俺の中高生時代の同級生
ある日同窓会のお知らせが届いた。
ぼっちな俺にそんなものを寄越してくる奇特な奴がうちの高校の、しかも同級生にいたと言うことだ。
にしても、同級生で俺のいえ知ってるやついたかな?
俺は引っ越してないからたぶん誰かしら知ってたんだろう。
だけどなぁ。
「夏夜くん」
「だから同窓会だって。何でそれが浮気に繋がんの?」
「同窓会と言うことは勿論女性もくるわね」
「そりゃな」
「数年ぶりに夏夜くんを見て、一目惚れする娘だっているわよ」
なんの根拠に断言してるんですか?
いるわけ無いだろ、それこそ危篤だ。
そもそも二年で人はそこまで変われねぇよ。
「貴女は押しに弱いところがあるしお酒が入れば何が起きるかわからないもの。間違いがあるかもしれないじゃない」
「無い無い」
「実際のところ私は夏夜くんに近づこうとする女を何人も牽制してきたは」
えっ、俺そいつらしらないんですが。
「夏夜くんは放っておくと女の子に食べられちゃうし」
男としてのプライドが傷付いたのは今に始まったことじゃない。
「でもまぁ、姉ちゃんがそこまで言うなら行かないよ」
「うん、ありがと」
「姉ちゃん仕事大丈夫?」
「今日の昼にラジオ生で出るから聞いてね」
「うん」
「じゃあいってきます」
いつも通りの姉ちゃんでした。
それから数時間後のラジオ。
『ラジオDEはるはるー!』
訳のわからないタイトルコールから始まりましたねはい。
『今日から新放送のこの番組はメインMCを勤めさせていただきます、優里とあの人気声優!』
『春です、よろしくお願いしますね』
うわー、出ましたいつもの外面。
声も若干違うし。
まぁそう言う仕事ですけどね。
『という訳で始まりましたラジオDEはるはる、記念すべき第一回目の放送となります』
『やっとですね』
『もぉ、ここにくるまですごく頑張りましたから。スタッフさん達が』
『この番組はリスナーさんからの質問やリクエストにお答えしたり、ゲストを迎えて楽しく一時間をリスナーさん達と過ごそうと言う物です』
姉ちゃんが説明をしていく。
俺はいつまでラジオをきいてればいいのかな?
『記念すべき第一回のゲストはなんと!なんとですねー!いま人気沸騰中の若手声優、大宮辰己さん』
訳のわからない効果音が入った。
こう言うのってどうやっていれてんのかな?
『こんにちは、大宮辰巳ですっ。これから一時間よろしくお願いしますね』
『こちらこそよろしくです。早速ですが大宮さんは確か春さんと同じ中学高校を卒業されたんですよね?』
『はい、わたしの代だと春さん、すごく美人で有名でしたよ。ちなみに私は春さんの四つ下の代です』
じゃあ同学年か。
まぁどうせ芸名だろうから特定は無理だな。
『そうなんですか?在学中は告白されたことすらないのに』
『意外ですね』
こんな日常会話みたいなのでいいのか?
『まぁ世間話もこの辺までにして、早速いただいたリクエストを読ませていただきますね。記念すべき第一リクエストはペンネーム、匿名希望の傍観者さんより。放送開始おめでとうございます』
『ありがとうございます』
『今日は春さんと大宮さんに百合っぽい台詞でいちゃいちゃしてもらえたら嬉しいです!』
姉ちゃんの百合か・・・・・・。
なんか想像しにくいな。
『じゃあシーンは私が決めさせてもらいますね。そうですねぇ、学校の先輩と後輩なんてどうですか?』
定番ですね。
『せんぱーい』
『きゃっ!きゅっ急に抱きついてこないでっていつもいってるでしょ』
『だって春先輩の抱き心地ヤバイんですもん』
『そっそんなところ触らっないで!』
『ここですか?』
『ひゃっ!みっ皆が見てるのに・・・・・・』
何ですかこのラジオ。
うすうす思ってたけどこう言うのって普通深夜枠ですよね。
何故平日の夕方に?
『はい!春さんと大宮さんによる百合劇場でした』
『めっちゃはずいですね!』
『私は楽しかったわよ』
『だって春先輩が急に変なところ触ってることにしたし』
『そんなもんじゃないかしら?』
『何より聞いてる側がいたたまれませんから』
『ふふっ』
『という訳で全然リクエストに答えてませんが一旦CMです!この後もリクエストコーナーや様々な企画を時間の限り繰り広げるつもりです。チャンネルは回さないでねぇ』
『ちゃんと・・・・・・聞いててね』
姉ちゃんの一言でCMが流れ始める。
そのごも一時間ほどあの二人の茶番劇は続いた。
■□■□■□■
聞き終えて数時間後。
なんだかんだ言って全部聞いてしまった。
いや、以外と面白かったんだよ?
ただなんだろう、この敗北感。
はぁ。
よく分からない気分にどっぷり浸ってたらインターホンが静かすぎるリビングに鳴り響いた。
「誰ですか?」
「大宮辰巳です、夏くん覚えてる?」
受話器からはラジオと同じ肥が聞こえてきた。
夏くん?
昔俺をそんな風に呼んでたやつなんていなかったぞ。
「人違いじゃないんですか?」
「南夏夜くんだよね?」
「はい」
「一緒に同窓会行こっ?」
カメラからはニコッと楽しそうに笑う彼女の顔が見えた。
ショートカットな髪や雰囲気が、彼女の人当たりのよさとかを説明してるようだ。
そういうやつに限って信用ならん。
「俺は忙しいから遠慮するよ」
「とりあえずさ、出てきてよ」
「あっうん」
一度インターホンを切り玄関にでる。
そこには活発で人懐っこそうな少女がいた。おれと同い年だけど。
「久しぶりです」
やべぇ、思い出せねぇ。
「さっきまで君のお姉さんとラジオ出てたんだけど聞いてくれたかな?」
「あっあぁ」
「相変わらずあの人ブラコンだったね」
「そうだな」
「本当に邪魔だな」
「えっ?」
「本当に邪魔したかな?」
「何が?」
「忙しかったんでしょ」
「あー・・・・・・うん」
なんか罪悪感がすごい。
「嘘でしょ」
「はい、すみませんでした」
「謝るのも相変わらず早いね」
そうだよ。
とりあえず謝っとけばなんとかなるだろ。負けるが勝ちって名言知んないのかよ。
「昔も自分が悪くないのに謝ってたよね」
「そうだっけか?」
「そうだよ。文化祭の時もさ、本番中に━━━━━━」
「そういやそんな事もあったな」
「うん」
「まぁ思い出話できて楽しかったよ」
「本当に来ないの?」
「まず今まで届いてなかった招待状が届いたのすら奇跡だからな」
「まぁ今年は私が幹事だし」
「えっ?」
「でっどうする?」
どうするか。
まぁ姉ちゃんにも言った始末、いまさらやっぱり行くなんてのは無理だろうしな。
「遠慮しとくよ、お誘いありがと」
「いえいえどうも」
「じゃあな」
「うん、近いうちに」
「えっあぁ」
終始笑顔だった大宮に少しうすら怖いもの感じつつもさよならをした。
てかあいつ本名で声優やってんのな。
そんなものなのかな?
よくわからん。
その後なぜか不機嫌な姉ちゃんの横暴に迷惑した。




