21話 次の試験は
エンジェリアは、ゴールへ向かって歩いているが中々辿り着かない。まだゴールは遠いのだろうか。
「……エレ? 」
「みゅ? 」
「なんでゴールに辿り着かないの? そろそろついて良い頃なんだけど。あれをクリアすればあとはゴールするだけだからね? そこまで難しくないんだけど……これもう才能じゃない? 」
予想外の事が起きていたのだろう。フォルがこれ以上仕掛けがないとばらしている。
本来であれば、どんな仕掛けがどれくらいあるという具体的な話に関しては言わないはずなのに。
「迷子? でも、なんでこんな場所で迷子になる……迷路だからなの⁉︎ 」
「迷路っていうのは、そう思わせて道を選ぶという事をやってもらうため。実際は全ておんなじ道に辿り着けるようになっている。ゴールまで一直線だ」
「ふにゅぅ? 不思議なのー」
自分の事だが、自分でも理解できない。
「ふにゃ⁉︎ ゼロ発見」
「えっ⁉︎ ……なんでこっちの道になってんの? 」
エンジェリアが適当に歩いていると、ゼーシェリオンとフィルを見つけた。
「ちょうど過去を映しているみたいだね。しばらく黙ってよう」
「みゅ」
エンジェリア達を分かれさせたのは、幻覚を見た時に、互いに励まし合う可能性があるからだろう。これは、自分一人で乗り越えるもの。この試験は、それを一人で乗り越えられるかを確認するために、真っ暗で何も見えないのだろう。
エンジェリアは、黙ってゼーシェリオンを見守る。
「こんなところで迷ってたらエレとフォルに怒られるな。エレのいる前以外で迷っているなって。ゼムに心配もされるか」
「理由は何にしても、おめでとう。試験の一つが終了だ」
「エレはそんなに怒らないのー! 」
エンジェリアは、ゼーシェリオンの元へ駆け寄り、飛びついた。
「えっ⁉︎ エレ? 」
「フォル、なんで」
「僕も聞きたい。エレもこれクリアしてゴールするだけだったんだけど、なぜか。エレが道に迷いまくって、こうなったんだ」
フォルが呆れた表情でそう言った。
「エレが先導するの。今度こそゴールに辿り着くの。がんばるの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンと手を繋ぎ、ゴールへ向かって歩いた。
**********
ゴールへ向かっているはずだが、一向に辿り着かない。
「ゼロ、不思議な事が起こっているの」
「不思議なのはお前だ」
「なんで? エレは不思議なの? 」
エンジェリアは、きょとんと首を傾げた。
「……ゴールできないんだから不思議以外ないでしょ。なんでおんなじとこに繋がっているはずなのにゴールできないの? 」
「エレに聞かれても分かんないの……あっ、クーム発見」
「えっ? 三人同時に入れたから? でも、何人同時に入れようと、道は出口に向かっていくだけのはずなんだけど? なんでこうなってんの? なんかの不具合? エレの迷子の才能が変な場所に道を繋いでいる? 」
今度はクリカムとイールグを発見した。フォルが困惑している。
「ふぷにゃんフォルが可愛いの」
「エレ様⁉︎ 別々の場所って言っていたはずですが」
「そうだよ。こんなの初めてだよ。今まで何度かやった事あるけど。ついでに、全員クリアするのも初めてだよ。おめでと。これでゴール目指すだけ。頼むからエレ以外が先導して」
「エレなのー! 今度こそいける気がする。いけるの。きっと」
エンジェリアがそう言うが、全員信用ないと言いたげな表情をしている。
「……ゼロ。ゼロだけは信じてくれるって思ったのに」
「前科がありすぎるからな。エレは俺についてくれば良いんだ」
「……それはそれでありかも……ふにゅ。エレはゼロについていくの」
エンジェリアは、笑顔でゼーシェリオンについていく事にした。
ゼーシェリオンがゴールへ向かって歩く。
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エンジェリアが今まで迷子になっていたのはなんなんだろうか。そう思いたくなるほどあっさりと、ゴールへ辿り着いた。
「ぷにゅ。理解不能なの。どうしてこんなに早くゴールに」
「お前が迷子で遅くしてただけだ」
「うん。そうだね。ともあれこれでこの試験はクリア。あと二つで試験終了だ」
「だが、今日は休む。試験はまた後日伝える」
フォルが転移魔法を使い、別荘に帰った。
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「おかえりなさい。ヴィジェが、ご褒美を兼ねて夜ご飯作ってくれたよ」
「ゼムとフュリーナに手伝ってもらったんだ。二人とも、ありがとう」
エンジェリア達が帰ってくると、夕食が出来上がっている。しかも、出来立てだ。帰ってくる時間を見越して作っていたのだろう。
「ふにゅぅ。ヴィジェにぃ達ならうれしい……ふにゃ⁉︎ も、もし、ノーズねぇでも嬉しかったの」
「エレ、子を使わなくて良いよ。自分の料理の下手さは理解してるから」
「……前にローシャリナの王と王妃に世話になったが、星の御巫は料理が下手な決まりでもあんのか? 」
エンジェリアとノーズだけではなく、リーミュナも料理が上手いとは言えない。だが、
「ピュオねぇは得意なの。いつもノヴェにぃにお弁当作るくらい。それに、リミュねぇは、料理が下手じゃなくて、味付けがどくどくなだけなの。ノーズねぇは、調味料を間違える天才なの。リナねぇは、料理を知らないだけなの。リオねぇは、龍族の国の郷土料理と自分の出身国の郷土料理だけはできるの」
「つまり一切作れねぇのはエレだけと」
エンジェリアが、知り合いの御巫候補達を庇うと、ゼーシェリオンが納得したようにこくこくと頷いてそう言った。
「エレは簡単な料理なら教えてばできるよ。やらせないだけで」
「そうなの。エレは簡単なお料理なら作る事ができるの。作らないと作れないは違うの」
「そうなのですね。師匠からは、料理はできないと聞いていたので……その、もしよろしければ、今度、一緒に何か作りませんか? 」
エンジェリアは、笑顔でこくりと頷いた。
「喜んでなの。今日はエレが寝る前までは結界魔法をかけてあげるの」
魔法の維持に慣れるためにも、エンジェリアは、結界魔法をかけた。
昔のような魔法の使い方。最近はやっていなかったため、慣れるまでには時間がかかる。現在の魔法の使い方に慣れているのもあるため、その分時間は長くかかるだろう。
そのためにも、日常的に少しずつ魔法を使うのが良いだろう。
「ぷにゅぅ。ちょっぴりむずかしいの。ひさびさだからなのかな」
成功はしたが、昔と比べて、かなり発動に時間がかかっている。それに、こっちの方法だと何かが違うといった感じがする。
「……できたから良い、のかな? フォル、できたの。がんばったの」
「うん。そうだね。お疲れ様」
エンジェリアは、フォルに頭を撫でてもらった。
「ふにゅふにゅ。ゼロ、エレのお隣なの。クームもこっちおいで。一緒にお話しするの」
ソファに座ったエンジェリアは、ゼーシェリオンとクルカムをソファに招いた。
「フォルは、ゼロのお隣で良いの。我慢するの」
「それなら向かいが良いんじゃないか? 」
「そうだね。フィル、ルー、一緒に座ろ」
「ぴにゅ。これはこれで新鮮なの。意外と良いの」
普段は隣で座っているが、向かいもこれはこれで良いと、エンジェリアは、ゼーシェリオンと一緒に話す。
「そうだな。これはこれで良い。エレ、そういえば、武器どうするんだ? エレが暇な時で良いから、一緒に見に行かないか? 」
「ふにゅ。一緒に行くの。フォル達も一緒なの」
「それなら、アスティディアで探さない? あそこの近くに禁止指定魔法を使っている危険な魔物がいるって噂なんだ。模擬戦よりも君らはこっちの方が分かるから。次の試験はこれにするよ」
禁止指定魔法の取り締まりはかなり危険を要する。だが、これを三人でクリアすれば、見習いになったあと、そっち系の仕事を頼んでくれる可能性は高いだろう。




