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俺の姉ちゃんは風邪を引かない

初秋。

暑かったり寒かったりのこの季節は体調を崩しやすい。

しかし姉ちゃんが風邪を引いてるところを、ここ数年一度も見たことがない。

まぁ風邪引くと声にも影響でるかもだし、そうなるといろんなところに迷惑がかかる。

少し前に体調管理も仕事の一環だといってたしたぶんそう言うことだろう。

そんな姉ちゃんを見習ってと思っても、この時期になると俺は毎年のように熱を出す。

そして今年も俺は三十九度の高熱を出したわけです。


「あぁ、頭がぼーっとする」


この事が姉ちゃんに知れたら大変だと学習した俺はスキルを習得してる。

姉ちゃんにも感付かれないほどの演技。

限界はあれど大抵の熱ならいつも通りを振る舞えるわけよ。

立ってたら吐き気がしても我慢。

ご飯が喉を通らなくても我慢。

倒れそうでも気合いで何とかする。

まぁそのしっぺ返しはちゃんと来るけどな。

そして今、絶賛しっぺ返し中。

やっとの思いで病院から帰って来て、食欲はないのでそのまま薬を飲んでベッドにダウン中。

テンカウント入る事もせずKO敗けです。

はぁ、しんどい。


ピーンポーン


・・・・・・。


ピーンポーンピーンポーンピーンポーンピピピピ


「うるせぇ」


重いからだを引き摺って玄関を開けるとそこには冬華がいた。

このくそしんどい時に何しに来たんだこのくそ餓鬼。


「兄貴が暇だろうから遊びに来てあげたわよ」

「帰れ」


お願いします。


「帰れとかマジ失礼だし!」

「わかったから、じゃあリビングで遊んでろバカ」

「バカっていった方がバカ!」


キャンキャンキャンキャン喧しいなこいつ。

頭に響いてくんだよ。

のそのそとバカを放って自室に戻る。

もう限界。

ベッドまであと三歩のところで俺は力尽きた。


■□■□■□■


「南くんのせい」


金森先輩?

何がですか?


「助けてくれるって信じてました。なのに何で裏切ったんですか?」


裏切った?

何の話?

声がでない。

何の話か問いたださないとなのに声がでない。

待ってください先輩。


「やぁひさしぶり」


花宮さん。


「こんど林檎と結婚することになったよ。それもこれも君のおかげ」


俺のおかげ?

あんなに悪役演じたのに足りなかったのか?

気に入ってた場所を追い出されたのに失敗した。

待ってください。

遠ざかる二人を俺は何もできずにただ見つめた。


■□■□■□■


「・・・・・・夢?」


嫌な夢を見た。

だめだ、風邪引いてるとどうしても思考が後ろ向きになってしまう。

熱は下がってないし喉は乾いたし寒いし。

もうなんだよ。

ん?

メール来てる。


『夏夜くん、今日は遅くなるので適当に夕食を食べてください』


了解。送信っと。

晩飯かぁ、食欲ないけど何か食わないと。

せめて薬だけでも飲まないと治らない。


「兄貴」

「・・・・・・」

「なんでそんなとこで寝てんの?」

「お前明日学校だろ?」

「明日は土曜日」

「あぁそうだった」

「もしかしてしんどいの?」

「いや、そんな事無い」

「どう見てもしんどそうじゃん。どれ、熱みてやるか」


そういって俺を仰向けにすると、俺の額に額を当ててきた。

近すぎてあまり見えない冬華の顔は少し赤かった。

照れるならすんなよ。


「結構高いじゃん!なんで黙ってたのかなぁ」

「風邪うつるとまずいから帰れ」


壁に寄りかかってすわる。

頭痛に吐き気。


「兄貴の事だから姉貴にばれると面倒だから隠してたんでしょ?」


よくお分かりで何よりです。


「しゃあないから私が晩御飯作ったげる」

「ありがと」

「でもうどんくらいしか出来なよ」

「食欲無い」

「この私がつくってあげるんだから喜んで食べなさいよ」


喜べる要素が一欠片足りとも含まれてないんですが俺はどうすればいいのですか?


「じゃあできたら持ってきてやるから、それまで布団で寝てろよ」


ベッドまで移動するだけでこんなに疲れるなんて、今百メートル走したら真っ白な灰になれる気がする。

終始真っ赤だった冬華をおちょくる力も無いなんて、やはり風邪は馬鹿に出来ない。

そんな冬華も今頃うどんをゆでてる頃だろう。

冴えきらない頭で考えるさっきの夢のこと。

苺さんに作戦は上手く言ったと聞いたけど、やっぱり納得いかない。

悪役を演じるのは辛い。


「兄貴で来たよ」

「俺のためにありがとな」

「べっ別に兄貴のためじゃないし姉貴にうつると仕事とか大変だろうから作っただけ。勘違いしたらぶっとばすよ」

「そこまで言うか」

「とっとにかく!これ食べてお薬飲んで寝ときな。私は帰るから」

「いろいろサンキューな」

「買い物」


買い物?

がどうかしたのか?


「今度付き合え」

「まぁ気が向いたらな」

「絶対だからな」

「はいはい」

「じゃあ帰る!」

「じゃあな」

「早く治せよ」


そういって心なしか嬉しそうな彼女は出ていった。

後で玄関の鍵閉めにいかないと。

そうして夜は更けていって翌日には熱も押さえられ平常運転に移行した。

今度部室に行ってみるか。

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