23話 美しいもの
この二つの疑問が結びつく答えが何か。
エンジェリア達は、話し合うが、答えが出ない。
「ぷにゅぅ。目的が見えてこないの」
「禁止指定魔法と関連があるというのは分かるのですがね」
「ああ。目的が見えれば、全部繋がるんだろうけど」
かれこれ三十分は悩んでいる。
「……そういえば、こんなに悩んでいるのにみんな動いてないの」
エンジェリア達がこの施設へ来てから今まで、魔物に襲われた被害者達が立って歩いているところを見ていない。
「……ふにゅ。禁止指定魔法については詳しくないの」
「僕が昔関わった同例の時は、衰弱していた。魔物がいなくなって、的確な治療をしたら良くなったけどね」
「これも、それと同じという事でしたら、魔物を見つけない限りはどうにもできそうにありませんね」
「うん。でも、先にこうして知る事で対策しておいた方が良いんだ。という事で、次は、魔物のブレスと魔法についての対策を考えてみようか」
防御魔法を使えば防げそうだが、それは外へ出た被害者の人々も考えるだろう。
「……ぷにゅ。お花なの。お花と宝石なの。昔のゼロのおかげで思い出したの。エレが楽はだめなの? って言った時、楽は楽するっていう努力してる。きれいなお洋服も、着こなす努力してるって言ってたの。エレとその人が、違う美しさなんだって」
「……違う美しさか。魔物がそれだと? 」
「そうなの。魔物さんは、エレ達のように練習とかしていなくても、魔物さんも魔物さんで色んな努力をしているはずなの。魔物さんは、いっぱいの対策を立てているのかも。だから、エレ達はそれを上回る対策を立てないとだと思うの。みんなが考えないような事とか……」
多くの魔物は自我など持たず、破壊をするだけの存在。その魔物が生まれる原因は、人々の悪しき感情。
だが、そういった魔物よりも少ないが、自我を持つ魔物が存在する。その魔物は、多くが人を襲わない。
今持っている情報だけでは、魔物は自我を持ち、人を襲っている。襲う必要があるのだろう。
「……この魔物さんも、美しいだと思うの。エレ……そんな魔物さんを討伐なんて……なんでもないの。エレは対策考えるの苦手」
「そうだったな。対策は俺らで考えるか。クーム、一緒に対策を考えようぜ」
「はい。といっても、魔物がどれだけの知識を持っているかが分からない限り、対策は難しいのではないでしょうか」
エンジェリアは、フィルの手を握り、瞳に涙を溜めて顔を見る。
「良い感じの情報が欲しいの。できれば、魔物さんに襲われた人達がどうしていたか映像とかあれば良いの」
「ない。話も聞けないけど、普段の討伐の仕方くらいなら聞いてある。聞く? 」
「聞く」
臨機応変に対応して、その通りではないかもしれないが、その中に癖があるだろう。癖が簡単に治せない。突然の出来事で臨機応変に対応するとしても、癖は出るものだろう。
この魔法を必ず使うなど。
そこを知る事ができれば、何か対策が思いつくかも知れない。
「防御魔法を使いながら、魔法を仕掛けて、離れながら。結界魔法を使い、魔物を中に閉じ込めて、広範囲系の魔法を使う。他にも」
「なんだかとっても長そうなの。とりあえず、ここの人達の症状の進行を遅くしてからお話し続き聞くの」
「……魔法で安全圏にいながらちまちま戦うのがほとんどだった。詳しく話さなくても、これで良い? それと、進行はもう押さえている。それでも、完全にはできないけど」
「そうなの? なら、急がないとなの。エレも対策がんばって考えないと」
エンジェリアは、対策を考えようとするが、別の事ばかり考えてしまう。
――……魔物さんってどんな姿なんだろう。どこにいるんだろう……って、そうじゃないの……エレは対策を考えたくないのかも知れない。
「……フォル、しばらくエレ預かって。エレが大人しくしているように」
「しゃぁー! エレだって考えようとはしていたの! でも、対策ばっかり考えたところで、実際にやってみないと何も分かんないの! エレは適当にぷにゅぷにゅいくべしだと思うのです! ぷっにゅん! 」
エンジェリアは、言い終えたあと、キメ顔をした。
「……」
「……」
「ふふっ、エレらしい、エレエレした考え方」
ぽかんとしているゼーシェリオンとクルカム。少し離れて、イールグと何やら話していたフォルが、笑っている。
「エレエレ? 」
「フォルの謎表現」
フィルとイールグは、フォルのエレエレ発言が気になっているようだ。
「反対意見がないため、これで決定なの。反対意見があったとしても、エレは聞かないけど」
エンジェリアは、キメ顔のままそう言った。
「というわけで、早速魔物さんを探すの。どこにいるのか分かんないけど、きっとお外にいると思うの」
「それでそんな当たり前な事言うか? 」
「……エレエレしているから」
魔物が普通の室内にいる事は少ない。というかほぼないだろう。それに、外でという話だ。
その当たり前の事をエンジェリアは、キメ顔で言い、ゼーシェリオンが呆れている。そこで、エンジェリアは、顔を逸らして、フォルの謎表示を借りて言い訳した。
「お外どこなの? どこのお外なの? フォル、その辺の事はじょぉほぉがあると思うの。いつもあるんだから」
「うん。大体の場所は分かっているよ。でも、場所を教えるより、連れて行った方が早いかな。でも、その前に、いくつか注意事項と約束。聖月の秘術は禁止。愛魔法も。こっちは使えないだろうけど。危ないと感じたらすぐに撤退。できない状況なら別だけど。僕らは何も無条件で討伐しろと言ってるわけじゃない。人を襲って、こういう禁止指定魔法を使うのは止めないとだけど」
自我を持ち、意思疎通ができる魔物であれば、無条件に討伐をしなければいけないわけではない。それを知り、エンジェリアは、ほっと胸を撫で下ろした。
「もし、討伐する事なく終わった場合、全て君らだけでやらなくて良い。それに関しては僕らが手伝う。魔物に関してはこんなもんかな」
「質問なの。エレは、ゼロと一緒にやるあれをしても良いですか? 子供でも良いですか? 」
「君らが良いの? やりたくないって何度も言ってるのに」
エンジェリアとゼーシェリオンの切り札は、強力なかわりに、副作用のようなものがある。エンジェリア達は、それが嫌で、使うのを躊躇っている。
だが、いざという時は迷わず使わなければならないだろう。例えば、魔物が人を襲わなくするためにはそれをするしかないという時とか。
「やりたくないけど、やりたくないじゃだめなの。やらないといけないなら、エレ達は迷わずにやるだけなの」
「ああ。人に見られたくねぇし、あとからしばらく誰とも話したくなくなるが、それでも、やらないといけないなら、躊躇わない」
「そうか。分かった。僕らが手助けするのは最終手段くらいに思ってくれ。最後まで諦めず、できる事をしろ。それができれば、最後の試験は特別試験としてあげるよ。もし、それをクリアすれば、管理者見習いなんて言わず、ギュゼルにだって入れてあげる」
怪しげに微笑むフォル。この特別試験を受ければエンジェリア達の目指した場所へ行く事ができる。だが、こんな条件を出しているという事は、簡単な事ではないのだろう。
「……」
「クルカム、あの二人がもしあれをする事になれば、君が保護者役だよ。特別試験ができても、君が何を望んでいるか知らないから、教えてくれれば、僕ができる範囲で叶えるよ」
「では、ぼくも、姉上の隣が良いです。師匠の隣で、姉上の隣が良いです。なんて、難しいですよね。師匠は……」
「良いよ。そもそも、管理者はギュゼルの代わりだったんだ。違いなんてほとんどないよ。通常はフュリーナとエクーの隣で情報収集等。何かあった時は、エレとゼロと一緒になる場合もあるけど、場合によっては、フュリーナとエクーとになるだろう」
管理者とギュゼルは同じであり違う。だが、その違いはエンジェリア達以外はそこまで気にする必要はない。
エンジェリア達が目指すのは、危険な仕事ばかりやっているフォルの隣。それはギュゼルでしか果たす事ができない。




