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俺の強制参加させられた新年会

あれから数日。

正月気分から抜けきれずに居る頃、一応俺の所属するサークルで新年会が執り行われた。

勿論俺は参加する来など毛頭なかったのだが、例のごとく秋菜の馬鹿野郎と計算高い梨木のコンビに出し抜かれ出席を果たした。

机の上の料理はどこで作ったのかまだ温かく、それも金森先輩の手作りらしい。

役得っちゃ役得だけど・・・・・・なぁ?

時間的にも今日の仕事から姉ちゃんが帰ってくるまでまだしばらく余裕はあるけど不安だ。


「南くん、料理お口に合いませんでした?」

「いえ。すごく美味しいですよ」

「本当ですか!?」


綺麗な両目が何時もより爛々と輝いてますね、はい。

でさ、金森先輩。

料理誉められて嬉しいのはわかるけど、そう言ういきなり手を握ったりだとか、すごく顔を近づけたりとかは勘違いしそうなんでやめてください。


「うっうん。この唐揚げとかお店で出せるレベル」

「練習した甲斐ありました」


はぁ、よかったですね。


「あっお酌しましょうか?」

「いいです、お酒苦手ですし。なんなら俺がしますよ」

「ならお願いしますね」


既に用意されていた日本酒を金森先輩のグラスに注ぐ。

そして俺はふと思った。

この人の姉が絡み酒ならもしかすると・・・・・・。


「はぁ、美味しいですよ」

「金森先輩は結構お酒呑むんですか?」

「お父様がお呑みになるんです。成人を迎えたときに晩酌をご一緒した時のその・・・・・・今でも時々呑みます」

「あぁ!」

「秋菜うるさい」

「林檎ちゃん抜け駆けはダメです!」

「ぬっ抜け駆けなんてしてませんよー」

「てか秋菜未成年だろ、酒飲むなよ」

「はぁ」


何で?

俺間違ったこと言いましたか?

金森先輩までやれやれと言わんばかりの仕草。

ムカつくなぁ。


ガチャ


「買い出ししてきました」

「あっ、お疲れさまです」


両手にコンビニ袋をたずさせて諸悪根元がお菓子の買い出しから帰還。


「あぁあ疲れた。どこかの男手が嫌がるから私が買い物行ったんですよ」


荷物を奥なりこっちに向かってきた。

そして━━━━━━。


「あっこれもらいますね」


いつのまにか透明な液体で満たされていた俺の未使用グラスを一気に傾ける。

それってまさかお酒なんじゃ?

そんな俺の不安は的中して、梨木の目付きが変わった。


「金森先輩ですか入れたの」

「・・・・・・」

「しぇんぱーい」

「抱きつくな暑苦しい!」

「ウェヒヒヒ」


こいつコップ一杯で酔いやがったぞ。


「えいっ!」

「うががが、息が・・・・・・」


梨木の細い腕がぴったり首にはまり、息ができない。

耳に入ってくる音はあわてふためく金森先輩と秋菜の声、そして心底楽しそうにケラケラと笑う梨木の笑い声。

俺の首にぶら下がり遊んでるらしい。


「はぁ、はぁ。お花畑見えたぞおい」

「秋にゃー」


梨木の猫なで声にこの世の地獄を見たかのような顔をした。


「秋菜はいつになったら先輩にこ━━━━━━」

「みっ蜜柑ちゃん!」

「早くしないと貰っちゃうよ」

「何でもいいけど梨木」

「何?」

「酔いが覚めるまで寝てたら?」

「じゃあ先輩膝枕して」


男の膝枕なんて固いだけだろ。


「まぁそれくらいな━━━━━━」

「わっ私がしてあげます!」


金森先輩がソファに梨木をつれていき勢いよく太股に頭を打ち付けた。

これはあれだね、眠らせたって行った方が正しいな。


「はぁ」


喉の渇きを潤すため紙コップに注いだ黒色の炭酸飲料を口に含んだ。

やっぱりこんなの、参加するんじゃなかった。


「あっ、夏夜先輩」

「どした?」

「辰巳ちゃんもあとできます」


別にいいけど。


「夏くーん!」

「・・・・・・」


スーパーハイテンションな大宮がドアを開けるなり俺の名前を部室だけに留まらず、廊下なまで響き渡らせやがった。


「仕事は?」

「深夜に生ラジオ」

「ちっ」

「その舌打ちどういう意味?」

「ノーコメントで」

「じゃあ隣座るね」


こっちを睨まないでください、金森先輩。


「夏くん夏くん」

「何?」

「夏くんは好きな人とかいないの?」


あざといからそう言うの。

好きなやつなんて誰か言えるわけないだろ、まずいないし。


「居ないよ」


そんな目で見ないで。

どうせ俺なんて好きなやつの一人もいない退屈なやつだよ、悪いか!?


「じゃあもし━━━━━━」

「そろそろ帰る」


これ以上は話したくない。

先輩たちの制止を無視して俺は大学を出た。


■□■□■□■


「おーい夏夜!」

「ん?優子か」


大学からの帰り、本を買おうといつものショッピングセンターによったんだが、間違いだったか。


「ウチで悪かったな」

「そんなこと言ってないけど」

「優ねぇこいつ誰?」

「こいつとか言うたらアカンやろ詩音(しおん)


詩音と呼ばれた少女はどういうわけか俺を睨む。

俺が何かしたのか?


「ごめんな夏夜。この子はウチのおかんの妹の娘で今年からこの辺の高校に通うからウチと暮らすことなってん」

「てことは高一か」


気が強そうだな。

なんか冬華を彷彿させるよ。

無い胸もまるでそっくり。


「今自分、ウチの胸ちっちゃいとか思ったやろ?」


エスパーかこいつ。


「まぁええわ、これはこれで需要あるんやから」

「うん、まぁ俺はどっちでもいいけど」

「夏夜は初対面の女子と胸の話すんねんな、怖いわー」

「うるせぇ中谷」

「おい優ねぇに偉そうにすんな!」

「詩音も年上に偉そうやけどな」

「ウチは優ねぇのこと思って言うてんねんで!」

「誰も頼んでへんやろ」


まるで姉妹喧嘩をみてるようだ。

俺としては一刻も早くこの場を離れたいところだが、無理な離脱は軋轢を生むと最近わかった。


「ところで夏夜は何してんの?」

「好きな作家さんの新刊出たから買いにきた」

「ふーん、邪魔して悪かったな」

「いや、別に。じゃあこれで」

「ウチらも買い物終わったしついてったるわ」


これはあれだな、何言っても引き下がってくれないパターンだな。

おいそこの小娘、今こそ強く反対するときだぞ。

詩音を睨むこと十秒、ガンをつけられてると勘違いしたのかにらみ返された。

はぁ。

少しだけ我慢すればいい。

我慢我慢。

そう自分に言い聞かせ俺は歩き出した。


《続く》

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