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星月の蝶(修正版)  作者: 碧猫
4章 管理者見習い
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11話 見慣れない魔法陣


 エンジェリアは、珍しく早くに起きた。


 ゼーシェリオン達を起こさないようそっと離れる。


 ――フォル、エレも一緒だから。


 眠っているフォルの頭を撫でると、隣に寝転んだ。


「……エレ? 起きたの」


 眠そうにフォルが目を開けた。


「ふにゅ。おはよ」


「うん……おはよ」


「眠そうなフォル久しぶりに見たの。可愛い」


 フォルが朝起きて眠そうにしている事は少ない。あるとすれば、前日にフィルの前で大泣きした日くらいだろう。今のように。


「もう少し寝て良いの」


「起きるよ。今支度するから」


「……むぅ、起きたらエレにぎゅぅから始めるべきだと思うの。昨日、フィルにはぎゅぅした気がするのに、エレにはしてくれない」


「……ぎゅぅすれば良いの? ぎゅぅ」


 寝起きでなければ、顔を真っ赤にして反論していただろう。


 フォルがエンジェリアを抱きしめる。


「ふにゅ。満足」


「エレ起きてたでしょ」


「ぴにゃ⁉︎ な、なんの事? 」


 フィルがエンジェリアの頭を撫でて、フォルには聞かせられない事を聞く。


 エンジェリアは、誤魔化そうとしたが、どう誤魔化せば良いか思いつかず、慌てている。


「起きてたなら、フォルの話聞いてた? みんなの事」


「……うん。無事で良かった。でも、今もそうかは分かんないから、できるだけ早く見つけないと」


「それなんだけど、みんなを見つけられる魔法具でもあればと思っているから、いつも通りやってくれる? 」


「お任せなの。ノーズねぇとヴィジェにぃの事に見習い試験の事があるから、遅くなっちゃうけど、設計図の準備は任せるの」


 フォルはこうなっている時、エンジェリアのわがまま以外は話を聞いていない。この話もフォルは聞いていないだろう。


「任せた。でも、今はそっちは考えないで。ノーズとヴィジェの捜索の事だけ考えて」


「分かってるの……ぷにゅ? リミェラねぇがくるまでは何もないから、今はフォルのらぶを考えるべきなのかも? 」


「フフ、そうかも」


 フィルが笑うところはいつぶりだろうか。エンジェリアは、フィルをじっと見つめる。


「笑ってる方がすきなの」


「……おれ、朝食作ってくるから」


「逃げた……フォル、おきて〜」


 フィルが朝食を作りに行ってしまう。


「ん……エレ……おはよ」


「うん。おはよ。やっとちゃんと起きてくれたの」


「ああ、そういえば、フィルにも伝え忘れてたんだけど、ノーズとヴィジェのいる場所に行く方法分かったよ」


「ぷにゃ? それならエレも分かっているの。みんなで一緒にどこってやっていたの。だから、ほめて? ご褒美」


 エンジェリアは、フォルの言っていた通り、居場所を見つけたと思っている。その褒美を求める。


「ローシャリナに扉があるの。そこへ行くの」


「そこまで分かったんだね。良く頑張ったね」


 フォルがエンジェリアの額に口付けをする。


 エンジェリアは、頬を赤らめて喜んだ。


「そこまで調べられたらたいしたもんだよ。でも、残念。それだけじゃいけないんだ。あそこの扉を開くためには蛇氷種がいないといけない。あの時は偶然開いていただけで、その方法じゃないと奥まではいけないんだ」


「ぷにゅぅ。分かったの。ついてく。フォルはその蛇氷種の場所を見つけたの」


「うん。ちょうどリミェラも来たから、準備して行こうか」


「みゅ」


 エンジェリアがフォルと話していると、リミェラがやってきた。


「おはよう。夜の話だけど、詳しく聞かせてもらえる? 」


「えっとね、どこか分かんないけど、蛇氷種が扉を開けてくれるから、ノーズとヴィジェはそこにいるの。だから早く行こ」


「その前に、フィルが朝食作ってくれてるんだから、食べてから。それに支度とかもあるから」


      **********


 支度を終えたエンジェリア達は、フォルが会ったという蛇氷種に会いに向かった。


「お待ちしておりました。フォル様。双子姫様も」


「ぷにゅ。エルグにぃの宮で働いていたの。覚えてる。キプスなの」


「ええ。お久しぶりです。妹姫様。ゆっくりと話たいですが、今はそんな事をしている時間はありません。いつまでここが安全かなど分かりませんから。今すぐに扉を開きます」


 キプスが、儀式殿の奥の扉を開く。


 かつてあの世界の魔力を辿ってきた先で見た巨大な扉に紋章。ノーズとヴィジェがいるのはここの奥で間違いないだろう。


 エンジェリアは、ゼーシェリオンと手を繋いだ。不安と期待が渦巻いているのが、共有で伝わっているのだろう。


「大丈夫だ」


「うん」


「……そうだ。クルカムってエクーに魔法かなり教わってるらしいから、エレの力になってあげて」


「はい。ぼくがどれだけ力になれるか分かりませんが、全力で協力します」


「ありがとなの。キプスも。道中気をつけて」


 キプスが本家へ行く事は予想がつく。昨日のフォルの仕事のあとにこの話をした事と、安全かどうか分からないという言葉で。


 エンジェリアは、キプスに笑顔を見せたあと、扉の中へ入った。


      **********


 かつて見た景色。ノーズとヴィジェの姿は魔法の中に入って見えない。


「これを三人だけで解けたら、帰ってから明日の朝まで結界魔法をずっと張っといてあげるよ」


「ぷにゃ⁉︎ そ、そんな事を⁉︎ ゼロ、クーム、がんばろ」


「……これ、解くのかなり難しいと思うけど大丈夫? フォル」


 リミェラは、もうこの魔法をある程度解析できたのだろう。


「このくらいやってくれないと。それに、ヒントくらいなら渡すから。全然解けなかった時だけだけど。リミェラねぇにも協力して欲しいんだ。可愛い義弟の頼み、聞いてくれる? ヒント係二」


 フォルが可愛らしく頼んでいる。リミェラにはいまだにこれが通じると思っているのだろう。


「う、うん。それは良いけど……うん」


「……ゼム、クームやるの。まずはこの魔法陣の効果を知る事からなの。前は急いでいたから、うまく解析できてないと思うから」


「はい。解析でしたら得意なので任せてください」


「ふにゅふにゅ。解析は得意……ゼムは処理能力が高い……エレは、魔法の解析も得意だけど、それ以上に魔法の改竄が得意なの。役割、役割」


 エンジェリアは、ゼーシェリオンとクルカムの得意分野で勝手に役割分担を決めた。


「分かりました……えっと……そうですね。まず、この魔法陣はかなり複雑です。複雑に絡み合っているので、詳しい事は一人では分かりません」


「ふにゅ。一つずつ紐解いていくの。クーム、その魔法陣描ける? 」


「はい。縮小して描いてみます」


 クルカムが、ノーズとヴィジェを捉えている魔法陣を縮小して模写している。


「そのまんまなの。同じに描くなんて難しいのに」


「多少変わるのにな」


「師匠にずっとやらされてたので。師匠のおかげです」


 エクルーカムが誉められているようにでも感じたのだろう。クルカムが照れながら答える。


「エクーは君がそれに向いていると判断したんだろう。それをここまでできるようになったのも君の努力のおかげ。エクーはそれを後押ししただけじゃない? 」


「そうでしょうか? 」


「……クルカム、エクルーカムは、貴様が何に向いているか。それを気づいてそれを伸ばしていたんだ。それで身についたものは、間違いなく貴様の力だ」


「は……はい! 」


 エンジェリアは、クルカムが描いた魔法陣をじっと見つめる。この魔法陣を紐解いていけば、ノーズとヴィジェを助けられる。


 だが、これは失敗すれば、中にいる二人が無事では済まないだろう。


 魔法陣はそういう仕組みになっている。


「……クーム、喜んでいるところ悪いんだけど、ちょっと良いかな? これ、失敗できない」


「そうですね。一度でも間違えれば……」


「失敗なんてしないの。何度も、こういう事はあったから。落ち着いてやれば大丈夫……って言えれば良いのに」


 見た事ない類の魔法陣。これを一度で解く事ができるのか。


「……エレ、キミは似た魔法陣で解き方を学んでいるよ。今回は複雑だけど、一つ一つは単純だからそれを見つければ大丈夫」


「ぷにゅ。クーム、一個ずつがんばるの」

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