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俺の文化祭当日の話

それから一週間。

文化祭の開会式が、我が校の体育館の舞台の上で行われていた。

雪奈さんの演説も無事終わり、文化祭が始まった。

そして俺のような雑務一般の仕事に終わりはなく、今もこうしてカメラを片手にクラスを出し物をめぐっている。

ホームページに写真のせるから適当に撮って来いと言われた故の行動。

本来なら会議室で、トラブルが発生するまで待機してるはずだったのに。

その待機組も今ごろ見回りとか言っていつものごとくサボりにせいを出してることだろう。

はぁ。


「あっあの!」

「はい?」

「私たちの写真とってください」

「あぁ、これ学校のホームページに載せる奴だし現像もしないよ」

「えぇ!一枚だけ」


三人組の女子高生はどうやらホームページに載りたいらしい。

まぁどうせ没だろけど。


「じゃあホームページに載ったら現像に回して貰えるように言ってみるよ」

「でも絶対じゃないんでしょ?」

「そもそも原像する予定無いし」

「なら良いや、お前みたいのに話しかけるだけ時間の無駄だった」


酷い言われよう。

一発どついてやろうかと思わせるレベル。

しかし俺はあくまでトラブルを解決する側であって、トラブルを発生させるわけにはいかない。

笑顔で見送るわけではないけれど、怒りを感じさせない表情をつくってその場を離れる。

次は二年生のクラス回るか。

そう思い出し物の一覧表を見てみると、そこにはテンプレな出し物が羅列されている。

まぁこの一覧表作ったのも俺なんだけどな。

えっと、まずは従者喫茶店から行くか。


「失礼しまーす、文実の仕事で写真取りに来ました」


言いながら文実の腕章を見せる。

しかし俺なんかに注目するやつもおらず、俺は適当に写真を撮っていく。

トラブルはそんな時に起きた。

それもメイド服を着てるせいでと言いたくなるようなトラブル。

要するに、イケイケの大学生集団による迷惑きわまりないナンパ行為。

わざわざ解決しに割って入るのでさえ馬鹿馬鹿しくなってくる。

しかしその場に居た唯一の文実としては解決しないで帰るわけにもいかない。

あぁもう!


「嫌!」

「そんなこと言って本当は━━━━━━」

「トラブルが起きたって聞いて来たんですけどどうしたんですか?」

「あぁ?誰かと思ったらブッサイクな残念君かよ。俺たちは今から大宮辰巳ちゃんと遊ぶんだから引っ込んでろ」


その男の煽りに仲間内で大笑い。

かりに俺がお前らの仲間だとしても多分何が面白いかわからずに笑ってると思う。

誰かと徒党を組むと言うことはそう言うことだ。

何が面白いかわからなくても皆で笑う、何が悲しいのか分からなくても皆で泣く。

何がなんだか分からなくても、徒党を組む以上回りに合わせるしかない。

仲間内なんてのはその最たる例だろう。

だからこの大学生の五人グループの中には作り笑いしてるものも居るだろう。

まぁ俺の知ったことじゃ無いが。


「とにかく生徒を連れ出すような事はしないでください、倫理的にも法律的にも問題ありますので」


倫理的はともかく、法律の方はブラフだ。

ろくに勉強もしてなさそうな大学生、違法だと脅しておけば少し効果もあるはず。

まぁ俺も本当に違法かどうかはしらんけど。


「まぁまぁ、俺と違って自分がモテないからって僻むなよブサイク君」


なんだろ、今日は無性に人を殴りたくなる日だな。

思わず拳に力入ったろうが俺らしくもねぇ。

仕方ない。

こいつら学校から放り出して我慢しよう。


「入校許可書はお持ちですか?」

「はぁ?そんなもん渡されて━━━━━━」

「ダメですねぇ、コレがないと不法侵入扱いで警察に引き渡すことも出来るんですよ」


多分。


「だからそんなもん貰ってねぇってんだろ」

「無いなら出ていってください、今すぐ」


その一言が琴線に触れたのか、そもそもゼロと百しかないこいつに金銭なんてものがあるかどうか定かではないが、俺が言葉を言いはなったリターンは拳だった。

鳩尾に向けられた拳はたぶん、今まで一番痛い。

漫画の主人公だとこんなのくらっても、『あいつの拳の方が痛い』とか言ってのけるけど痛いもんは痛いんよ。

そして俺は主人公でもないから無様に殴られたところを押さえてひざまずいてしまう。

すぐに手が出るのはバカの証拠だぞ。

うずくまり心の中で悪態をつく俺に男は横っ腹に蹴りを入れた。その際、カメラも一緒に蹴られてる、大丈夫かな?

自分の事なのにまるで他人事?

おいおい、もともと他人のトラブルだろ。


「大口叩いてたわりにはだな」


そりゃバカにはなりたくないですもん。


「━━━━━━」

「何やってる!」


立ち上がった俺よりも先に駆け込んできた教師の方が声をあらげるのが早かったんですね。

程無くして、教師すら俺の事を心配せずトラブルは解決した。

同じクラスの連中からはありがとうの一言もかけられず、貰ったのは哀れみの眼差しだけ。

こんな割りに合わない事を来年もさせられるのかと思うとわりと本気で泣きそうになる。

だけどこんなことしてる場合じゃない。

カメラの破損報告行かないと。


■□■□■□■


カメラは完璧に破損したらしく、データすら取り出せないらしい。

そして何故か俺が他の文実から『お前のせいで予定が狂った』と、至極ブーメランなことを言われた。

じゃあ何だ?

お前らは一度たりとも予定狂わせてないのか?

そんなこと無いだろ、皆が知ってるはずだ。

延長申請の話を忘れたとは言わせない。

まぁそれでも俺は貧乏クジを引かされたのだろう。

仕方ない仕方ない。


「はぁ」

「南くん、そんなにしょげないで」

「あんたまでそんな事言うのかよ」

「えっ」

「何でもないです」


せっかく励ましに来てくれた雪奈先輩を振り切って俺は会議室を出た。

特に何処へ行くわけでもない、例え行くところがあってもいい顔どころか反応すらしてもらえないだろう。

はぁ、校舎裏でサボってようかな?


「あっあの!」

「おわっと、後ろから引っ張らないで」

「さっきはその、ありがとう。夏く・・・・・・夏夜君」


いきなり名前呼びとか馴れ馴れしいな。

その服さっきの従者喫茶の人だな、何で俺の名前知ってるの?

あっでもそうか、同じクラスか。

まぁ俺はお前の事知らんけど。


「私大宮辰巳、これさっきのお礼だから!」


押し付けるように渡された、オリジナルの絵の書かれた紙袋には菓子パンが入ってた。

お礼か。

まぁ悪い気はしないかな。

その日の昼食は甘過ぎる菓子パンと何時もの緑茶だった。

はぁ、明日でやっと終わりだな。

それまでもう一頑張りしますか。


《続く》

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