表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/66

俺の旅は半分を終える

ふぅ。ここの珈琲は何故こんなに美味いのだろう?

豆が違うのか淹れ方が上手いのか知らないが、とても落ち着く味をしていて店の雰囲気とも合っている。

でも今日は。


「源五郎さんじゃないんだな」

「お父さんは隣町に出掛けました」

「ちなみにここから隣町まで何時間くらい?」

「時速六十キロで走行してちょうど一時間後に付きます」

「つまり一時間か」


さすがだな。


「その制服似合ってるな」

「どうも」


あんまり詳しくないから何て言うのかは知らんけど、漫画とかでよくみる制服だ。

少し大人っぽく見える。


「そう言えば━━━━━━」

「無理して会話作らなくてもいいから」

「・・・・・・そうか」


まぁ他人との会話なんて楽しくないよな。

俺も会話を作る理由をよくよく考えてみると無いしまぁいいか。


カランカラン


「今日は藍那ちゃんがお店やってるんだね」

「いらっしゃい、海那」

「ここにいたか」

「あぁ?」


海那はそう言うと俺を指差した。


「秋菜さんたちが探してましたよ?」

「ここには居ないって伝えてくれ」

「ご自分でどうぞ」

「意味ないだろ」

「珈琲でいい?」

「うん」

「俺も頼む」

「かしこまりました」


珈琲を淹れる彼女を見ていた。

何をやらしても様になる人だなと思わずにはいられない。

隣にいる海那なんてなにやらしてもどっか可笑しいのに不思議だよ。

てか逆になにやらしても可笑しいって才能じゃないか?

もしかして天才か?


「お待たせいたしました」

「ありがとう」

「どうぞ」

「ありがと」


二杯目の珈琲を啜る。

源五郎さんには少し劣るかな?


「藍那ちゃんは高校卒業したらどうするの?」

「・・・・・・秘密」

「えー何でなんで?」

「海那はどうするの?」

「進学するつもりだけど」

「もっと勉強した方がいいよ」

「私が馬鹿ってこと?」

「うん」

「まぁ事実そうなんだけどね」

「だから今日はもう帰って勉強すること」

「はーい」

「じゃ百八十円」

「おごって」

「無理」

「南さん」

「無理」

「はいはいわかりましよーだ」


自分で飲み食いした分を払うだけなのに何でそうなふてくされんだよ?

だから馬鹿だって言われるんだよ。


「じゃあまた来るからね」


カランカラン


結局あいつは何がしたかったんだ?


「トランペット」

「えっ?」

「トランペットいつからやってたんだ?」

「聞いてどうする気?」

「何となく」

「はぁ、八歳のころ。学校の行事で中学に行ったんだ、でそこの吹奏楽部の演奏聞いてトランペット始めた」

「ふーん、じゃあ高校卒業してもトランペット続ける?」

「あんたには関係ない」

「まぁな。ごちそうさま」

「三百六十円です」

「はいよ」

「ありがとうございました」


カランカラン


さて、民宿に戻るか。


■□■□■□■


「で、何があったんだ?どうして梨木さんは泣いてる?」

「ちょっと言い争いになりまして」

「ちなみに聞くがしょうもないことじゃないよな?秋菜」

「重要なことです」

「ほう?」

「私はお昼御飯はいらないから林檎ちゃんと二人で行ってきてって言ったのに蜜柑ちゃんが引き下がらなくて」

「秋菜」

「はい?」

「ちゃんと飯は食え」

「はい」


馬鹿馬鹿しい。

戻ってくるなり金森先輩が梨木さんを慰めてたから何だと思ったらこれだよ。

何がしたいんだよこいつら。


「先輩もどうですか?」

「俺は食べた」


正確には昨日だけど。


「そうですか嘘ですか」

「何でわかったんだよ」

「えっ嘘だったんですか?」

「・・・・・・」

「秋菜ちゃん行きましょ?」

「先輩もほら」

「はいはい」


秋菜に引っ張られ外に出ると八人乗りの車があった。

昨日もあったけどあれって先輩の車だったんだな。

てか先輩って車運転できたんだ。


「南くんも来てくれるんですか?」

「こいつに無理矢理」

「なら助手席に来て下さい」

「あっはい」

「ダメですよ、先輩は私の隣ですから」

「なんか五月蝿そうでやだ」


それにこいつの隣なんて何か疲れそうだし。

そう言う訳で助手席に乗り込む。

そんなわけで梨木さんと秋菜が並んで座るわけでして。

空気が悪い。

あんなしょうもない事でここまでできるか普通?

ある種の才能だろ、しかも金森先輩も『もうしらん』といった風の態度を取ってるし。

俺も知らん。


「先輩って車運転できたんですね」

「はい、何ならカーチェイスも出来ますよ」

「マジで!?」

「たぶん」

「だぶんですか」

「教習所ではそう言うこと習いませんでしたし」

「当たり前です」

「南くんは運転なさらないんですか?」

「ペーパードライバーです、事故るなら大いに自信ならありますよ」

「そんな宣言しないでください」

「そんなわけで運転お願いします」

「はいはい」


はぁ、にしても後ろの二人・・・・・・。

いい加減にしろよぉ!

頑張って会話続けてたけど限界だよ無理!

何?思春期なの?

そんな些細な事ですれ違っちゃうカップルですかこの野郎!

たかだか飯の一回や二回で喧嘩すんなや。


「お前ら」

「何ですか?」

「・・・・・・はい」

「面倒だから仲直りしろよ」

「あれも演技ですよ。ねっ蜜柑ちゃん」

「はい、私が泣いていたのは目にごみが入ったからで、謎の脚本は知らない間に秋菜が作ったものですし」

「・・・・・・」

「やーい、また騙された!」

「秋菜しばき倒すから覚悟しろよ」

「もぉ、せんぱいったらそんなに私と遊びたいんですか?」


ダメだ。

俺こいつに口喧嘩で勝てる気しない。

だって言葉通じないんだぜ?

勝てるわけがない。


「あれ、無視ですか?」

「帰りはお前の隣に座ってやるよ」

「本当ですか!?」

「あぁ」


なにか言う度に拳骨くれてやるからな。

速度を変えず走る車の中でそう決意した。

腹いせのために。

その後は決意通り、秋菜が俺になにかを言うつど拳骨をくれてやった。

おかげで俺の拳が赤くなってしまったじゃねぇかこの野郎。

旅も半分を終えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ