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俺の先輩の誤解

残暑も過ぎ去りいつの間にか寒くなってきた。

十一月も半ばに差し掛かり、学園祭まであと半月を切った頃。

俺はやっとの思いで部室の前まで来た。

ここからがさらに辛いところだ。

なぜなら金森先輩のいる部室に入らなければいけないのだから。


「はぁ」


今まで何度も入ってきただろ。

何でこんなにドアが重たいんだよ。


「先輩何してるんですか?」

「えっ?」


なな梨木さん。

タイミング悪いな。


「入らないんですか?」

「いやっ、ちょっとな・・・・・・」

「私は入るんで退いてください」

「はい」


ガチャ


ちょうどいい、俺も一緒に入ってしまえ。

しかし、廊下と部室には結界みたいなのが張られてるのかなかなか通れない。


「はぁ」

「うおっ!」

「これではいれましたね」


梨木さんに引っ張られ俺は久々に部室に足を踏み入れた。

なにも変わってなくて少し安心した。いつもの席にいつも通り座る金森先輩と目があうまでは。

なっ何て言う?

先輩は誤解してます?

これで通るわけ無い。


「もうこないでって言いましたよね?南くん」

「はっはい」

「何でここにいるんですか?約束破ったくせに」

「ちっ違うんだ」

「何が違うんですか?」

「あれは金森先輩のために━━━━━━」

「なら何で御姉様と付き合ってたんですか!?何で私を選んでくれなかったんですか?」

「・・・・・・」

「確かに南くんのおかげで縁談は無くなりました」


ここ数ヵ月、金森先輩の笑った顔見てないな。

何で俺ばっかりこんな風に苦しむの?

誰かを助けることが自分のためになるなんて言ったの誰だよ。

全く報われねぇじゃん。


「南くん、何とか言ってください」

「俺は・・・・・・」


本当の事を言っていいのか?

そんなことをすればこの人と苺さんの関係はさらに悪化するに決まってる。

それに本当の事を言えばどこでボロがでるか分かったもんじゃない。

それこそ俺のしてきたことを無意味にする。

わかってる、理解してるはず。


「金森先輩の味方です」

「また嘘ですか?」


そうなりますよね。

だから人と関わりたく無かったんだよ。

結局俺が傷ついて終わるし。

そんな終わり勝たするくらいなら関わりたく無い。

中学高校でそんな事いやと言うほど学んだはずだろ?

ここでも同じ過ち繰り返して馬鹿かよ。


「私を助けると言ったのにそれも嘘。私の御姉様を知らなかったのも嘘。嘘ばっかりじゃないですか」


俺の考えも気持ちも無視して先輩は続ける。

そもそも何も言わず今回の事の意図を理解して貰うおうとしたのが間違いだった。

何も言ってないのに理解してもらいたいなんて我が儘でしかない。

生物は口に出さなければ何も伝えられない。

口に出しても分かってもらえない時もあるくらいだ。

むしろ何も分かってもらえないまである。


「いつも肝心なことを何も言わないのは何でですか?私は南くんとわかりあいたいんです!」


無理だ。


「何とか言ってください!」

「金森先輩には俺のことなんて解りっこないですよ」

「どういう意味ですか?」

「他人の事を解りたいなんていってる間は絶対に解りません」

「なら貴方には解るんですか?」

「そんな思い上がりも甚だしいこと言えるわけないですよ」

「思い上がり?」

「はい」

「誰かのことを解る事が思い上がりなんですか?」

「はい」


その人のことを理解した何て傲慢で自己満足で思い上がりだ。

それこそ悪役にふさわしい三つの要素ではないか。

傲慢で自身を作り上げ自己満足で自信を付け思い上がる。

悪役になるにはこうするのか。


「なら私はどうしたらいいんですか?」

「金森先輩はそのままでいいですよ。人と人が解りあえるなんて思い上がってる傲慢なままでいいですよ」

「・・・・・・」

「じゃあ俺はこれで帰りますね」


しゃがみこむ金森先輩を置いて俺はその部室を出た。

入るときの結界は微塵も感じられなかった。

はぁ、どうすればこのサークルに戻れるか悩んだ時間が全部無駄になった。

あの小説の言う通り、一度壊れた人間関係は直らないんだな。


「先輩」

「なに?」

「良くあんなに口からで任せ言えましたね」

「はて、どういう意味かな?」

「そのままですよ」

「出任せなん言ってないけど」

「目を見れば解ります」

「だからそれは━━━━━━」

「傲慢ですか?それとも思い上がりですか?自己満足ですか?」

「・・・・・・」し

「先輩の目は普段からそんなに腐ってませんよ。嘘をつくときは自分の仕草や目付きにも気を配った方がいいですよ」


それだけをいい梨木さんは部室に戻っていった。

意外と強かな奴なのな。

さて、あの居心地のいい場所には二度と戻れなくなったしどうするかな?


「あーおったおった」

「ん?中谷どうかしたの」

「今日の分の音あわせまだやったろ、せやから今からやろうや」

「いいよ」

「自分、元気無いけどどないしたん?」

「何でもない、ギター家だから取りに帰るよ」

「なら私はいつもの公園で待っとくからはよ来いよ」

「おぉ」


中谷と別れて家に向かう。

その後はと言うと日がくれるまでひたすら練習。

今は何かをして無いと、自責の念に殺られてしまう。

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