13話 手紙
エンジェリアが目を覚ますとベンチで座っていた。前回の忘れていた記憶を思い出しただけでなく、レストランでの最後の記憶もあり、理解が追いついていない。
エンジェリアは、フォルのケープに気付き安心感に包まれた。
「エレ⁉︎ 」
「ゼノン、お迎え御苦労なの」
「お前は何目線なんだ。つぅか、迷子になったなら連絡……そうだった。ねぇんだったな」
まだ前回の記憶が戻って混乱してはいるが、心配そうにしているゼノンを見て理解を諦めた。
だが、理解せずとも記憶はある。エンジェリアはその記憶を活用する。
「エクリシェ中層のエレが使っていたお部屋に連絡魔法具があるの」
エクリシェは最下層、下層、中層、上層、最上層の五層に分かれている。どの層にも住居スペースはあり、上の層に行くほど広くなっている。
エンジェリアが現在使っているのは最下層だ。
「……中層から上改装中ってフォルに聞いた」
「……それは多分近づけたくなかったからだと思うの。とりあえず行ってみるの」
「わかった。みんなにはあとで俺が連絡するから帰ろう」
ゼノンがそう言うとエンジェリアの手を握って転移魔法を使った。
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エクリシェ最下層、ゼノンの部屋。エンジェリアは、帰ってくるなりベッドにダイブする。ゼノンの部屋というのはお構いなく。
それどころか、くんくんと匂いを嗅いで喜んでいる。
「……なぁ、男と二人っきりで男の部屋。警戒しろよ」
エンジェリアは呆れた表情のゼノンをちらっと見るとすぐに目を逸らした。
「ゼノンだから気にしないの。ゼノンも気にしないで良いの」
自分の部屋のようにくつろいでいるエンジェリアの隣でゼノンが座った。
「はぁ……それで、何があったんだ? さっきからずっと色んな感情が複雑に混じってる」
「……みゅ」
エンジェリアはゼノンに前回の記憶、エンジェリアが見てきたものを話した。
夢で見た内容に加えてエンジェリアがその後に思い出した事も全て。
「って事なの」
「……エレの話を聞いてたら俺も思い出してきた。あの時、フォルは俺に見せてくれたんだ。みんなが一緒で笑っている未来。きっと、誰よりもそれを望んでるんだろうな」
エンジェリアが知らないゼノンだけが見たもの。
エンジェリアはその話を聞き、ゼノンの手を握った。
「エレ、フォルに会い行く。でも、その前にエルグにぃ達にお話聞き行く。ちゃんとフォルの事を知るの」
今回転生してから、エンジェリアは記憶がある中では誰かを深く知ろうとする事はなかった。それだけではなく、フォルもフォルで必要以上には何も教えようとしない。
リプセグに綴られていた星の音と前回の記憶だけではフォルを連れ戻すには足りない。それをエンジェリアは直感的に感じていた。
「エルグにぃ達帰ってるかもだから部屋行ってみるか」
「みゅ」
エンジェリアは起き上がり、ゼノンと手を繋いで部屋を出た。
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ダメ元でルーツエングの部屋を訪れたが、帰ってきていてイールグと一緒に話をしていた。
エンジェリアは邪魔にならないように隅の方で隠れようとしている。
「どうしたんだ? 」
エンジェリアはイールグに声をかけられてベッドに座らされた。
「フォルに会いに行きたい。魔の森オーポデュッデュに」
「あそこは入り口までしか転移魔法が使えない。それでも良いか? 」
エンジェリアはこくりと頷いた。
「フォルのお部屋散策とか、準備とかあるから明日お願い。ちなみに今日はもう寝るの」
「フォルの部屋に? なら、俺も付き合う」
「……ふみゅ。エルグにぃだけじゃなくてルーにぃも一緒なの」
エンジェリアはそう言って笑顔を作った。
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翌日、フォルの部屋を訪れると、前回エンジェリアとゼノンが贈ったものが飾られている。それ以外にも、大量にエンジェリアとゼノンを模した縫いぐるみが置かれている。
エンジェリアは、机に置いてある二枚の手紙のエンジェリア宛の方をを手に取った。
【僕の愛しのお姫様へ
睡眠薬以外には悪いものがなかったけど、身体に異常は起きていない? 発作は起きていない? 発作が起きないようにちゃんと薬を飲むんだよ。
僕が選んだ服を着ていてくれてありがと。とても似合っていた。
それと、そのケープは君に預けておくよ。
ほんとはこんな手紙書く気はなかった。僕はエレとゼロと一緒にいたいだけなんだ。
最後に、この手紙の隣に置いてある髪飾りをあげる。感情シリーズの一つ羽根の感情髪飾り。きっと君に似合うよ】
エンジェリアをベンチに寝かせた後、急いで書いたのだろう。フォルの迷いと想いが綴られている。
エンジェリアは二つある羽根の髪飾りをつけた。今にも泣きそうな感情を抑え込み、ルーツエングにもう一つの手紙を渡した。
【主様、僕を弟って言ってくれてありがと。それとごめん僕は、主様の弟でい続ける事なんてできない。
イールグ、友人って言ってくれてありがと。あの子らを世話してくれてありがと。初めてだったんだ。友人なんてできたのは。ずっと、そうでい続けたかった。
二人とも、ごめんなさい。今までありがと】
この手紙はどれだけ迷っていても、戻るつもりはないというよりは、戻れなくするために書いたのだろう。エンジェリア宛の手紙の後に書いたからか、所々滲んでいる。
「エルグ……主様、今件フォルは仕事も交えているのだろう。俺も同行させて欲しい。監視用の魔法具を全て破壊してくる。そうすれば少しは逃げ道が生まれるだろう」
「そうだな。俺達は途中で別行動する……エレ、ギュリエンの最後……いや、なんでもない」
ルーツエングがそう言って転移魔法を使った。エンジェリアが夢で見た魔の森オーポデュッデュの入り口に転移した。
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魔の森オーポデュッデュを歩く事一時間。前回同様に中央の結界に辿り着く事はできない。
「……またなの。ここどうなってるの? 」
「魔の森だけではなく迷いの森と分類される場所だ。迷わずに行けるのはフォルくらいだろう」
「ふみゅぅん……またなの。ゼノン、こっち」
エンジェリアの目に前回同様に光が見える。
「転ばないように気をつけろ」
「ふにゅ。監視の方はよろしくなの」
エンジェリアはゼノンの手を握って一本道になっている光る木を頼りに走る。
「ふぇ⁉︎ 忘れてたの⁉︎ 連絡魔法具」
「は? 今は良いだろ」
「良くないの。自慢しようと思ったのに。エレが前回フィルに協力してもらって三年半費やした連絡魔法具。処理能力はあの世界管理システム越え」
「……なぁ、どこから突っ込めば良いかわからねぇが、とりあえず、小型魔法具でどうやったらその処理能力できたんだ? つぅか、こんな状況で良くそんなにいつも通りいれるな」
エンジェリアが、ゼノンもいつも通り呆れた表情を見せてつっこんでいるだろうと言いそうになっていた。
だが、魔法具自慢の方がエンジェリアにとって優先事項。
「三年半も費やしてるんだから当然なの。世界管理システムは大型魔法機械で現状それを超える処理能力を持つ魔法機械はない? 魔法具は当然? エレの三年半を甘く見るななの」
「……世に出すなよ」
「出さないの。エレ用とフォル用なの。フォル用は七年費やした。処理能力ももっとすごいの。十五センチの小型魔法具だからがんばったの」
エンジェリアはキメ顔を作ってそう言った。
「あー、そろそろ着くんじゃねぇか? 」
「ゼノンが話逸らしたの。でも、本当に着きそう」
木々の終わりが見えてくる。前回の記憶の最後の場所に、エンジェリア達はいつも通りの二人で向かった。




