12話 愛姫の本
エンジェリアは、ゼーシェリオンに抱っこしてもらい、商人との交渉の間、寝ていた。
起きるとエクリシェへ帰っている。
「ぷにゃ⁉︎ 寝てたの⁉︎ ゼロ、エレに分かりやすく説明するの」
「ああ。上手くいった。以上」
「分かりやすいけど、もう少し詳しく教えてくれても良いと思うの。エレが分からないだろうからって、これだけで済ませようとしているのは分かるけど」
「それ以上に言う事ねぇだけなんだが。値段も適正価格で契約できた。今後も良い関係を築こうって事になった」
エンジェリアが寝ている間に、しっかりと契約をしてくれていたようだが、肝心の誰と契約をしたのかが抜けている。
ゼーシェリオンは、話す必要がないからではなく、そこを話さないとという事が抜けているのだろう。
「……ゼロ、肝心の事が聞かされてないの。誰と契約を交わしたの? 」
「アフィキュル商会。かなり有名な商会だ。それより、熱は下がったのか? 」
「ふにゅ。ゆっくり寝たら下がったの……多分……フォルがいない。エレはフォルに見捨てられたかもしれない」
部屋の中を見ても、フォルの姿がない。
「フォルなら、仕事があるからって、今は自分の部屋にいる。終わったら直ぐくるって。エレの側だと、心配になりすぎて仕事が手につかねぇんだろうな」
「ぷにゅぅ。ゼロ、エレは今から、ゼロのために魔法具の設計図を描くの。でも、その前に、知りたい事があるから、今持ってる連絡魔法具を貸して欲しいの」
エンジェリアは、ゼーシェリオンにあげる魔法具を、エンジェリア特性連絡魔法具にしようと決めている。
エンジェリアは、ゼーシェリオンから、連絡魔法具を受け取る。
「魔法具の契約の後は、エレも色々とやってもらわないといけない事があるからな」
「ぷにゅぅ。拒否権はエレにもあって良いと思うの。フォルもいないのにエレはがんばれない……フォル」
「フォルならいるだろ。隣の部屋に。寂しいなら隣の部屋行け。エレの熱大丈夫かって心配してたから、行けば安心するんじゃねぇか? 」
ゼーシェリオンの言葉で、エンジェリアは、走って、フォルの部屋へ向かった。
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「エレなの! 」
エンジェリアは、フォルの部屋を元気良く訪れる。
「エレ、どうしたの? 」
「エレなの! ……しゃぁ」
「……こっちおいで」
「ぷにゅぅ」
エンジェリアは、喜んでフォルの側へ向かった。
フォルに抱っこしてもらい、尻尾を出して喜ぶ。
「もう大丈夫みたいだね。心配したんだよ」
「ぷにゃぁ⁉︎ ぷにゅ。フォル〜、だいすき〜。フォル、寂しかった」
「ごめん。側にいてやれなくて」
フォルが、そう言ってエンジェリアの頭を撫でる。
「ふにゅ。それはもう良いの。今こうしていられるから。それより、エレはお勉強をしたくありません。でも、ゼロはお勉強をさせようとしている気がします。それをどうすれば良いのか知りたいです」
エンジェリアにとっては重要な問題だ。いかにして勉強回避するか。それを常日頃から考えなければならなくなる。しかも、失敗すれば強制勉強待ったなし。
そうならないよう、今から対策を講じておこうとしている。
「エレ、諦めて勉強しな。僕は何も知らないエレで……君の場合そっちの方がほんとに良いんだろうね。でも、外で生きると決めたなら、必要な事は覚えてかないと。今必要なのは、人見知りせず、魔法具の適正価格をちゃんと覚えておくかな。僕は提示しただけ。選んだのは君なんだ」
「……フォルなら優しくしてくれると思ったのに」
ゼーシェリオンは勉強に関して逃げても追いかけるほど厳しいが、フォルはそうではない。フォルならば、勉強したくないのも受け入れてくれるだろうと思っていたが、そうではなかった。
だが、ゼーシェリオンもフォルもエンジェリアを想っての事だというのは理解している。エンジェリアは、フォルの腕に頬擦りをする。
「無理してまで頑張れとは言わないよ。それに、分からないなら分かるまで何度だって教える……エレ、僕らも手伝うから、頼みたい事がある。君にしかできない事なんだ」
「……エレにしか……ぷみゅにしか……やるの。なんでも頼むと良いの」
自分にしかできない頼み事。フォルがそんな頼み事をしてくるのであれば、喜んで引き受ける。
「愛姫の事を書いて欲しい。それを配るから。書いたら、ご褒美もあげる。やってくれるかな? 」
「ぷにゅ。エレ達の覚えている事を書くだけなら簡単なの。エレに任せるの。王達とエレの大事なお話を書くから。今の人達からすれば、嘘のようで本当のお話……発表会の商人は貴族様と繋がりがある……神獣に詳しいのは、貴族……ぷにゅ」
「……エレ、紙取り行くから、少し離れてくれる? 」
フォルから離れたくない。エンジェリアは、必死にふるふると首を横に振った。
フォルは、エンジェリアを無理やり退かす事はしないようだ。困った表情をしている。
このままここにいれば、離れるのを諦めてくれるかもしれない。
と思っていたが、突然、エンジェリアの身体が浮いた。
「ぷにゃ⁉︎ 」
「少しは離れてやれ」
「ぷにゃ! ぷきゃ! ふしゃー! 」
エンジェリアは、必死に抵抗するが、ゼーシェリオンが離してくれない。
「ごめん。すぐ持ってくるから」
「ぷにゅぅ」
エンジェリアは、抵抗しても離してもらえず、瞳に涙を溜めて、フォルが紙を取ってくるのを待った。
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フォルが紙を取ってきたあと、エンジェリアは、フォルの膝の上に座って、記憶にある事を書いていた。
「前回の世界の記憶なの。まずは……エレ達の関係なの」
「前回は、ジェルドの王って呼ばれてて、エレは、愛のジェルド。愛のジェルドで愛姫はエレだけだった」
「ぷにゅ。愛姫はエレだけなの。昔は各ジェルドと呼ばれた種族で集落的なものが築かれてたの。エレはずっと一人だったけど、みんながいてくれたの」
愛姫であるエンジェリアは、愛のジェルドと共に暮らしてはいない。エンジェリアは、幼い頃から一人で暮らしていた。
「それと、エレとゼロが、フォルとフィルと婚約なの。フォルとフィルは特別だから、婚約者を用意しないとってなって」
「誰も立候補しなかったんだよね。王と交流のある女の子とかもいたのに。どっかのお姫様のわがままで」
「エレは愛姫だから、誰かが良いって言っちゃえば、エレに回ってこないの。その方針の方がずるいだけなの。だから、エレがみんなに頼んで、エレにフォルとフィルとの婚約を立候補できるようにしてもらったの」
愛姫は、他のジェルド達をまとめる存在とされていた。そのためか、エンジェリアに婚約の話は回ってきずらい。だが、エンジェリアは、この時も、変わらずフォルが好きだった。
諦めたくなかったエンジェリアは、みんな頼み、婚約できるように仕向けていた。
「フォルとどうしても婚約したい、健気なエレだったんだ」
「ゼロ、この件に関しては全面的にエレの味方だよね? 自分も良い思いしてるからだろうけど」
エンジェリアがもう一人の婚約者として推薦したのがゼーシェリオン。ゼーシェリオンは、それに関して、感謝しているのだろう。
「ぷにゅぷにゅ。ゼロはとっても素直なの。こういう事は。それで、それで、エレ達の関係をもっと深掘りなの。あの頃のエレ達は、フォルとフィルの婚約者で、みんなでいっぱい遊んでいて、フォルとフィルのお出迎えをして、楽しかったの」
「エレ、それで終わらせようとしないでよ。もっと物語っぽくして。読んでいて飽きないように」
「むずかしいの。でもがんばる」




