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俺の先輩が押し掛けてきました

あれから数日。

サークル活動も再開したし、海那からの連絡もちょくちょく来るようになった。

内容は他愛もないものから突っ込みどころ満載の物まである。

どきどき大学の事について聞かれることもある。

いまのところ姉ちゃんに気づかれてる気配はない。

その姉ちゃんも相変わらず忙しくしている。

声優ってのも大変なんだな。

そして俺は部屋の押し入れを整理してたら誇りを被った古くて分厚いアルバムを見つけた。

まぁ入ってるもんなんて家族写真のみなんだけど。

リビングで中身を確認して少し懐かしいなとか思ったりもしてる。


ピーンポーン


ん、姉ちゃんかな?

忘れもんでもしたか。


ガチャ


「来ちゃいました」

「どうしたんですか?金森先輩」


秋菜のやつ、俺の家の場所言いまくってな。

こんど十字堅めきめてやる。


「えっと連絡もなしに来てしまい申し訳ありません、ご迷惑でしたか?」

「そんなことないですよ」


秋菜だったら迷惑だって断言してやれるけど金森先輩にはちょっと無理だな。


「お茶でもどうですか?」

「お言葉に甘えて」


先輩に先に上がってもらい玄関の戸締まりをして俺もリビングに戻る。

先輩はアルバムが気になってるみたいですね。

まぁ見られて困る写真もないしな。


「よかったら見ます?」

「いっいえ!そんなの悪いですよ」

「別に悪くないですよ」

「じゃっ、じゃぁ見せてもらいますね」

「麦茶でいいですか?」

「はい、ありがとうございます」


ナチュラルに家にいれてしまったけどミスったな。

懐かしいもん見てたせいか姉ちゃんの事すっかり忘れてた。

これは仕方ない、秋菜だったら叩き出すけど金森先輩にはそうもいかない。

適当に満足してもらって帰って貰おう。


「これって中学生の南くんですか?」

「これは中三ですね」

「へぇ、可愛いですね」

「ほっとけ」

「もしよければこの頃の事をお少し聞かせていただいてもよろしいですか?」

「面白いことなんて何もありませんよ」

「じゃあそうですねぇ、文化祭の話とかはどうですか?」

「いいですけど」

「じゃあお願いします」

「裏方の裏方の裏方を勤めあげました、終わりです」

「やり直しを要求します」


嫌な思い出をわざわざ人に話すこともない。

それにその思い出を誰かに話て共有した気になるのも俺としては虫酸が走る。

他人の思い上がりや傲慢にも、自分の身勝手や勘違いにも俺が付きやってやる必要はない。


「中学の頃は嫌なことしなかったんですよ」

「えっ・・・・・・そうとも知らずすみません」

「いや、いいんですよ」

「じゃあもう一つ」

「はい?」

「私と付き合ってください」

「・・・・・・」


つつつ付き合う!?

おおおお俺が、金森先輩と?

釣り合わないにも程があるでしょ

あれだ、きっと罰ゲームの一種に違いない。


「マジですか?」

「言葉が足りてませんでしたね。説明します」


ふっ、俺レベルになるとこう言うのにも気づけるんだよ。

はぁ、マジじゃなかったのか。


「先日進路の事で説明したことは覚えてますか?」

「金森先輩が家を次ぐんでしたよね」

「はい、予定としては家を次ぐのと平行して縁談を進めるはずでした。私が大学を卒業するまでは家業を次ぐ話や縁談は一切なしと言う約束でしたのに、三日ほど前にお見合いの話をされました」

「それを回避するために付き合ってるふりをすると」

「勝手な話ですみません」


まぁご家庭の事情なんてのは踏みいっていいことなんてあんまりない。

今回なんてまさにその例だし。


「お願いします。私交遊関係が狭くてこんなことを頼める男性は貴方しかいないんです」


内容が内容なだけに、安易に引き受けれそうにもない。

てか失敗したらこの人、即お見合いでしょ?

ご両親はこの感じだと話すら聞いてくれなさそうだし。


「だめ、ですか?」


涙を貯めている綺麗な瞳でこっちをじっと見てくる。

その瞳からは一見諦めないと言った強い意思が感じられるが、実のところその真逆の意思が隠されている。

そんな事をわかってしまって俺はなおのこと断り辛くなってしまった。


「具体的には何をしたらいいんですか?」

「一、二回私とデートしてください、お見合い相手には恋人がいるからといってありますから」

「まぁ、それくらいならいいですよ」


勿論姉ちゃんには秘密裏だけど。


「ほほっほっ本当ですか!?」

「はい」

「ありがとうございます!」

「結構時間たってますし姉ちゃんがそろそろ帰ってくるかもなんで、そろそろ帰ってもらいたいんですが」

「そうですね、怖いですし」


こうして着々と姉ちゃんが恐怖の存在になっていくんだなぁ。


「お邪魔しました、恋人の件ありがとうございます。こんどお礼に秋葉原にいきましょ?」

「まぁ考えておきます」


金森先輩を見送り俺も一息つく。

さて、証拠隠滅するか。

その夜、俺の努力が功を奏して姉ちゃんにはばれずにすんだ。

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