スパム2 叶わぬ願い
さてさて、前回のお話しだけでどんな切り口で詐欺業者がやってくるかは分かったと思います。
それで、第二話は奴らはどうやってひとのアカウントを乗っ取るのか? そのからくりを公開していきます!
スパム2
叶わぬ願い
パクリズムとのやり取りは長引いて時刻は深夜3時です。それはつまり昼夜逆転生活のおれにとっては昼の3時なのだけど、しかし前日24時近くまで友人と飲んでいたおれはこの時既に眠くなってきていました。
『あなたが無実であるという証拠を調べるので国、電話番号、メールアドレスなど記入して下さい』
なんなんだ。本人なんもやってねーって言ってるし、通報者も誤って行われただけだと言ってるのに面倒くさすぎないか。
おれは舌打ちしながら言われた通りの記入をする。
『調査対象になってる間は攻撃を守るためにXのアカウントをこちらのアドレスに変更してログアウトして下さい』
この時、変だと思った。Xの設定の部分にある『ログアウト』という文字は赤文字で書いてあり、いかにもやっちゃいけないことみたいな色をしていた。そしてログアウトするとあれやこれやデータが削除されますよと警告文が書いてあるのだ。
「なんか、ログアウトするとあれやこれや削除されますよって書いてあるけど大丈夫なんですか」
『大丈夫です』
「それなら信頼しますよ。パクリズムさん。あなたを信じてログアウトを選択するんですからね? もしも上手く復活しなかったら絶対に許しませんよ。わかってますか?」
『ログアウトして下さい』
この時、おれはあらかじめ「上手く復活しなかったら絶対に許しませんよ」と言っています。そう、読者である皆さんは知っての通り、これは詐欺ですから上手く復活しません。なので、絶対に許さないのです。宣言しましたからね。マニフェストです。
こうして、おれはこの時ログアウトをして自分の手でアカウントを乗っ取らせたんです。そんな手口だとは思いもしなかったから。
何度思い返しても腹が立つ! 許さねえぞパクリズム。
しかしこの段階ではまだパクリズムの言う事を信頼中ですので、思考は(そろそろ終わらせていい加減寝てえな)ということで埋まってました。この日はかなりお酒飲んでますからね、判断力もないです。ホント最悪なタイミングでしたよ。
『ネットバンクの口座を見せてください。ここ1ヶ月のお金の動きを確認する必要があります』
「利用していません」
『ネットバンクの口座がないのですか?』
「はい、作ってません。ないものは差し出せない」
この辺でかなり疑いをかけてました。そして、思いました。かなりヤバイかもしれない。と。
しかし、既にログアウトもやってしまっているし電話番号やメールアドレスも公開しています。何もかもが手遅れであるような気がしてきて、この段階まで来てしまうと『これが詐欺ではないように』と願うばかりでした。
しかし、その願いは叶わないのだ。




