこれなる言うなよ。本気で目指してる人に失礼や」


うん、心底どうでもいい。

っとそろそろ帰るか。


「ごめん、そろそろ帰らないと夕食の時間間に合わないから帰るわ」

「おうじゃあな、おやすみ夏夜」

「お疲れ様です、おやすみなさい」


代金を机の上において俺は店を出た。

さすがにお釣くれとは少し言いにくかったし。


■□■□■□■


ガチャ


「ただいま」

「あっお帰り姉ちゃん」

「うん夏夜君」


姉ちゃんが衣擦れ音すらさせずに近付いてくる。

些か怖いものがあるがまぁ、耐えよう。


「お姉ちゃんと明日から二泊三日の温泉旅行に行くことを命じます」

「は?」

「お正月とかの分、お休み貰えたんだ。だから仕事で知り合った友人が経営してる旅館に空き部屋優遇してもらったの」


いやぁ、いくらなんで急すぎやしませんかね?


「で、何処に行くの?」

「草津」


飛行機と電車かぁ。

やだなぁ。

面倒だし面倒だし面倒だからやだな。

でもこの感じ、断る方が面倒なことになるだろうし何より姉ちゃんの満面の笑顔をこんな理由で曇らせるのは少し面目ない。

はぁ、用意するか。


「夏夜君と旅行なんて久し振りだからすごく楽しみ」

「あっうん」


こんなの嫌だと思いつつ、旅行の準備で夜は深くなっていった。

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