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俺の元日は酔っ払いの世話係

彼女の車に揺られ約三十分。

あの高級車はどうやら苺さんの実家から回してきた物らしく、高層マンションに着くやいなやさっさと帰っていってしまった。

そしてやはり苺さんも彼女のおや同様ワンフロアを買ってるみたいで実家に負けず劣らずだ。


「帰って良いですか?」

「ダメダメ、私の晩酌に付き合わせるために連れてきたんだから」

「俺お酒のみたくない」

「一口だけでも良いから」

「まぁそれくらいなら」


そんな俺の台詞を聞いて苺さんが湯気のたつ熱いお酒を用意してくれる。


「じゃあ改めて、明けましておめでとう」

「明けましておめでとうございます」


いただきます。

帰りのこともあるからあまりのみたくない。

だから俺は本当に宣言通り一口分だけを飲み干し、残りをすべて苺さんに返した。

自分で飲んでください。

にしてもやっぱりお酒の味は苦手だな。


「苺さん、顔赤いですよ」

「もう回ってきたのかしら?」

「早いなぁ」

「酔っちゃったにゃん」


イラッとするにゃん!


「何か話して」

「何かって何を?」

「じゃあ南くんの高校時代の話、時期は文化祭のころがいい」

「・・・・・・いやです」

「えぇなんで?」


絡み酒とかだるいだけだからさ。

あぁ、こんなことになるんだったら初詣なんて行くんじゃなかった。

無理矢理にでも大宮さん断っときゃよかったよ。


「引っ付かないでください」

「ドキドキしてるくせに」

「だなら何ですか?」

「話さなかったら君のお姉さんに全部いっちゃおうかな?」

「話させていただきます」

「わぁい」

「あれは俺が高校二年の文化祭に差し掛かった頃のことです」


■□■□■□■


折り紙を三枚に重ねて適当に鋏で切る。

切った折り紙は専用の袋に入れてまあた同じことの繰り返し。

これを繰り返すことやく三十分がたった。

何でこんなことしてるかは簡単、俺がクラスメートの悪意によって文化祭実行委員に選出され、その先でも悪意に出くわし雑務一般に即行で任命された。

まぁ一年間で積んできた俺へのヘイトが二年生の文化祭準備と言う、一連の行事のなかで思い出に残そうと皆が動く時に爆発したのだ。

しかし救いもある。

雑務一般の俺には簡単な仕事しか回ってこない。

今みたいに一人で紙吹雪作ったり、生徒会ダンスの開会式につかう効果音を作成したり、それぞれから押し付けられる仕事したり。

多分この中で一番働いてるのは俺。


「これ作っとけよ」


おいお前後輩だろ。

何て文句は言わない。

よくあること何だよ。

なになに、有志団体からか。

えっと、タイムスケジュールとか俺に言われてもな。


「どう?仕事は進んでるかしら?」

「見ての通りですよ、委員長」


まぁ後輩にも文句の言えない俺に話しかけてくれる悪魔のような人も、文実には居ると言うことだ。

そんな彼女を一言で表すなら清楚や純粋、清らかで正しく澄み渡ったイメージのある言葉が相応しい。

一貫して細いからだつきに、可愛いより綺麗や美人の方がしっくり来る目鼻立ち。

そしてそれをいっそう際立たせるような黒い長髪の雪奈(ゆきな)(かすみ)先輩。

その見た目のせいで男子からの人気は熱く、女子からの眼差しは冷たいものがある。

実のところ何故自分の仕事を中断してまでも俺のところに来るかよく分からない。

多分気まぐれだと思うけど、勘違いしないように気を付けないと。


有村(ありむら)くんに何か渡されたみたいだけど・・・・・・これはこっちで預かるわ」

「お願いします」


紙吹雪も作り終えたし次は今日の分の作業の進行状況の記録つけないと。

そう思い学校から支給されたノートパソコンを立ち上げる。

これも各学年の文実の出し物管理してるやつらの仕事なんだけどな。

この会議室には本来居るはずの二十四人の文実のうち俺含め五人程度しかいない。

みんなクラスの方に行ってしまった、要するに文実の仕事は全く進めてないのだ。


「みんな見回り何時までやってるのかしら?」

「みんなサボってるんですよ」

「えっ?」

「えっ?」


よもや気付いてないなんて、この人もしかしてポンコツ?


「なら何で予定通り回ってるの」


これに気づいてほしかった。

俺が毎日ギリギリまで残業やらされてんのよ。

自分の管轄外の仕事までサービス残業で、不備があれば皆口を揃えて南が悪いと合唱。

なんだろ、社会に出るための経験かな?

ニートになりたい。


「そう思うなら先輩も仕事片付けてください」

「疲れたぁ」

「・・・・・・」

「ちょっと手伝って?」


そんは風な頼み方されたら断れるわけないじゃないですか・・・・・・何て言うかよ。

こっちも押し付けられた仕事でカツカツ何だよわかる?

断るからな。


「俺のデスクに置かれたファイルの山をご覧下さい。これ全部終わってない仕事です」

「ならちょっとくらい増えてもあんまり関係無いわね」

「ごめんなさい、本当に俺しんどいんで勘弁して」

「じゃあ貴方のとなりでやろ」


おいそこの後輩。

俺にらんでる暇あるならこのファイル三つくらい持ってけ。

はぁ。

本当にこの調子で文化祭間に合うのかな?

それから下校時間を三十分程オーバーした頃。

担当の教師によって無理矢理学校から追い出され帰路についていた。

一人で歩く白い雪に覆われた住宅街の道。

たくさんの足跡は既に新しく積もった雪に消され、俺の足跡と何故かついてきた女子生徒の足跡が新しい。

マジで何でついてくるんだよ。

にしても冷えるなぁ、すっかり暗いし。

明日も文実で馬車馬のごとくなのかな?

憂鬱すぎる気持ちも体と一緒に雪の上を引き摺って歩いていく。

取り敢えず明日の事は明日だな。


《続く》

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